41 / 44
第40話 私の正体。僕の正体
しおりを挟む
みふだちゃんのプライベートダンジョン上層。
サポート型というその個体特性ゆえ、ユメウサギと単体で遭遇したいため、僕らは上層第一区画を移動していた。
千伊香ちゃんには別枠で頼んでいるので、僕は今、みふだちゃんと2人きり。
「なんだか、最初の頃を思い出すね」
なんて、みふだちゃんは遠い昔を思い出すように言い出してきた。
「そうだね」
少ししんみりしながらも、思い起こされるのは、甘い言葉に誘われて探索を始めてしまった時のことでも、ドレスアップさせられた時のことでもない。
僕は別のことを考えていた。
言い出さなくてはいけないこと。
自然、心臓の音がドクドクとうるさくなってくる。
「み、みふだちゃん。話があるんだ」
「何? なんでも聞くよ? 告白でも、そしりでも」
「どちらかと言えば、ある種告白かな」
「え、な、何かな?」
髪をいじり出したみふだちゃんを横目に、僕の歩くスピードは少しだけ速くなってしまう。
やはり怖い。
みふだちゃんは自らの正体を明かしてくれた。
世界チャンピオンだったこと、コーダとの因縁。そして、失くした相棒のこと。
きっと、言葉にしてくれた通り、言い出しにくかったのだろう。
その気持ちは痛いほどわかる。
実のところ、僕の方もみふだちゃんに隠していたことがある。
それこそ、ほとんどヒントらしいヒントも与えずに黙っていたことだ。
周りだってほとんど知らないこと。一度だけ、過去を知る試験官の人に指摘されたことがある程度のこと。
「突拍子もない話をするんだけど、許してもらえる?」
「もちろん。ダンジョンなんて存在が突拍子もないんだから」
「よかった」
ほっと胸を撫で下ろす。
目的のユメウサギの居場所はみふだちゃんがだいたい把握してくれている。
場所を言われて、僕もなんとなくどこだかわかっている。
だから、あまり時間がある訳じゃないということも知っている。
このタイミングで言わなきゃ、きっと機会を逃して一生言わないままだろう。
「あのさ」
「うん」
「僕さ、人間じゃないんだ」
「えーっと……?」
さすがに意味がわからなかったのか、みふだちゃんは止まった。
それに合わせて僕も止まる。
「ど、どういうこと? ごめん。予想してたタイプの告白じゃなかった。わたしも一応探索者だけど、暗号はあまり得意じゃなくって」
「そのままの意味だよ」
「そのまま?」
「うん」
まだわからない、そう言いたげなみふだちゃんに僕はゆっくりとうなずいた。
「僕は人そっくりの人を作ろうとして生まれた、人でない人形。その中に代替案として人の魂が入れられただけのまがいもの。それも偶然の産物だけどね」
「……そんなの、探索者多しと言えど、実現できないんじゃないの?」
「そう。本来ならね。でも、実現はした。してしまった。代償として、僕の両親は探索者としての未来を失った」
「……」
探索者の中でも一部しか知らない事実。
都市伝説として語られることがあるだけで、実際に起きだことだと信じている人間は数えるほどしかいないだろう、そんな出来事。
人を作ろうとした探索者の話。
ただ、表向きは探索中の不幸な事故として記録されている。両親の身体へのダメージは、あくまでモンスターからの攻撃として処理されている。だが、事実は違う。実際は、僕が生まれてしまったことが原因だ。
それは、ルールを破ったから。それは、禁忌を犯したから。それは、神に近づきすぎたから。
許されない行いの代償は高くつく。
「でも、実現したってことなら、歴ちゃんは人間ってことじゃないの? 体も成長してるよね?」
「そう。人間そっくりに、人間の機能が再現されている。それだけならまだいいかもしれない。ただ、中身に入った魂が見かけとは全く別物でね」
「別物?」
「そう。僕は元々男たったんだよ。それも、成人した男。そのおかげで色々と苦労してきたし、色々と苦労してる。身長も今はスキルでマシになったけど、人形だからか発育が悪くって大変だったよ」
「ふむふむ。なるほどなるほどなるほどね? それならわたしも納得かな。歴ちゃんのキャラといい立ち回りといい」
「え?」
今度は僕が驚かされる番だった。
みふだちゃんは疑うではなく、なぜかしきりにうなずいて見せたのだ。
それこそ言葉通り、僕のことを理解して見せたような。
「疑ったり、嫌ったりしないの?」
「しないよ。だって、ダンカプレイヤーはモンスターとだって一緒に戦うんだよ? 人外なんて今さらだよ」
「そうじゃなくても、男ってことの方は?」
「探索者はいっぱいいるからね。わたしはこの世界で女になった探索者の人たちを色々見てきた。いつだかからちらほら見るようになったからね。でも、だからって変わらない人だった。なのに歴ちゃんだけを嫌う理由はないじゃん。夢もあるしさ! あ、途中で変わったりしてないよね?」
「それはないそれはない」
「じゃあ大丈夫。わたしの知ってる歴ちゃんだもん」
呼び方も態度も変わらない。
笑顔の見え方も変わらない。
それがプロなのかもしれないけれど、計り知れない安堵が胸の内に押し寄せてくる。
目まで熱くなってくる。
本当、僕の前世ってスッカスカだったのかな。
こんな年下の女の子に救われた気になってるなんて。
「この話、千伊香ちゃんは一緒じゃなくてよかったの?」
「あの子にはまだ内緒にしておこうかと思って。お姉様キャラは不服だけど、もう少しお姉様でいてあげたいから」
「大丈夫だと思うけどね」
みふだちゃんの太鼓判があればきっと大丈夫だろう。
その日が来るのもそう遠くない。
ユメウサギを捕まえれば、あとはコーダとの戦いを残すのみだ。
サポート型というその個体特性ゆえ、ユメウサギと単体で遭遇したいため、僕らは上層第一区画を移動していた。
千伊香ちゃんには別枠で頼んでいるので、僕は今、みふだちゃんと2人きり。
「なんだか、最初の頃を思い出すね」
なんて、みふだちゃんは遠い昔を思い出すように言い出してきた。
「そうだね」
少ししんみりしながらも、思い起こされるのは、甘い言葉に誘われて探索を始めてしまった時のことでも、ドレスアップさせられた時のことでもない。
僕は別のことを考えていた。
言い出さなくてはいけないこと。
自然、心臓の音がドクドクとうるさくなってくる。
「み、みふだちゃん。話があるんだ」
「何? なんでも聞くよ? 告白でも、そしりでも」
「どちらかと言えば、ある種告白かな」
「え、な、何かな?」
髪をいじり出したみふだちゃんを横目に、僕の歩くスピードは少しだけ速くなってしまう。
やはり怖い。
みふだちゃんは自らの正体を明かしてくれた。
世界チャンピオンだったこと、コーダとの因縁。そして、失くした相棒のこと。
きっと、言葉にしてくれた通り、言い出しにくかったのだろう。
その気持ちは痛いほどわかる。
実のところ、僕の方もみふだちゃんに隠していたことがある。
それこそ、ほとんどヒントらしいヒントも与えずに黙っていたことだ。
周りだってほとんど知らないこと。一度だけ、過去を知る試験官の人に指摘されたことがある程度のこと。
「突拍子もない話をするんだけど、許してもらえる?」
「もちろん。ダンジョンなんて存在が突拍子もないんだから」
「よかった」
ほっと胸を撫で下ろす。
目的のユメウサギの居場所はみふだちゃんがだいたい把握してくれている。
場所を言われて、僕もなんとなくどこだかわかっている。
だから、あまり時間がある訳じゃないということも知っている。
このタイミングで言わなきゃ、きっと機会を逃して一生言わないままだろう。
「あのさ」
「うん」
「僕さ、人間じゃないんだ」
「えーっと……?」
さすがに意味がわからなかったのか、みふだちゃんは止まった。
それに合わせて僕も止まる。
「ど、どういうこと? ごめん。予想してたタイプの告白じゃなかった。わたしも一応探索者だけど、暗号はあまり得意じゃなくって」
「そのままの意味だよ」
「そのまま?」
「うん」
まだわからない、そう言いたげなみふだちゃんに僕はゆっくりとうなずいた。
「僕は人そっくりの人を作ろうとして生まれた、人でない人形。その中に代替案として人の魂が入れられただけのまがいもの。それも偶然の産物だけどね」
「……そんなの、探索者多しと言えど、実現できないんじゃないの?」
「そう。本来ならね。でも、実現はした。してしまった。代償として、僕の両親は探索者としての未来を失った」
「……」
探索者の中でも一部しか知らない事実。
都市伝説として語られることがあるだけで、実際に起きだことだと信じている人間は数えるほどしかいないだろう、そんな出来事。
人を作ろうとした探索者の話。
ただ、表向きは探索中の不幸な事故として記録されている。両親の身体へのダメージは、あくまでモンスターからの攻撃として処理されている。だが、事実は違う。実際は、僕が生まれてしまったことが原因だ。
それは、ルールを破ったから。それは、禁忌を犯したから。それは、神に近づきすぎたから。
許されない行いの代償は高くつく。
「でも、実現したってことなら、歴ちゃんは人間ってことじゃないの? 体も成長してるよね?」
「そう。人間そっくりに、人間の機能が再現されている。それだけならまだいいかもしれない。ただ、中身に入った魂が見かけとは全く別物でね」
「別物?」
「そう。僕は元々男たったんだよ。それも、成人した男。そのおかげで色々と苦労してきたし、色々と苦労してる。身長も今はスキルでマシになったけど、人形だからか発育が悪くって大変だったよ」
「ふむふむ。なるほどなるほどなるほどね? それならわたしも納得かな。歴ちゃんのキャラといい立ち回りといい」
「え?」
今度は僕が驚かされる番だった。
みふだちゃんは疑うではなく、なぜかしきりにうなずいて見せたのだ。
それこそ言葉通り、僕のことを理解して見せたような。
「疑ったり、嫌ったりしないの?」
「しないよ。だって、ダンカプレイヤーはモンスターとだって一緒に戦うんだよ? 人外なんて今さらだよ」
「そうじゃなくても、男ってことの方は?」
「探索者はいっぱいいるからね。わたしはこの世界で女になった探索者の人たちを色々見てきた。いつだかからちらほら見るようになったからね。でも、だからって変わらない人だった。なのに歴ちゃんだけを嫌う理由はないじゃん。夢もあるしさ! あ、途中で変わったりしてないよね?」
「それはないそれはない」
「じゃあ大丈夫。わたしの知ってる歴ちゃんだもん」
呼び方も態度も変わらない。
笑顔の見え方も変わらない。
それがプロなのかもしれないけれど、計り知れない安堵が胸の内に押し寄せてくる。
目まで熱くなってくる。
本当、僕の前世ってスッカスカだったのかな。
こんな年下の女の子に救われた気になってるなんて。
「この話、千伊香ちゃんは一緒じゃなくてよかったの?」
「あの子にはまだ内緒にしておこうかと思って。お姉様キャラは不服だけど、もう少しお姉様でいてあげたいから」
「大丈夫だと思うけどね」
みふだちゃんの太鼓判があればきっと大丈夫だろう。
その日が来るのもそう遠くない。
ユメウサギを捕まえれば、あとはコーダとの戦いを残すのみだ。
0
あなたにおすすめの小説
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた
歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。
剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。
それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。
そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー
「ご命令と解釈しました、シン様」
「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」
次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる