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第14話 敗北・反省:王国騎士フロニア視点
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「な、あ……く……」
「試合だけど、ま、決着ってことでな。悪く思うなよ、フロニア。……勝者っ! リストーマ!」
「うおおおおおおおおおお!」
「フロニア様がぁ……」
「大番狂せじゃないか!?」
「マジかよ。マジかよ…………」
「……俺が、負けた……?」
途中までは負けていなかったはずだ。
だが、目の前のあいつは、どれだけやっても食らいついてきた。
スキルを使っても受け流し、しぶとく俺の攻撃がしのがれた。
そして、いつの間にか俺は自分を見ていて、負けていた。
あの感覚は知っている。いつぞやに体感した、強制的に視界が上書きされる感覚。まさかっ……?
「うおおおい! やるじゃねぇか! リストーマ!」
「あ、ありがとうございます!」
「やっべ。リストーマって言っちった。姫様の兵に呼び捨てはまずかったか」
「そうだな。俺たちより偉いんじゃないか? 首が飛ぶぞ?」
「そ、そんなことないですよ。僕の方が年下だと思うので、呼び捨てでもなんでも、呼びやすいように呼んでもらえたらいいですよ?」
「本当かっ! この、いいやつめ!」
ひよっこは、俺に勝ったことで、早速いろんなヤツらに取り囲まれている。
手が、体が震えている。
現実を受け入れられない。
まだ信じられない。俺が剣を当てられたなんて。
俺は、本気でやっていた。試合が始まってから一度として手を抜いた瞬間はなかった。
それなのに……。
「なあ、あそこからどうやってフロニアの体勢を崩したんだ?」
「それは」
「こりゃ、姫様が近くに置くわけだぜ。なあ?」
「わ、わっ。え、えっとありがとうございます!」
「あっはっは。人が多いとこ慣れてないな? かわいいとこあるじゃねぇか!」
この感じだと、たとえ俺に勝っていなかったとしても、いずれ実力を見出されて、王国騎士団入りを果たしていただろう。
それに、俺と違って人当たりがいい。
俺みたいに実力しかない変わったヤツとは違い、周りに馴染み他人を頼れる騎士になれる。
姫様の目は確かだった。
「フロニア。お前、全力だったろ」
「ああ……。笑うか? 年下に力で負け、力しか能のない俺の居場所がなくなったことを」
「いいや、笑わないさ。お前はやっぱり、自分が思ってるより優しいんだと思うぞ」
「そんなこと……」
俺との試合の間、一切崩すことのなかった真剣な表情はどこへ行ったのか、俺との試合が終わった途端、ひよっこはまだまだ子どもらしい反応で周りの対応に困っている様子。
おまけに、一度試合をした程度で親近感でも湧いたのか、時折俺を見ながら助けを求めてきている。
隣の同僚が俺に笑いかけてくる。
本当に腹立たしい。
「どけ、お前ら。訓練の相手は俺だ」
「うわっ! 容赦ねぇぞ! 負けたから」
「黙ってろ」
一気にその場が静かになり、騎士団員は遠くへ離れていった。
一対一。ひよっこは少し安心した様子で俺の顔を見上げてくる。
「あの。ありがとうございます。それと、試合を受けてくださり、ありがとうございました!」
ひよっこが勝ったのだが、敗者である俺に対し誠意を忘れず、元気に頭を下げて挨拶してくる。
そんなひよっこを見ながら、俺は自分のほほを殴りつけた。
「え…………」
そんな俺を見て、ひよっこは、信じられないものでも見たかのような顔をした。
周囲の注意が俺に向いたのがわかるが、気を引きたくてやったんじゃない。
俺は、俺が許せない。
相手の実力も知らずに相手を判断したことを。今の自分が王国騎士団に入るまで、強くなるまでにしてきたことを、忘れてしまっていたことを``。
「……これはケジメ。気にすることじゃない……」
「でも、血が」
「大丈夫」
こうでもしないと、俺はまた、きっと忘れてしまう。
「お前、いや、リストーマ様なら、姫様のことを任せられます。これまでの不誠実な態度、大変申し訳ありませんでした!」
「え、えっ!」
リストーマ様だけでなく、気まぐれで見にきていた観衆まで、俺が頭を下げる様子にざわつき始めた。
声が聞こえなくても、謝っていることは伝わっているだろう。この俺が、俺が謝っていることが見えているはずだ。
これでいい。
彼の踏み台になれるのなら、俺はこれまでの過ちを無駄にしなくて済むかもしれない。
きっと、俺と同じような思いでいるヤツもいたはず、そんなヤツらを黙らせられるなら、俺は進んでリストーマ様の踏み台になろう。
「あ、あの。頭を上げてください。謝られるほどのことじゃないですよ」
「いいえ。私が無礼を働いたことが悪いのです。どうか、これまでの行い、許していただけませんでしょうか」
「許します。許しますから!」
ゆっくり顔を上げると、天変地異でも起きたかのような顔でリストーマ様が見てくる。同じように、騎士団の仲間たちも俺を見ている。
様々な人の優しさに包まれて生きていることを、どうして俺は忘れてしまっていたのだろう。
変な貴族がいなくなって、姫様が望むようにしていて、どうして俺は喜ぶことができなかったのだろう。
……姫様がしていたように、俺も他の仲間たちと距離を縮めていく努力が必要なようだ。
こんな当たり前のことに気づけたのも目の前の人物のおかげ。
「ありがとうございます。リストーマ様」
「試合だけど、ま、決着ってことでな。悪く思うなよ、フロニア。……勝者っ! リストーマ!」
「うおおおおおおおおおお!」
「フロニア様がぁ……」
「大番狂せじゃないか!?」
「マジかよ。マジかよ…………」
「……俺が、負けた……?」
途中までは負けていなかったはずだ。
だが、目の前のあいつは、どれだけやっても食らいついてきた。
スキルを使っても受け流し、しぶとく俺の攻撃がしのがれた。
そして、いつの間にか俺は自分を見ていて、負けていた。
あの感覚は知っている。いつぞやに体感した、強制的に視界が上書きされる感覚。まさかっ……?
「うおおおい! やるじゃねぇか! リストーマ!」
「あ、ありがとうございます!」
「やっべ。リストーマって言っちった。姫様の兵に呼び捨てはまずかったか」
「そうだな。俺たちより偉いんじゃないか? 首が飛ぶぞ?」
「そ、そんなことないですよ。僕の方が年下だと思うので、呼び捨てでもなんでも、呼びやすいように呼んでもらえたらいいですよ?」
「本当かっ! この、いいやつめ!」
ひよっこは、俺に勝ったことで、早速いろんなヤツらに取り囲まれている。
手が、体が震えている。
現実を受け入れられない。
まだ信じられない。俺が剣を当てられたなんて。
俺は、本気でやっていた。試合が始まってから一度として手を抜いた瞬間はなかった。
それなのに……。
「なあ、あそこからどうやってフロニアの体勢を崩したんだ?」
「それは」
「こりゃ、姫様が近くに置くわけだぜ。なあ?」
「わ、わっ。え、えっとありがとうございます!」
「あっはっは。人が多いとこ慣れてないな? かわいいとこあるじゃねぇか!」
この感じだと、たとえ俺に勝っていなかったとしても、いずれ実力を見出されて、王国騎士団入りを果たしていただろう。
それに、俺と違って人当たりがいい。
俺みたいに実力しかない変わったヤツとは違い、周りに馴染み他人を頼れる騎士になれる。
姫様の目は確かだった。
「フロニア。お前、全力だったろ」
「ああ……。笑うか? 年下に力で負け、力しか能のない俺の居場所がなくなったことを」
「いいや、笑わないさ。お前はやっぱり、自分が思ってるより優しいんだと思うぞ」
「そんなこと……」
俺との試合の間、一切崩すことのなかった真剣な表情はどこへ行ったのか、俺との試合が終わった途端、ひよっこはまだまだ子どもらしい反応で周りの対応に困っている様子。
おまけに、一度試合をした程度で親近感でも湧いたのか、時折俺を見ながら助けを求めてきている。
隣の同僚が俺に笑いかけてくる。
本当に腹立たしい。
「どけ、お前ら。訓練の相手は俺だ」
「うわっ! 容赦ねぇぞ! 負けたから」
「黙ってろ」
一気にその場が静かになり、騎士団員は遠くへ離れていった。
一対一。ひよっこは少し安心した様子で俺の顔を見上げてくる。
「あの。ありがとうございます。それと、試合を受けてくださり、ありがとうございました!」
ひよっこが勝ったのだが、敗者である俺に対し誠意を忘れず、元気に頭を下げて挨拶してくる。
そんなひよっこを見ながら、俺は自分のほほを殴りつけた。
「え…………」
そんな俺を見て、ひよっこは、信じられないものでも見たかのような顔をした。
周囲の注意が俺に向いたのがわかるが、気を引きたくてやったんじゃない。
俺は、俺が許せない。
相手の実力も知らずに相手を判断したことを。今の自分が王国騎士団に入るまで、強くなるまでにしてきたことを、忘れてしまっていたことを``。
「……これはケジメ。気にすることじゃない……」
「でも、血が」
「大丈夫」
こうでもしないと、俺はまた、きっと忘れてしまう。
「お前、いや、リストーマ様なら、姫様のことを任せられます。これまでの不誠実な態度、大変申し訳ありませんでした!」
「え、えっ!」
リストーマ様だけでなく、気まぐれで見にきていた観衆まで、俺が頭を下げる様子にざわつき始めた。
声が聞こえなくても、謝っていることは伝わっているだろう。この俺が、俺が謝っていることが見えているはずだ。
これでいい。
彼の踏み台になれるのなら、俺はこれまでの過ちを無駄にしなくて済むかもしれない。
きっと、俺と同じような思いでいるヤツもいたはず、そんなヤツらを黙らせられるなら、俺は進んでリストーマ様の踏み台になろう。
「あ、あの。頭を上げてください。謝られるほどのことじゃないですよ」
「いいえ。私が無礼を働いたことが悪いのです。どうか、これまでの行い、許していただけませんでしょうか」
「許します。許しますから!」
ゆっくり顔を上げると、天変地異でも起きたかのような顔でリストーマ様が見てくる。同じように、騎士団の仲間たちも俺を見ている。
様々な人の優しさに包まれて生きていることを、どうして俺は忘れてしまっていたのだろう。
変な貴族がいなくなって、姫様が望むようにしていて、どうして俺は喜ぶことができなかったのだろう。
……姫様がしていたように、俺も他の仲間たちと距離を縮めていく努力が必要なようだ。
こんな当たり前のことに気づけたのも目の前の人物のおかげ。
「ありがとうございます。リストーマ様」
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