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第13話 王国騎士と試合
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準備をする場所だと思うけど、準備をするだけの場所なのに訓練用の道具が色々とそろっている。
僕はそんな場所でフロニアさんと試合の準備をしていた。
これまでだったらこんな部屋なかったし、あったとしてもきっと使わせてもらえなかった。
フロニアさんの、さっきの豹変がなんだったのか気になるけど、キョロキョロと見回してしまう。
装備も武器も訓練用すらいいものがそろっているみたいで感動してしまった。
「すごい……」
思わず声が漏れてしまって恥ずかしい。
こんないい環境で訓練させてくれるんだ。闘志が奮い立つというもの。
いや、でももしかしたら……。
「あの、これって僕も使っていいんですか?」
「ん……? ああ。そういうことか。姫様からもらうものはさぞいいものなんだろうな。なんだ? ここにあるものじゃ不満か?」
「いや、そういう意味ではなく、こんないいものを僕なんかが使っていいのか不安になってしまって……。その、どうなんでしょう?」
「ものを見る目はあるようだな。少しは見直した。だが、手加減はしない。せいぜい武器に振り回されないことだな」
先に準備を終えてフロニアさんが試合場へ向かっていった。
使っていいってことかな?
「ダメって言われなかったし、きっといいんだ」
僕も準備を終えて、慌ててフロニアさんを追いかけた。
「わあああああ!」
「フロニア! 頑張れよ!」
「フロニアさまぁ!」
僕の訓練だというのに、姫様以外にも見物人がいるようで、多くの人の声が会場に響いていた。
「オーディエンスが多いな」
頭を下げるフロニアさんを見て、僕も慌てて頭を下げる。
この人たちがいるから、今日の試合ができるってことなのだろう。
「あそこで始める。準備はいいな?」
「はい! もちろんです」
本当はもうちょっとだけ剣の素振りをしたいけど、そんなことも含めた訓練だ。
扱い慣れていない道具を使うことも大事。
「リストーマ様!」
聞き慣れた声に見上げると、手を振る姫様の姿。
僕も反射的に笑顔で手を振り返していた。
「……あれが姫様の……」
「……なんだか見ない顔だな……」
「……本当にあんなので大丈夫なのか……?」
ざわざわしていた会場が少しずつ静かになってくる。
そろそろ始まるということだろう。
「あくまで訓練だ。審判は俺の仲間。それに異論はないな?」
「はい。大丈夫です」
「つっても、うちのエースだからって、俺はフロニアをひいきしたりしないからな」
「そうだろうな。さあ、構えろ」
剣を構えるフロニアさん。
僕もフロニアさんを真正面に見つめ、剣を構えた。
「じゃあ、二人とも準備はいいな? 初め!」
「うおおおおおお!」
人の活気が戻ってきた。
一瞬気を取られ、反応が遅れる。
「初っ端から倒れるかと思ったが、俺の剣を受け止めるか」
「ありがとうございます!」
「は?」
「こんな機会を設けてくださって」
「……気まぐれだ!」
合図をして初めてくれるし、こんなにしっかり誰かと手合わせできるなんて、僕の人生で初めての経験だ。
しかも相手はフロニアさん。王国騎士団のエースらしいけど、話通り実力は確かなもの。
僕は本当に運がいい。
「おい。あいつフロニアさんと互角じゃないか?」
「まさか、手を抜いてるんだよ。全力でやってすぐにケガでもさせたら姫様に申し訳?が立たないだろ? 頑張れよー!」
応援までしてくれるなんて、本当に素晴らしい環境だ。
「『ファスト・スラッシュ』!」
「ふっ!」
「『パラレル・スラッシュ』!!」
「ほいっ!」
「『ペンタグラム・スラッシュ』!!!」
「よっと」
剣聖ほどではないけれど、フロニアさんは剣の扱いに長けているみたいだ。動きが僕の目じゃ追えない。
だがそれでも、どこに攻撃が飛んでくるかは、動き出す前の視線や体勢でなんとなく予想がつく。
だから、攻撃を受け流すことはできる。
「おいおい。さすがにあれで全力じゃないって、嘘だろ?」
「い、いやいや、フロニアはうちのエースだぞ? そんな、まさか」
「おい、彼はどこの出身だっ!?」
「さ、さあ?」
「リストーマ様! そこ、そこです! ああっ、惜しい!」
姫様が見ているのだ。やみくもに試合を続けるわけにはいかない。
今でも、できる限りのことはやっているが、フロニアさんが実力者なだけあって、どうにも決め手がない。
剣だけだとなおさら……。
「お前、強いな。本当にぽっと出の剣士か?」
「はい。少し剣ができるだけの、ただのひよっこ剣士ですよ」
「そうか……」
褒めてくれる。力を認めてくれる。僕が押していても、ズルだなんだと言われない。
こんな機会を用意してくれて、全力でやらないなんて失礼だ。
フロニアさんはすでにいくつかのスキルを使っているみたいだし、勝たないと姫様に顔向けできない。
姫様のためにも、ここは試合だけど勝たせてもらう!
今ならジョブも前より上手く使える気がする。
「『マイ・ヴィジョン』!」
「なっ。俺!?」
動きが止まった。
今ならいける!
「はあああああ!」
「そこまで!」
僕はそんな場所でフロニアさんと試合の準備をしていた。
これまでだったらこんな部屋なかったし、あったとしてもきっと使わせてもらえなかった。
フロニアさんの、さっきの豹変がなんだったのか気になるけど、キョロキョロと見回してしまう。
装備も武器も訓練用すらいいものがそろっているみたいで感動してしまった。
「すごい……」
思わず声が漏れてしまって恥ずかしい。
こんないい環境で訓練させてくれるんだ。闘志が奮い立つというもの。
いや、でももしかしたら……。
「あの、これって僕も使っていいんですか?」
「ん……? ああ。そういうことか。姫様からもらうものはさぞいいものなんだろうな。なんだ? ここにあるものじゃ不満か?」
「いや、そういう意味ではなく、こんないいものを僕なんかが使っていいのか不安になってしまって……。その、どうなんでしょう?」
「ものを見る目はあるようだな。少しは見直した。だが、手加減はしない。せいぜい武器に振り回されないことだな」
先に準備を終えてフロニアさんが試合場へ向かっていった。
使っていいってことかな?
「ダメって言われなかったし、きっといいんだ」
僕も準備を終えて、慌ててフロニアさんを追いかけた。
「わあああああ!」
「フロニア! 頑張れよ!」
「フロニアさまぁ!」
僕の訓練だというのに、姫様以外にも見物人がいるようで、多くの人の声が会場に響いていた。
「オーディエンスが多いな」
頭を下げるフロニアさんを見て、僕も慌てて頭を下げる。
この人たちがいるから、今日の試合ができるってことなのだろう。
「あそこで始める。準備はいいな?」
「はい! もちろんです」
本当はもうちょっとだけ剣の素振りをしたいけど、そんなことも含めた訓練だ。
扱い慣れていない道具を使うことも大事。
「リストーマ様!」
聞き慣れた声に見上げると、手を振る姫様の姿。
僕も反射的に笑顔で手を振り返していた。
「……あれが姫様の……」
「……なんだか見ない顔だな……」
「……本当にあんなので大丈夫なのか……?」
ざわざわしていた会場が少しずつ静かになってくる。
そろそろ始まるということだろう。
「あくまで訓練だ。審判は俺の仲間。それに異論はないな?」
「はい。大丈夫です」
「つっても、うちのエースだからって、俺はフロニアをひいきしたりしないからな」
「そうだろうな。さあ、構えろ」
剣を構えるフロニアさん。
僕もフロニアさんを真正面に見つめ、剣を構えた。
「じゃあ、二人とも準備はいいな? 初め!」
「うおおおおおお!」
人の活気が戻ってきた。
一瞬気を取られ、反応が遅れる。
「初っ端から倒れるかと思ったが、俺の剣を受け止めるか」
「ありがとうございます!」
「は?」
「こんな機会を設けてくださって」
「……気まぐれだ!」
合図をして初めてくれるし、こんなにしっかり誰かと手合わせできるなんて、僕の人生で初めての経験だ。
しかも相手はフロニアさん。王国騎士団のエースらしいけど、話通り実力は確かなもの。
僕は本当に運がいい。
「おい。あいつフロニアさんと互角じゃないか?」
「まさか、手を抜いてるんだよ。全力でやってすぐにケガでもさせたら姫様に申し訳?が立たないだろ? 頑張れよー!」
応援までしてくれるなんて、本当に素晴らしい環境だ。
「『ファスト・スラッシュ』!」
「ふっ!」
「『パラレル・スラッシュ』!!」
「ほいっ!」
「『ペンタグラム・スラッシュ』!!!」
「よっと」
剣聖ほどではないけれど、フロニアさんは剣の扱いに長けているみたいだ。動きが僕の目じゃ追えない。
だがそれでも、どこに攻撃が飛んでくるかは、動き出す前の視線や体勢でなんとなく予想がつく。
だから、攻撃を受け流すことはできる。
「おいおい。さすがにあれで全力じゃないって、嘘だろ?」
「い、いやいや、フロニアはうちのエースだぞ? そんな、まさか」
「おい、彼はどこの出身だっ!?」
「さ、さあ?」
「リストーマ様! そこ、そこです! ああっ、惜しい!」
姫様が見ているのだ。やみくもに試合を続けるわけにはいかない。
今でも、できる限りのことはやっているが、フロニアさんが実力者なだけあって、どうにも決め手がない。
剣だけだとなおさら……。
「お前、強いな。本当にぽっと出の剣士か?」
「はい。少し剣ができるだけの、ただのひよっこ剣士ですよ」
「そうか……」
褒めてくれる。力を認めてくれる。僕が押していても、ズルだなんだと言われない。
こんな機会を用意してくれて、全力でやらないなんて失礼だ。
フロニアさんはすでにいくつかのスキルを使っているみたいだし、勝たないと姫様に顔向けできない。
姫様のためにも、ここは試合だけど勝たせてもらう!
今ならジョブも前より上手く使える気がする。
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今ならいける!
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