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第12話 調子に乗るな:王国騎士フロニア視点
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視界の上書きが世界中で確認されてすぐ、姫様が見知らぬ男を連れているのを見た。
どこかで見た顔だったような気もするが、王国から与えられたと思われる衣服に着せられている様から、おそらく街で見かけただけだろう。
姫様に迫っていた変態貴族をやっと処理できたと思い安心していた野田が、すぐに変なひよっこがまとわりついていて、正直胸がムカついてきた。
「なあ、最近の姫様、どう思うよ」
「前より楽しそうだよなー。やっぱり年が近い男の子がついてるからじゃねぇ?」
「姫様も年頃だしなぁ。そりゃそうか」
「わかる。それに、最近は親近感湧くっつーかな? 少し近寄りやすい印象になった気がするし」
「ま、近寄れないんだけどな」
「でも、やっと子どもらしいところが見られて、俺たちとしては安心だ。お前は違うのか? フロニア」
「……ああ」
他のヤツらはこんな調子で、ひよっこのことをなんとも思っていないらしい。あんな頼りないヤツを置いていて、いざという時、姫様を守れるとは思えない。
俺は、姫様とほとんど接点のないただの一騎士にすぎない。どれだけ近くにいようとも、名前すら覚えられていないだろう。
だが、それでいいのだ。
そうあるべきなのだ。
覚えられようとするなどおこがましすぎる。
だが、こうして俺たちが姫様の話をできるようになったのは、あの兵を近くに置くようになったからだろう。
これは、今まで完璧だった姫様の戦略かもしれない。
実際に、俺の見た限りだが、騎士団の者たちの意識は変わっている。
確かに、姫様が歩み寄ってくれているのかもしれない。
「何かあったなら相談に乗るぞ? 俺たち同じ騎士団の仲間だろ?」
「いや、いい。お前たちには関係ない」
肩に乗せられた手を払い、俺は距離を取る。
そして、一人剣を振る。
「あいつ。自分を特別だと思ってるよな」
「今のもやな感じだし」
「仕方ないさ。あいつはただ一人、実力だけでここまで上がってきたんだ」
「それは認める。騎士団長を除けば、ここじゃあいつが一番強いからな」
「でも、あの態度はないだろ」
ガヤガヤと騒ぎ立てるザコども。
俺は、弱いヤツらが嫌いだ。
自分の力がないくせに、他人を悪く言い、自らが努力しない言い訳しか並べない。
そのくせ強者がスキを見せれば、全力で引きずり下ろそうとする。
俺はそうはなりたくないと努力を積み重ね、実力で王国騎士団に入ったのだ。
「……俺はっ、俺はっ!」
後日、ひよっこが正式に姫様の兵として雇われたことを聞いた。
どんな経緯か聞きたくもない。話半分に聞き流した。
どうせ、そこらのひよっこが顔だけで好かれて運よく選ばれたのだろう。それで疑いもせずにのこのこ入ってきたに違いない。
ちょうど剣聖が国外追放されるなんて事件があった直後だし、国も混乱していて、姫様の事情を汲むことができないのだろう。
そんな矢先、王国騎士団に、そのひよっこと試合をしてほしいという依頼が姫様から舞い込んできた。
「姫の兵が相手だろ? お前がやれよ」
「やだよ。見かけた感じからしてジョブは持ってそうだったけど、ケガさせたらどうなるかわからないだろ?」
「でも、訓練だって話だしさぁ」
誰もやろうとしなかった。だから、俺が手を挙げた。
好都合だった。
「俺がやります」
「フロニア、お前……」
全員が俺の顔を意外そうに見ていた。
「誰もやりたくないんだろ? だったら、俺がやる」
「意外だな。そんなに熱心に教えたがるなんて」
「別に……」
「少し見直したぞ!」
「ああ。俺、お前のことを誤解してたかもしれない」
「そうか…………」
真意は話さない。
話したところで理解されるわけがない。
だが、俺はひよっこを潰す機会を得られたことで、笑いを抑えることができなかった。
「んだよ照れてんのかー?」
「そうだそうだ! 実は人のこと好きなんだろう! この照れ屋め!」
周りの言葉など無視だ。
とうとうその日がやってきた。
姫様を案内し終え、ひよっこと二人。
「お前が姫様の兵か」
「え、そうですけど……」
少しのやり取りでわかった。
こいつが姫様の兵になったのは姫様の気まぐれじゃない。このひよっこは姫様をたらし込んでいる。
城の中で好き勝手生きるために、いいように吹き込んでいるに違いない。
立場を理解していないのか、はたまたとぼけているのか不思議そうな視線を向けてくる。
人畜無害そうだが油断ならない。そもそも、こんなヤツ、どこで見つけてきたのか。どこの馬の骨ともわからないヤツが姫様専属の兵になるなどおかしすぎる。
顔つきまで姫様をバカにするようなものに思えてきた。
「これから行うのは本気の訓練だ。いくら姫様に目をかけられているからって、ケガしても泣くなよ?」
「ケガくらいなら大丈夫ですよ。腕がつながっていたら御の字です。これまでは日常的にケガをしているような状態でしたし、本当に運がよかったです。それでも大丈夫です。全力でお願いします!」
「……。当たり前だ」
冗談なのか本気なのかわからないな。
だが、ここからなら姫様にも声が聞こえない。
「習いたいなんて舐めたこと言ってるようだから言っておくが、お前は俺がここで潰す」
どこかで見た顔だったような気もするが、王国から与えられたと思われる衣服に着せられている様から、おそらく街で見かけただけだろう。
姫様に迫っていた変態貴族をやっと処理できたと思い安心していた野田が、すぐに変なひよっこがまとわりついていて、正直胸がムカついてきた。
「なあ、最近の姫様、どう思うよ」
「前より楽しそうだよなー。やっぱり年が近い男の子がついてるからじゃねぇ?」
「姫様も年頃だしなぁ。そりゃそうか」
「わかる。それに、最近は親近感湧くっつーかな? 少し近寄りやすい印象になった気がするし」
「ま、近寄れないんだけどな」
「でも、やっと子どもらしいところが見られて、俺たちとしては安心だ。お前は違うのか? フロニア」
「……ああ」
他のヤツらはこんな調子で、ひよっこのことをなんとも思っていないらしい。あんな頼りないヤツを置いていて、いざという時、姫様を守れるとは思えない。
俺は、姫様とほとんど接点のないただの一騎士にすぎない。どれだけ近くにいようとも、名前すら覚えられていないだろう。
だが、それでいいのだ。
そうあるべきなのだ。
覚えられようとするなどおこがましすぎる。
だが、こうして俺たちが姫様の話をできるようになったのは、あの兵を近くに置くようになったからだろう。
これは、今まで完璧だった姫様の戦略かもしれない。
実際に、俺の見た限りだが、騎士団の者たちの意識は変わっている。
確かに、姫様が歩み寄ってくれているのかもしれない。
「何かあったなら相談に乗るぞ? 俺たち同じ騎士団の仲間だろ?」
「いや、いい。お前たちには関係ない」
肩に乗せられた手を払い、俺は距離を取る。
そして、一人剣を振る。
「あいつ。自分を特別だと思ってるよな」
「今のもやな感じだし」
「仕方ないさ。あいつはただ一人、実力だけでここまで上がってきたんだ」
「それは認める。騎士団長を除けば、ここじゃあいつが一番強いからな」
「でも、あの態度はないだろ」
ガヤガヤと騒ぎ立てるザコども。
俺は、弱いヤツらが嫌いだ。
自分の力がないくせに、他人を悪く言い、自らが努力しない言い訳しか並べない。
そのくせ強者がスキを見せれば、全力で引きずり下ろそうとする。
俺はそうはなりたくないと努力を積み重ね、実力で王国騎士団に入ったのだ。
「……俺はっ、俺はっ!」
後日、ひよっこが正式に姫様の兵として雇われたことを聞いた。
どんな経緯か聞きたくもない。話半分に聞き流した。
どうせ、そこらのひよっこが顔だけで好かれて運よく選ばれたのだろう。それで疑いもせずにのこのこ入ってきたに違いない。
ちょうど剣聖が国外追放されるなんて事件があった直後だし、国も混乱していて、姫様の事情を汲むことができないのだろう。
そんな矢先、王国騎士団に、そのひよっこと試合をしてほしいという依頼が姫様から舞い込んできた。
「姫の兵が相手だろ? お前がやれよ」
「やだよ。見かけた感じからしてジョブは持ってそうだったけど、ケガさせたらどうなるかわからないだろ?」
「でも、訓練だって話だしさぁ」
誰もやろうとしなかった。だから、俺が手を挙げた。
好都合だった。
「俺がやります」
「フロニア、お前……」
全員が俺の顔を意外そうに見ていた。
「誰もやりたくないんだろ? だったら、俺がやる」
「意外だな。そんなに熱心に教えたがるなんて」
「別に……」
「少し見直したぞ!」
「ああ。俺、お前のことを誤解してたかもしれない」
「そうか…………」
真意は話さない。
話したところで理解されるわけがない。
だが、俺はひよっこを潰す機会を得られたことで、笑いを抑えることができなかった。
「んだよ照れてんのかー?」
「そうだそうだ! 実は人のこと好きなんだろう! この照れ屋め!」
周りの言葉など無視だ。
とうとうその日がやってきた。
姫様を案内し終え、ひよっこと二人。
「お前が姫様の兵か」
「え、そうですけど……」
少しのやり取りでわかった。
こいつが姫様の兵になったのは姫様の気まぐれじゃない。このひよっこは姫様をたらし込んでいる。
城の中で好き勝手生きるために、いいように吹き込んでいるに違いない。
立場を理解していないのか、はたまたとぼけているのか不思議そうな視線を向けてくる。
人畜無害そうだが油断ならない。そもそも、こんなヤツ、どこで見つけてきたのか。どこの馬の骨ともわからないヤツが姫様専属の兵になるなどおかしすぎる。
顔つきまで姫様をバカにするようなものに思えてきた。
「これから行うのは本気の訓練だ。いくら姫様に目をかけられているからって、ケガしても泣くなよ?」
「ケガくらいなら大丈夫ですよ。腕がつながっていたら御の字です。これまでは日常的にケガをしているような状態でしたし、本当に運がよかったです。それでも大丈夫です。全力でお願いします!」
「……。当たり前だ」
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だが、ここからなら姫様にも声が聞こえない。
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