世界で唯一の天職【配信者】と判明した僕は剣聖一家を追放される〜ジョブの固有スキルで視界を全世界に共有したら、世界中から探し求められてしまう〜

マグローK

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第26話 姫様と 会話しながら ダンジョンへ

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 街中で姫様とスキルを使った意思疎通をしてみて、特に問題がなさそうだったので、ダンジョンでも使ってみることに決まった。

 元々ダンジョンで使うための能力として模索していたから大いに結構だ。

 さて、ダンジョンの入り口付近まで来て一度立ち止まる。

「一般的に知られているのは、この辺りまでなんでしたっけ?」

"《セスティーナ》そうですね。把握している限り、以前、リストーマ様を救出した際に王国騎士団や私、他実力のある方々が入ったくらいです。それ以外ですと、数人の冒険者の方が探索に行ったという話があるくらいでしょうか。どちらも、あまり一般的ではありませんね"

「確かにそうですね」

"《セスティーナ》前回は本当に心配したんですからね! こちらから何を言っても伝わらなかったですし! 帰ってきて安心したのもわかってください!"

「は、はい……」

 思っていたよりも、剣聖のやっていたことは人並外れたことだったみたいだ。

 僕も帰ってこられたことを当然と思っていたが、実はそうではなかったようだし。

 姫様の心配を甘く見ていた。なんだか、申し訳ないことをしたな。

「すみません。危険な場所という認識が欠けていました」

"《セスティーナ》い、いえ。責めるつもりじゃないんです。それに、謝るなら私が謝るべきです。リストーマ様の実力を正しく理解できていなかったのですから"

「そんな。それは、セスティーナの問題じゃないですよ」

 ただ、やることは変わらない。

 気を引き締めて、目の前の魔獣に油断しないこと。

"《セスティーナ》お気をつけて"

「はい。気をつけて探索します」



 入ってすぐ、もうすでに何かの気配を感じた。

「見られてますね」

"《セスティーナ》すみません。やはり、気が散りますか?"

「あ、いえ。セスティーナのことじゃなくって、魔獣です」

"《セスティーナ》えっと、どこにもいないようですが……"

 さすがに視界や音だけでは情報が足りないのか、姫様は気づいていない様子。

 いくら現地にいるようだとしても、こればかりは経験というか、僕の身につけてしまった警戒能力だろうか。

 ダンジョンに入ればわかる。気配はあからさまに僕を狙っている。
 僕の出入りを知って、何日か狙っていたのだろうか。

「やはり、魔獣です。今なら見えてますかね? アレです」

"《セスティーナ》はい。見えました。本当にいましたね。あれはディスガイズ・フォックスです。人を化かすことが得意な魔獣です。でも、外にもいる魔獣ですね。私も知っています"

「そうなんですか?」

"《セスティーナ》はい。冒険者の方が倒したという話を聞いたことがあります。化かす力はスキルのようです"

「なるほど。ダンジョンの中にもいるんですね」

"《セスティーナ》聞いた限りでは初めてですね。外にいる魔獣と同じ種族の魔獣がダンジョン内にいたという話は、これまで情報がありません。もしかしたら特殊な個体の可能性もあります。気をつけてください"

「わかりました。ありがとうございます」

 あまり世間を知らないから、とってもありがたい情報だ。

 さて、向こうは警戒心が強いらしく、うかつに接近してこない。
 化かしてくるとのことで、もしかしたら、すでに術中という可能性も?

 いずれにしても、名前以外にも情報がある程度あるということが、ダンジョンの魔獣でないことの証拠だろう。

「コーン!」

 一声鳴いた。

 しかし、仲間が来る様子はない。

 何かから逃げてきたのか、元から生息しているのか。
 警戒していても、僕を狙うことはやめない。
 それは、狙っていたからなのか……。

 僕への警戒が今までの何よりも強いというのに、

「くっ!」

"《セスティーナ》なんです? 今のは"

「石つぶてですね。当たらなかったですけど、目とかに入ると不利になります」

"《セスティーナ》そのサイズは石つぶてというよりもっと大きい気がしますが……"

 飛んできたのは石つぶて。

 これから考えると、化かすというのは、もしかしたら目くらましという可能性もあるんじゃないか?

 攻撃してきたということからもわかるが、あのディスガイズ・フォックスからは敵意しか感じない。

 せめて、仕留めてやるのみだ。

「多分、なんとかなるので、備えてください」

"《セスティーナ》わ、わかりました"

 一応姫様に警告を出してから、続いて飛んでくる石つぶてを回避。

 剣聖やフロニアさんの攻撃と比較すれば止まっているようにすら見える。

 うん。大丈夫。

 ディスガイズ・フォックスの様子に、焦りはあっても何かがうまくいっている様子はない。

「はっ!」

 スパッと一撃。

 これで、苦しむことはなかったはずだ。

"《セスティーナ》本当に一撃ですか!?"

「はい。一応、持ち帰り、調べてもらった方がよかったかなと……。あっ! あの、この光景は目をつぶっていてください」

"《セスティーナ》大丈夫です。リストーマ様にだけ負担をかけることなどできません"

 遅かった気がするが、倒した魔獣をさっさと収納袋に入れる。

 要望を出してすぐに袋をもらえたが、明らかに魔獣の方が大きかったのにすっぽり入ってしまった。

 これなら、体力の限りダンジョンを探索できそうだ。

"《セスティーナ》しかし、あそこまで華麗に倒してしまうなんて……"

「石ころを起点に何かしてこようとしていたようなので、早めに決着を、と思ってのことです。セスティーナの助力あってこそですよ」

"《セスティーナ》そんな。リストーマ様のお力ですよ"

「ありがとうございます」

 しかし、魔獣を背負わなくていいだけでものすごいラクだ。

 袋は運びやすいし、まったく気にならない。

「それでは、まだ続けられそうなので続行しますね」
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