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第45話 姫様にプレゼント
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「ごちそうさまでした!」
「美味しかったです」
「そりゃよかった。また来てくれよ」
「「はい! ありがとうございました!」」
美味しいものを食べられて大満足。
姫様との約束も果たせたし、本当によかった。
あれ、でも何か忘れているような。
「あっ」
勢いよく店を出ようとしたところで、お金を払っていないことを思い出した。
「あの。今回はお金を」
「おお。そうだったね。えっと、どうしようか……」
「これで足りますか?」
「…………! そいつは……。あんたそんなに稼いでるのかい? 無理してないかい?」
おばさんは急に僕の肩を掴むと、じっと目を見つめてきた。
「え、え。大丈夫です」
「お嬢さん。こいつが無理してないか、しっかり見守ってやりなよ」
「は、はい……」
「足りるなんてもんじゃないよ。うちじゃ金貨なんて初めてだよ。こりゃたまげた。貴族にでも仕えているのかい?」
「そ、そんなところです」
「はー。すっごい出世したんだねぇ」
「あはは」
いっぱい食べてしまったから、銅貨や銀貨じゃ少ないかと思って金貨を出したけど、どうやら多すぎたらしい。
どうしよう。フロニアさんから預かっていた銅貨とか銀貨とかの方を出すべきだったのかな?
「こいつは、あれだ。おつりが返せないよ。どうしようかねぇ」
「それじゃあ、また来た時によくしてください。前にタダで食べさせてもらっているので」
「なっ! そんなことでいいのかい?」
「はい。僕はこうして話せてとても嬉しかったです」
「お、お嬢さんは?」
「私もそうしていただけると嬉しいです」
「くぅ……」
「えっ!」
どうしよう。そんなに難しい頼み事じゃないと思うんだけど、店のおばさん目頭を押さえて泣き出しちゃった。
もしかして、こういうことってよくないこと?
屈辱的、とか?
「あ、あの……」
「ああ! いいよ。いいとも! ほんっとうに心が広いんだね。わかった。ぜひまた来てくれよ。そんときは存分によくしてやるさ。本当にありがとね!」
「はい!」
店を出てからも、おばさんは見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。
やっぱり胸の内があったかい気がする。
どうしてかはわからないけど、でも、これまでの生活だったら、絶対に味わえなかった感覚だと思う。
「セスティーナ、いつもより美味しそうに食べてましたね」
「り、リストーマ様こそ」
「そうですね。美味しかったです」
「はい……」
パンを食べたらお腹がふくれて、なんだか満足してしまった。
最後もいい雰囲気で店を出られた気がするし。
でも、なんだっけ。何かまだ忘れているような。
「何しに来たんでしたっけ」
「何しに……? はっ……! そうです! 社会勉強ですよ、社会勉強」
「あっ! そうでした! 目的を忘れるところでした。今回はお金を使う勉強で、パンを食べに来たんじゃないんですよね」
「そ、それじゃあ。あのお店に入ってもいいですか?」
「もちろんです!」
姫様の要望があるのなら、僕は火の中、水の中だ。
といっても、なんとなくで中に入ったのは、なんだか小さい道具が並べられた店。
小さいうえ、僕に知識がないからか、あんまりどういうものかわからない。
でも、街を歩く人たちが、飾りとして身につけていたものに似ているような……。
「いらっしゃいませー」
「ど、どうも……」
「こんにちは」
「ふふっ。ここは初めて? ゆっくり見ていってね」
「はい」
「ありがとうございます」
「これらは、何に使うんでしょうか」
「アクセサリーですね。色々な理由で身につけるんですよ」
「なるほど」
アクセサリーか。
やっぱりつけたことないものだからよくわからないな。
サーピィは吸血鬼だから、特別なアクセサリーとか知ってそうだけど、どうだろう。
そういえば、ニュードラとの一件で得た宝石とかも使えるんじゃ……。
「うーん……。どれがいいのかさっぱりわからない。そもそも僕がつけていいものなのか……」
キラキラしてるから、見てる分には楽しいけども。
「あ、これとか姫様に似合いそう」
「何かいいのはありました?」
「あ、あ、えっと。すみません」
「緊張してる? もしかして、あの子、好きな子?」
「えぇまあ……」
「そう。これが似合うと思ったのね。いいんじゃない?」
「本当ですか?」
「ええ」
なんだろう、不思議な雰囲気がある。
これが大人ってことなのかな。
僕なんてジョブに覚醒してもまだまだ未熟。
いいと言ってもらえたんだし、せめて素直に伝えてみよう。
「ありがとうございます」
「いいえー」
「セスティーナ、これなんてどうです? 似合うと思います」
「わ、私にですか? つけます! 買います! 買わせてください!」
「僕が買いますよ。すいません、これいくらですか?」
「そうね。大銅貨五枚でどう?」
「え」
「それくらいなら若いあなたでも手が出るでしょう? 難しい?」
どうなんだろう。
どういう意味なんだろう。
安くしてくれてるって意味なのかな?
さて、大銅貨、大銅貨。
「はい、大銅貨五枚です」
「あなたその袋、いえ、聞かないでおくわ。あなたの魅力にまけておいてあげる」
「あ、ありがとうございます……?」
よくわからないけど、とにかく買えたみたいだ。
さっきよりしっかりとお金の感じもわかったぞ。
「そうだ。これも持っていきなさい」
「これは……?」
「サービスよ。また利用してくれると踏んでのこと。でも、次は奥にある、しっかりしたものに手を出してもらえると嬉しいわ」
「よ、よろしくお願いします」
「がんばってね」
「はい!」
なんだかどっと疲れた感じがする。
でも、買ったアクセサリーをこのまま持っていても仕方ない。
「セスティーナ、少しじっとしていてもらえますか?」
「……はい」
ネックレスをそっと姫様の首にかける。
「わぁ。ありがとうございます! ふふっ。どんなものをもらうよりも嬉しいです」
「そんな。多分、セスティーナの持つ何よりも安いですよ?」
「こういうものはお金じゃありません。ありがとうございます」
よかった。無事喜んでもらえたみたいだ。
僕も嬉しい。
あ、こういうことなのかな?
どんなものをもらうよりも嬉しいってことは。
「そういえば、これをおまけしてもらったんですけど、なんなんですかね」
「おそらく、身につけるとスキルの効果が強まるアクセサリーです」
「そういうものもあるんですね」
試しにつけておいてみよう。
「おい。あれ」
「なんだなんだ?」
「武器を振り回したって?」
「どうしたのでしょうか」
「どうしたんでしょう」
なんだか街がさわがしくなってきた。
少し先に人が集まってきているみたいだ。
よく見ると、地面に剣が落ち、人が取り押さえられている。
って、あれ……
「リトート!?」
どうして、僕の義理の弟がこんなところに……。
「美味しかったです」
「そりゃよかった。また来てくれよ」
「「はい! ありがとうございました!」」
美味しいものを食べられて大満足。
姫様との約束も果たせたし、本当によかった。
あれ、でも何か忘れているような。
「あっ」
勢いよく店を出ようとしたところで、お金を払っていないことを思い出した。
「あの。今回はお金を」
「おお。そうだったね。えっと、どうしようか……」
「これで足りますか?」
「…………! そいつは……。あんたそんなに稼いでるのかい? 無理してないかい?」
おばさんは急に僕の肩を掴むと、じっと目を見つめてきた。
「え、え。大丈夫です」
「お嬢さん。こいつが無理してないか、しっかり見守ってやりなよ」
「は、はい……」
「足りるなんてもんじゃないよ。うちじゃ金貨なんて初めてだよ。こりゃたまげた。貴族にでも仕えているのかい?」
「そ、そんなところです」
「はー。すっごい出世したんだねぇ」
「あはは」
いっぱい食べてしまったから、銅貨や銀貨じゃ少ないかと思って金貨を出したけど、どうやら多すぎたらしい。
どうしよう。フロニアさんから預かっていた銅貨とか銀貨とかの方を出すべきだったのかな?
「こいつは、あれだ。おつりが返せないよ。どうしようかねぇ」
「それじゃあ、また来た時によくしてください。前にタダで食べさせてもらっているので」
「なっ! そんなことでいいのかい?」
「はい。僕はこうして話せてとても嬉しかったです」
「お、お嬢さんは?」
「私もそうしていただけると嬉しいです」
「くぅ……」
「えっ!」
どうしよう。そんなに難しい頼み事じゃないと思うんだけど、店のおばさん目頭を押さえて泣き出しちゃった。
もしかして、こういうことってよくないこと?
屈辱的、とか?
「あ、あの……」
「ああ! いいよ。いいとも! ほんっとうに心が広いんだね。わかった。ぜひまた来てくれよ。そんときは存分によくしてやるさ。本当にありがとね!」
「はい!」
店を出てからも、おばさんは見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。
やっぱり胸の内があったかい気がする。
どうしてかはわからないけど、でも、これまでの生活だったら、絶対に味わえなかった感覚だと思う。
「セスティーナ、いつもより美味しそうに食べてましたね」
「り、リストーマ様こそ」
「そうですね。美味しかったです」
「はい……」
パンを食べたらお腹がふくれて、なんだか満足してしまった。
最後もいい雰囲気で店を出られた気がするし。
でも、なんだっけ。何かまだ忘れているような。
「何しに来たんでしたっけ」
「何しに……? はっ……! そうです! 社会勉強ですよ、社会勉強」
「あっ! そうでした! 目的を忘れるところでした。今回はお金を使う勉強で、パンを食べに来たんじゃないんですよね」
「そ、それじゃあ。あのお店に入ってもいいですか?」
「もちろんです!」
姫様の要望があるのなら、僕は火の中、水の中だ。
といっても、なんとなくで中に入ったのは、なんだか小さい道具が並べられた店。
小さいうえ、僕に知識がないからか、あんまりどういうものかわからない。
でも、街を歩く人たちが、飾りとして身につけていたものに似ているような……。
「いらっしゃいませー」
「ど、どうも……」
「こんにちは」
「ふふっ。ここは初めて? ゆっくり見ていってね」
「はい」
「ありがとうございます」
「これらは、何に使うんでしょうか」
「アクセサリーですね。色々な理由で身につけるんですよ」
「なるほど」
アクセサリーか。
やっぱりつけたことないものだからよくわからないな。
サーピィは吸血鬼だから、特別なアクセサリーとか知ってそうだけど、どうだろう。
そういえば、ニュードラとの一件で得た宝石とかも使えるんじゃ……。
「うーん……。どれがいいのかさっぱりわからない。そもそも僕がつけていいものなのか……」
キラキラしてるから、見てる分には楽しいけども。
「あ、これとか姫様に似合いそう」
「何かいいのはありました?」
「あ、あ、えっと。すみません」
「緊張してる? もしかして、あの子、好きな子?」
「えぇまあ……」
「そう。これが似合うと思ったのね。いいんじゃない?」
「本当ですか?」
「ええ」
なんだろう、不思議な雰囲気がある。
これが大人ってことなのかな。
僕なんてジョブに覚醒してもまだまだ未熟。
いいと言ってもらえたんだし、せめて素直に伝えてみよう。
「ありがとうございます」
「いいえー」
「セスティーナ、これなんてどうです? 似合うと思います」
「わ、私にですか? つけます! 買います! 買わせてください!」
「僕が買いますよ。すいません、これいくらですか?」
「そうね。大銅貨五枚でどう?」
「え」
「それくらいなら若いあなたでも手が出るでしょう? 難しい?」
どうなんだろう。
どういう意味なんだろう。
安くしてくれてるって意味なのかな?
さて、大銅貨、大銅貨。
「はい、大銅貨五枚です」
「あなたその袋、いえ、聞かないでおくわ。あなたの魅力にまけておいてあげる」
「あ、ありがとうございます……?」
よくわからないけど、とにかく買えたみたいだ。
さっきよりしっかりとお金の感じもわかったぞ。
「そうだ。これも持っていきなさい」
「これは……?」
「サービスよ。また利用してくれると踏んでのこと。でも、次は奥にある、しっかりしたものに手を出してもらえると嬉しいわ」
「よ、よろしくお願いします」
「がんばってね」
「はい!」
なんだかどっと疲れた感じがする。
でも、買ったアクセサリーをこのまま持っていても仕方ない。
「セスティーナ、少しじっとしていてもらえますか?」
「……はい」
ネックレスをそっと姫様の首にかける。
「わぁ。ありがとうございます! ふふっ。どんなものをもらうよりも嬉しいです」
「そんな。多分、セスティーナの持つ何よりも安いですよ?」
「こういうものはお金じゃありません。ありがとうございます」
よかった。無事喜んでもらえたみたいだ。
僕も嬉しい。
あ、こういうことなのかな?
どんなものをもらうよりも嬉しいってことは。
「そういえば、これをおまけしてもらったんですけど、なんなんですかね」
「おそらく、身につけるとスキルの効果が強まるアクセサリーです」
「そういうものもあるんですね」
試しにつけておいてみよう。
「おい。あれ」
「なんだなんだ?」
「武器を振り回したって?」
「どうしたのでしょうか」
「どうしたんでしょう」
なんだか街がさわがしくなってきた。
少し先に人が集まってきているみたいだ。
よく見ると、地面に剣が落ち、人が取り押さえられている。
って、あれ……
「リトート!?」
どうして、僕の義理の弟がこんなところに……。
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