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第55話 母を巻き込み脱出す
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「いい声を聞かせてもらったわ。久しぶりによーく笑わせてくれたわね」
「母様!」
「母様と呼ぶなあっ! お前のことを自分の子どもだと思ったことなど、ただの一度としてないわ!」
「くっ……」
「リストーマくん……」
「大丈夫。わかってたことだから。でも、やっぱり少し……」
改めて、ダンジョンに閉じ込められるほどのことを僕はしてきたのか? と考えてしまう。
僕としてはそんなことをした記憶はないが、相手からすればわからない。
ただ、母はもう、母だっただけ……。
「今なら外にはリストーマくんのママだけだよね」
「フラータ? 何するつもり?」
「今度はフラータがリストーマくんを助ける番。今からこの岩を吹き飛ばす。大丈夫。ママは力になってくれなくても、隣にはフラータがいるんだから。リストーマくんは大丈夫だよ」
「ありがとう」
そうだ。
たとえかつての家族に見放されても、僕はもう一人じゃない。
僕には一緒にいてくれる仲間たちがいる。姫様やサーピィ、ニュードラ。それに、フロニアさんたち。
そして今はフラータもいる。
もう、怖くない。
「いっくよー」
「待って。僕がやる。僕が背負うんだ」
「……。わかった」
「何よこの虫唾が走る感覚。気持ち悪い……。私たちに迷惑かけることがそんなに楽しいっていうの?」
「そうは思わない。今の僕には、あなたたちよりも大事な人たちがいるだけだ」
「しゃべり方まで気に食わないって話は本当なのね。せっかくリトートと同じケガを負わせるだけにしようと思ったけど、そんな甘いもので終わらせてやるものですか」
「知らない。関係ない。僕はもう、迷わない!」
元の家族よりも今の仲間たち。
僕は前に進むために一歩を踏み出すんだ。
「ん? ねえ、何か音しない?」
「音?」
「あら、やっと気づいたかしら? 準備は今の分だけじゃないのよ?」
「え? え? まだ落ちてくるの?」
「なるほど。ハナから同じケガで終わらせるつもりはなかったのか」
「だまらっしゃい!」
先ほどまでは安定していた天井がガラガラと音を立て始めた。
母のスキルで壊れた状態に戻ろうとしている。
「え、ど、どうするの? さすがにこれだと今崩れちゃったところを壊しても、上が崩れてきて押し潰されちゃうよ?」
「ええ。そういうこと。一緒に入った子は賢いようだけど、残念ね。一緒に潰れてちょうだい。そして、一緒に入ったことを恨むことね」
「そんな必要はない。問題ないさ」
外には守るべき人は誰もいない。
それなら、遠慮する理由は一つもないってことだ。
「フラータ。安全そうなところまで下がってじっとしてて」
「どうするの? リストーマくんも助かるよね?」
「大丈夫。助かる。まあ見ててよ」
「……わかった」
さて、これで周りに気を使う必要はない。
相手はただの岩石だ。魔獣のように複雑な動きはしない。
「ここらあたりか? うーん。こっちの方かな」
「何をしようとムダよ。どこまで逃げようと、そこから先の天井は連鎖的に崩れるよう計算してあるんだもの。死んだフリをしていれば、まだ天井が残って助かる可能性があったかもねぇ」
「なるほどここか。えい! えい!」
「あっ! くっ!」
ビンゴ。ちょうど母に当たったらしい。
認識できない速度でスキルを使って位置を把握したから、簡単に当てられた。
どのくらいの石がぶつかったかまではわからないけど、文句を言えないくらいにはダメージになったらしい。
「こ、このくらい。私のスキルがあれば」
「いいんですか? あなたが魔法を使えば、ここらの状態も元に戻ってしまいますよ?」
「ふん。そんなハッタリ通用しないわ。自分のスキルの使い方くらい心得てるもの」
「治さないんですね。それじゃあ、終わりってことで」
「何を言ってるのかしら? それはそっちの方でしょ? 時間稼ぎに引っかかったのはそっちだものね」
とうとう時間が来たのか、ガラガラと大きな音を立てて天井が崩壊してきた。
この量なら対処できそうだ。
「はああ!」
「え、え、な、え! うあっ!」
天井の崩落。
そんなもの、準備できる状況ならばどうってことはない。
危機状況を想定した訓練は死ぬほど受けているのだ。
さすがにお金が大量に降ってくるような状況は想定していないが、ダンジョンで天井が落ちてくる状況は、魔獣に囲まれた状態の場合、魔獣の能力によって起こされた場合などなど、さまざまな状況を想定して、フロニアさんたちから訓練を受けてきている。
だから、
「これくらい、いなしながら脱出へつなげることなんて簡単ですよ!」
「やめっ! 痛いっ。待って。直す。直すわ。だから。うっ。ああっ!」
「残念ながら、手を止めると僕が潰されてしまうので」
「あっ。あああああ!」
小石を弾く要領で、大岩を弾き飛ばす。すると面白いように吹っ飛んでいく。
コツは岩の心臓部を見極めることだ。
怪鳥が飛ばしてきた岩石を切る時もこの技は役に立った。
一つ一つ確実に弾き飛ばす。
さて、
「これで、最後ぉ!」
「おおっ! すごいすごいよ!」
「ありがとう」
フラータの拍手が嬉しい。
これにて、ダンジョンもしっかりと出入りができる状態に戻り……。と言っても、ちょっとだけ地形が変わってしまったなぁ。
「痛い。痛いわ……」
「あなたなら自分で治して帰れるでしょう。もちろん。ダンジョンの方を先に直すことになるのでしょうけど」
「ま、待って。母を、母を置いていかないで。悪かったわ。今までのことは謝る。だから、ねえ待って、待って! 私を置いていかないでよぉ!」
「母様!」
「母様と呼ぶなあっ! お前のことを自分の子どもだと思ったことなど、ただの一度としてないわ!」
「くっ……」
「リストーマくん……」
「大丈夫。わかってたことだから。でも、やっぱり少し……」
改めて、ダンジョンに閉じ込められるほどのことを僕はしてきたのか? と考えてしまう。
僕としてはそんなことをした記憶はないが、相手からすればわからない。
ただ、母はもう、母だっただけ……。
「今なら外にはリストーマくんのママだけだよね」
「フラータ? 何するつもり?」
「今度はフラータがリストーマくんを助ける番。今からこの岩を吹き飛ばす。大丈夫。ママは力になってくれなくても、隣にはフラータがいるんだから。リストーマくんは大丈夫だよ」
「ありがとう」
そうだ。
たとえかつての家族に見放されても、僕はもう一人じゃない。
僕には一緒にいてくれる仲間たちがいる。姫様やサーピィ、ニュードラ。それに、フロニアさんたち。
そして今はフラータもいる。
もう、怖くない。
「いっくよー」
「待って。僕がやる。僕が背負うんだ」
「……。わかった」
「何よこの虫唾が走る感覚。気持ち悪い……。私たちに迷惑かけることがそんなに楽しいっていうの?」
「そうは思わない。今の僕には、あなたたちよりも大事な人たちがいるだけだ」
「しゃべり方まで気に食わないって話は本当なのね。せっかくリトートと同じケガを負わせるだけにしようと思ったけど、そんな甘いもので終わらせてやるものですか」
「知らない。関係ない。僕はもう、迷わない!」
元の家族よりも今の仲間たち。
僕は前に進むために一歩を踏み出すんだ。
「ん? ねえ、何か音しない?」
「音?」
「あら、やっと気づいたかしら? 準備は今の分だけじゃないのよ?」
「え? え? まだ落ちてくるの?」
「なるほど。ハナから同じケガで終わらせるつもりはなかったのか」
「だまらっしゃい!」
先ほどまでは安定していた天井がガラガラと音を立て始めた。
母のスキルで壊れた状態に戻ろうとしている。
「え、ど、どうするの? さすがにこれだと今崩れちゃったところを壊しても、上が崩れてきて押し潰されちゃうよ?」
「ええ。そういうこと。一緒に入った子は賢いようだけど、残念ね。一緒に潰れてちょうだい。そして、一緒に入ったことを恨むことね」
「そんな必要はない。問題ないさ」
外には守るべき人は誰もいない。
それなら、遠慮する理由は一つもないってことだ。
「フラータ。安全そうなところまで下がってじっとしてて」
「どうするの? リストーマくんも助かるよね?」
「大丈夫。助かる。まあ見ててよ」
「……わかった」
さて、これで周りに気を使う必要はない。
相手はただの岩石だ。魔獣のように複雑な動きはしない。
「ここらあたりか? うーん。こっちの方かな」
「何をしようとムダよ。どこまで逃げようと、そこから先の天井は連鎖的に崩れるよう計算してあるんだもの。死んだフリをしていれば、まだ天井が残って助かる可能性があったかもねぇ」
「なるほどここか。えい! えい!」
「あっ! くっ!」
ビンゴ。ちょうど母に当たったらしい。
認識できない速度でスキルを使って位置を把握したから、簡単に当てられた。
どのくらいの石がぶつかったかまではわからないけど、文句を言えないくらいにはダメージになったらしい。
「こ、このくらい。私のスキルがあれば」
「いいんですか? あなたが魔法を使えば、ここらの状態も元に戻ってしまいますよ?」
「ふん。そんなハッタリ通用しないわ。自分のスキルの使い方くらい心得てるもの」
「治さないんですね。それじゃあ、終わりってことで」
「何を言ってるのかしら? それはそっちの方でしょ? 時間稼ぎに引っかかったのはそっちだものね」
とうとう時間が来たのか、ガラガラと大きな音を立てて天井が崩壊してきた。
この量なら対処できそうだ。
「はああ!」
「え、え、な、え! うあっ!」
天井の崩落。
そんなもの、準備できる状況ならばどうってことはない。
危機状況を想定した訓練は死ぬほど受けているのだ。
さすがにお金が大量に降ってくるような状況は想定していないが、ダンジョンで天井が落ちてくる状況は、魔獣に囲まれた状態の場合、魔獣の能力によって起こされた場合などなど、さまざまな状況を想定して、フロニアさんたちから訓練を受けてきている。
だから、
「これくらい、いなしながら脱出へつなげることなんて簡単ですよ!」
「やめっ! 痛いっ。待って。直す。直すわ。だから。うっ。ああっ!」
「残念ながら、手を止めると僕が潰されてしまうので」
「あっ。あああああ!」
小石を弾く要領で、大岩を弾き飛ばす。すると面白いように吹っ飛んでいく。
コツは岩の心臓部を見極めることだ。
怪鳥が飛ばしてきた岩石を切る時もこの技は役に立った。
一つ一つ確実に弾き飛ばす。
さて、
「これで、最後ぉ!」
「おおっ! すごいすごいよ!」
「ありがとう」
フラータの拍手が嬉しい。
これにて、ダンジョンもしっかりと出入りができる状態に戻り……。と言っても、ちょっとだけ地形が変わってしまったなぁ。
「痛い。痛いわ……」
「あなたなら自分で治して帰れるでしょう。もちろん。ダンジョンの方を先に直すことになるのでしょうけど」
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