世界で唯一の天職【配信者】と判明した僕は剣聖一家を追放される〜ジョブの固有スキルで視界を全世界に共有したら、世界中から探し求められてしまう〜

マグローK

文字の大きさ
54 / 69

第54話 ダンジョン閉じ込め

しおりを挟む
「リストーマくんのママがやったの?」

「おそらく……」

 もちろん可能性の一つに過ぎない。でも、可能な人でわざわざやるってなったら、考えられるのは母くらい。

「……っ! まだ収まってない。危ない! いや、間に合わない」

「え、え!?」

 即座にフラータを抱きかかえ回避する。

 だが、岩石は次々と降ってきた。

 こんなの偶然にしては出来過ぎだ。自然じゃない。

 やっぱり用意周到すぎる。

 本人の戦闘能力がないからこそ、こうして下準備をしているんだ。

「ごめん、間に合わなかった。血が……」

「ううん。大丈夫。これくらいケガのうちにも入らないよ」

「でも、僕がケガを負わせちゃった。僕の知り合いのせいで。くそ……」

 しかも、本来の使い方が傷を治す能力によってケガをさせてしまうなんて。

 助手だって張り切ってくれてたのに……。

 僕にも誰かを回復させるような力があれば、フラータのケガもすぐに治してあげられるのに。

「本当に大丈夫だよ。心配しないで。そんなに気にしなくても平気だから」

「そうだ。回復薬」

「チッチッチ。フラータは魔王の娘なんだよ? 見てて。これくらいの傷なら……」

「え、すごい。治ってく」

 どういうわけか、フラータのケガがみるみるうちに治っていく。

 仕組みはわからないけど、これが、魔族の肉体……。

「ね? ちょっと疲れるんだけど、さっきくらいの傷なら意識して回復できるんだよ」

「フラータは頼れる存在なんだね」

「そうそう! 守られるだけじゃ嫌。あんまり暴力は好きじゃないけど、好きな子たちを守るためなら、フラータも少しはがんばれる」

「わかった。でも、気をつけて」

「わわっ! いつの間に」

 僕たちを取り囲むように現れたのは魔獣たち。

 おそらく、入り口が崩れる音で集まってきたのだろう。

 数は多く、種類は様々。今まで見たこともない魔獣が入り乱れている。

 お互いに警戒している様子から、特に仲間意識を持っているわけではなさそうだ。だけど、僕たちが一番なめられているようで、まず全員で僕たちを狙うことに決めたらしい。

 司令塔として母がいる可能性も考えたけど、そこまで手は回してなさそう。姿は見えない。

「片っ端から倒していく。フラータは今回はおとなしくしてても大丈夫だけど」

「ううん。フラータもしっかり手伝うよ。助けてもらってばっかりじゃ悪いし」

「でも、治ったばかりなんだし、無理はしないでね?」

「大丈夫大丈夫。守られてばっかりじゃないよ」

 なんだろう、さわやかな笑顔だ。

 今までの穏やかなフラータとは少し違う、闘気の満ちた表情。

 全身から放たれるオーラにも、心がざわつく感覚がある。魔王の娘ってことを身をもってわかった気がする。

「それじゃあ、せっかく意気込んでくれてるから、今回は僕の背中も任せようかな」

「ありがと。じゃあ、フラータは右からやるね!」

「あ、ちょ!」

 優しさが向く相手じゃないとわかると、フラータは容赦しないようだ。

 右からという言葉通り、一番右端にいた魔獣が一撃でしとめられた。

 これは、僕もぼーっとしていられないな。

「『マイ・ヴィジョン』!」

 スキルを使用。視界が変わった影響により、魔獣たちはでたらめに攻撃を始めている。

 やはり、あくまで狙いを僕に定めたというのは雰囲気だけのもの。

 以前、確実に群れで動いていても同士討ちを始めたのだから、仲間でもなんでもなければ協力関係が崩れるのは早い。

「こっちこっち!」
「グルァ!」

 まずは一匹。

「ほらほら、当たらないぞ!」
「ガルゥ!」

 次に二匹。

 っとと。僕がやらなくてももうすでにしとめてくれているみたいだな。

 暴れる魔獣の合間をぬって倒してみたけど、どうやら一匹、他の個体より明らかに強いヤツがいるみたいだ。

「今回のMVPくらいに倒してるなぁ」

 おそらく他の魔獣はコイツの狙いに合わせただけだろう。

 自分が狙われないようにするために。

「すごいね! 魔獣を使役できるの?」

「ううん。今、僕のスキルを使って視界が使えなくなってるだけ」

「そうなんだ! どおりで見えてないみたいになってたんだね。でも、フラータよりもあの子がほとんど倒しちゃったみたいだよ」

「そうみたいだね。でも、さすがにあの魔獣の相手は僕に任せてくれないかな?」

「わかった。気をつけてね」

「もちろん」

 スキをつく。

 見えていない相手のでたらめな攻撃は、分解すればできるだけ広い範囲を守ろうとしているだけのことが多かった。

 当てずっぽうだからスキが大きくて、素早くても狙った一撃を出さないだけに、甘い。

「グルアアア! グルア! グルアアア!」

「おやすみ」

「ガ、ガガ」

「……すごい」

 簡単だ。

 フロニアさんたちはそう簡単に攻撃を当てさせてくれない。

 それに、訓練とはいえまるで命を奪いそうなほどの勢いで迫ってくる。

 それと比べればラクなもの。

「片づいたね」

「さっきの様子だと、リストーマくん一人でもなんとかなったね」

「ううん。フラータが手伝ってくれてすごく助かったよ。ありがとう」

「そ、そうかなー? えへへー」

 頭をかいて照れてる姿は先ほどまでの闘気たぎるフラータと同一人物とは思えない。やっぱり魔王軍なんだなぁ。

 さて、いつものように回収も終えて、改めて入り口に向き直る。

 当分魔獣は来ないだろうし、一時的に危機は脱したと言えば脱したんだけど。

「どうしようか。この入り口」

「勢いよく壊しても、また崩れてきそうだしね」

「それに、外に人がいたら危ないし」

「確かに!」

「うーん……」

 厄介なことしてくれたなぁ。

「あっははははは! ダンジョンに閉じ込められるなんて無様ねぇ。いつもの場所で不意に閉じ込められる気分はどーう?」

「この笑い声は……」

「ああっと。八つ当たりはやめてちょうだい? 自分で入って自分で出られなくなったんだもの、私は悪くないわ」

「やっぱり、外から聞こえるけど、この声は……」

「知り合い?」

「母のものだ」

「え!? この声がリストーマくんのママなの?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

処理中です...