世界で唯一の天職【配信者】と判明した僕は剣聖一家を追放される〜ジョブの固有スキルで視界を全世界に共有したら、世界中から探し求められてしまう〜

マグローK

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第60話 視界受け取り

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「リストーマ様のスキルはお金の転送ができましたし、他の方から視界を受け取る事もできないでしょうか? そちらの方が簡単かと思うのですが」

「確かに、今まで言葉は受け取ってきましたが、視界を受け取るという発想はありませんでしたね」

 言われてみればそれもそうだ。

 物を動かすよりも楽にできそうだし、できればとても便利そうだ。

 今まででも、ただ見守ってもらうだけでなく、助言をいただく事はできた。

 けれど、文字だけだから、実際に何かを見せてもらう事はできなかった。だが、それができるとなれば、さらなる利便性のアップにつながりそうな気がする。

「でも、どうしてそのような事を?」

「地図や本など、補足を出せるとその場でも情報を使えると思いまして。以前、サーピィ様と遭遇した時にも、言葉でしか伝えられないもどかしさがあったので、何かないかと考えていたのです」

「なるほど。そうですね。見てわかるという事もありますからね。ヴァンパイアについての情報も、あの場で比較できればよりよかったように思います」

 とても便利そうだなぁ。

 便利そうなんだけど……。

「うーん……」

「嫌、でしょうか」

「いえ、そんな事はありません。やってみたいんですけど……」

 自分で味わうもの、かつ、自分の視界が消える可能性を考えると、尻込みしてしまう。

「自分勝手かもしれませんけど、どうにか安全に使いたいんですよね。自分の見えているものまで見えなくなるのは困るので」

「そうですね。リストーマ様の言う通りかと思います。あくまで補足のための地図ですから、それで視界を埋めてしまっては元も子もありませんしね」

「そうなんですよ。言葉のように視界の一部を埋めるなら、いいんですけど……」

 一部?

「それです!」

「どれですか?」

「視界の一部で試してみるんです。それに、ここならダンジョンと違い危険もありませんし」

「一部とは一体どのように?」

「ちょっと試してみましょう。セスティーナ、お願いします」

「私ですか?」

「はい」

「わかりました」

 さて、まずはいつも通りスキルの使用。

「どうですか? 見えてますか?」

「はい。見えました」

 僕の方でも姫様の位置が把握できてる。

 第一段階クリア。

「それじゃあ、みんなもお願い」

 サーピィたちがうなずいたのを確認してから、スキルの適用範囲を拡大。

「どう?」

「大丈夫です」
「できてる」
「フラータも」

 よし、全員にスキルが効いてる。

 ここまではOK。

 それで、姫様が見ていた視界の一部を受け取る。

 一部だけ、一部だけ。

 ん? これは……。

「えーと……」

「私の視界が見えているのですか?」

「はい。ですが、一部なので視界のどの位置に置くかということと、範囲の調節に手間取っていまして……」

「こちらは変わっていませんが、大丈夫ですか?」

「あれ、そうなんですか? 僕には自分の姿が見えているんですけど……」

 もしかすると、何か別のものを見ている可能性もあるのか。

「すみませんセスティーナ、ちょっとだけ首を動かしてもらっても大丈夫ですか?」

「こう、ですか」

「うおっ!」

「どうされました?」

「いえ、なんでもありません。やはり僕には見えてます」

 いきなり動くとこんなに驚くのか。

 自分の見えている部分が自分の意識と違って動くことの違和感がすごい。これからもできるだけ気をつけたいところだなぁ。

 でも、今新しく見えるようになったのはやはり姫様の視界だ。それは間違いない。

 となると、ここをこうして……。

「できました! 思っていたより簡単にできましたよ」

「よかったです。これでリストーマ様のお手伝いができる訳ですね」

「ありがとうございます。それにしても、なんだか自分の姿がいつもよりキレイに見える気がするんですよね」

「そ、そうですか? 気のせいじゃありませんか?」

「そう、なんですかね?」

 他の人の視界というものは、いつも見えていないからわからない。

 姫様が言うならそうなのかな?

 僕の視界について何か言われたことはないし、もしかしたらそういうものなのかな?

 まあでも、

「よしっ。多分調整もできました。これはいけますよ。慣れは必要かと思いますが、とても便利になるはずです」

「それはよかったです」

「うまくいったので、さっそく外でも試してこようと思います」
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