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第59話 しぶとく:剣聖視点
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~剣聖視点~
「静かだ……」
嫁も息子も出かけたきり帰ってこない。
そのせいで勝手に飯が出てこない。
散々だ。ああ、散々だ。
こんな生活いつぶりだろう。
「いや、生まれてから一度として、こんな生活をしたことはなかったな……」
思えばこれまで剣聖ってだけで誰も彼もがちやほやしてくれた。
誰もオレに反抗する者はなく、なんだって与えられてきた。
親を除いて。
「ま、そんな親すら今はいない。過去の人間。……」
腹が鳴った。
以前食べ物を口に入れたのはいつだっただろう。
忘れた。覚えていない。
用意する人間がいない。
「仕方ない。自分で用意するか……」
久しぶりに体を動かす気がする。
重く、鈍い。
まるで自分の体でなくなってしまったような感覚。と同時に、衰えを感じる。
まだそんな歳ではないと思うのだが、リストーマとの戦闘後から、ずっと歳をとったように感じる。
思ったように体が動かない……。
だが、今はこれでも十分だ。
そんなことよりとにかく飯。
「くっそどこだ? どうしてオレの家でオレが把握できないような配置にしてるんだ?」
本当に、周りが使えない奴ばかりだとイライラさせられる。
もっとわかりやすくしとけよ。ったく……。
そうだ。
「確か、ここに……。うっ……」
ダメだ。においがおかしい。
なんだこれ……。どうしてこんな状態になるまで放置してたんだ。
「これは確実に腐ってるな……。おい! さっさと飯を出せ!」
家にオレの声だけが響く。
だが、誰も返事をしない。
そうだ。誰もいなかったんだ。
「……。何か取ってくるか……」
面倒だ。
だが、家に食える物がない以上、他に方法はない。
幸い、オレはここらの魔獣程度なら引けは取らない。
戸が開いた。
「誰だ!」
「はあ、はあ」
「……はああ、はああ」
入ってきた。
人が二人。
男と女。
帰ってきた息子と嫁。
「どこ行ってやが……」
「はあ、はあ」
「……はああ、はああ」
二人して、ようやく息をしているようだ。
家に着くなりその場に倒れ込んでしまった。
見るからにボロボロで、長い間着替えていなかったことがわかる。
オレの声に反応しなかったところを見ると、どうやら口がきけないほど疲弊しているらしい。
「なにしてたんだこいつら」
オレの飯も用意せずに、帰ってくればなにもできない。
腹が立つ。
飯の用意くらいしていけってんだよ。それに、せめて帰ってきたなら飯の用意くらいしろってんだ。
こんな状態で帰ってきやがって。
役立たず。
「どけ」
オレはあいつらがどうなろうが知ったこっちゃない。
だが、一応水くらいはかけておいてやるか。
回復して動けるようになれば、飯の用意くらいできるかもしれない。
「ほら、さっさと動け」
「おぼぼぼぼ」
「ばあっ! ばあっ!」
「きったねー」
多少は回復したように見えたが動き出す様子はない。
これで飯を作り出すといいが……。残念だがそんなことはできなさそうだ。
本当に役に立たない。
嫁の方は回復のスペシャリストだったはずだが、まったく能力を発揮する様子がない。
ダメだこりゃ。
「バカ二人は放置だな」
召使いもいない。飯もない。嫁と息子は役立たず。
これまでは残りの金でどうにかごまかしてきたが、それももう限界らしい。
今までのように金が入ってこないせいで、所持金はすでに底を尽きた。
オレ以外の誰がどうなっても構わない。が、この二人みたく惨めったらしく生きるのはもう懲り懲りだ。
「グアアアア!」
思いの外、森の深いところまで歩いてきていたらしい。
魔獣が勢いよく走ってくる。
うるさい。
「黙れ」
「……」
オレだって何もせず、ただぼーっとしていた訳じゃない。
今日まで何もしてこなかった訳じゃない。
魔獣なんて、元から相手にならなかったが、それでも今までで一番早く、楽に倒せた。
そう。そうだ。この力だ。
剣聖なんだ。オレは……。
「オレが剣聖なんだ。誰がなんと言おうと。今はこのオレが剣聖なんだ!」
話に聞いていただけの力。
剣を生み出し、剣を操り、剣を収める。
それは、他の人間には許されず、剣聖にだけ許された奥義。
ついに、ついに今、完成した。
「少しずつ、死神にジリジリと追い詰められるような生活はもうまっぴらごめんだ。そんなのオレの性に合わない」
剣や衝撃波じゃあ、小細工で簡単に封じられることはわかった。
だが、小細工は小細工だ。
万能なオレに小細工なんか必要ない。
オレの力は強すぎるからこそ、今まで気にしていなかったのが悪かった。
小細工すら吹き飛ばす圧倒的な力。それをオレが持っていなかったのが悪い。
「ふへへっ! ふへっ! ふへぇ!」
待ってろ。今に絶望を味わわせてやる。
「静かだ……」
嫁も息子も出かけたきり帰ってこない。
そのせいで勝手に飯が出てこない。
散々だ。ああ、散々だ。
こんな生活いつぶりだろう。
「いや、生まれてから一度として、こんな生活をしたことはなかったな……」
思えばこれまで剣聖ってだけで誰も彼もがちやほやしてくれた。
誰もオレに反抗する者はなく、なんだって与えられてきた。
親を除いて。
「ま、そんな親すら今はいない。過去の人間。……」
腹が鳴った。
以前食べ物を口に入れたのはいつだっただろう。
忘れた。覚えていない。
用意する人間がいない。
「仕方ない。自分で用意するか……」
久しぶりに体を動かす気がする。
重く、鈍い。
まるで自分の体でなくなってしまったような感覚。と同時に、衰えを感じる。
まだそんな歳ではないと思うのだが、リストーマとの戦闘後から、ずっと歳をとったように感じる。
思ったように体が動かない……。
だが、今はこれでも十分だ。
そんなことよりとにかく飯。
「くっそどこだ? どうしてオレの家でオレが把握できないような配置にしてるんだ?」
本当に、周りが使えない奴ばかりだとイライラさせられる。
もっとわかりやすくしとけよ。ったく……。
そうだ。
「確か、ここに……。うっ……」
ダメだ。においがおかしい。
なんだこれ……。どうしてこんな状態になるまで放置してたんだ。
「これは確実に腐ってるな……。おい! さっさと飯を出せ!」
家にオレの声だけが響く。
だが、誰も返事をしない。
そうだ。誰もいなかったんだ。
「……。何か取ってくるか……」
面倒だ。
だが、家に食える物がない以上、他に方法はない。
幸い、オレはここらの魔獣程度なら引けは取らない。
戸が開いた。
「誰だ!」
「はあ、はあ」
「……はああ、はああ」
入ってきた。
人が二人。
男と女。
帰ってきた息子と嫁。
「どこ行ってやが……」
「はあ、はあ」
「……はああ、はああ」
二人して、ようやく息をしているようだ。
家に着くなりその場に倒れ込んでしまった。
見るからにボロボロで、長い間着替えていなかったことがわかる。
オレの声に反応しなかったところを見ると、どうやら口がきけないほど疲弊しているらしい。
「なにしてたんだこいつら」
オレの飯も用意せずに、帰ってくればなにもできない。
腹が立つ。
飯の用意くらいしていけってんだよ。それに、せめて帰ってきたなら飯の用意くらいしろってんだ。
こんな状態で帰ってきやがって。
役立たず。
「どけ」
オレはあいつらがどうなろうが知ったこっちゃない。
だが、一応水くらいはかけておいてやるか。
回復して動けるようになれば、飯の用意くらいできるかもしれない。
「ほら、さっさと動け」
「おぼぼぼぼ」
「ばあっ! ばあっ!」
「きったねー」
多少は回復したように見えたが動き出す様子はない。
これで飯を作り出すといいが……。残念だがそんなことはできなさそうだ。
本当に役に立たない。
嫁の方は回復のスペシャリストだったはずだが、まったく能力を発揮する様子がない。
ダメだこりゃ。
「バカ二人は放置だな」
召使いもいない。飯もない。嫁と息子は役立たず。
これまでは残りの金でどうにかごまかしてきたが、それももう限界らしい。
今までのように金が入ってこないせいで、所持金はすでに底を尽きた。
オレ以外の誰がどうなっても構わない。が、この二人みたく惨めったらしく生きるのはもう懲り懲りだ。
「グアアアア!」
思いの外、森の深いところまで歩いてきていたらしい。
魔獣が勢いよく走ってくる。
うるさい。
「黙れ」
「……」
オレだって何もせず、ただぼーっとしていた訳じゃない。
今日まで何もしてこなかった訳じゃない。
魔獣なんて、元から相手にならなかったが、それでも今までで一番早く、楽に倒せた。
そう。そうだ。この力だ。
剣聖なんだ。オレは……。
「オレが剣聖なんだ。誰がなんと言おうと。今はこのオレが剣聖なんだ!」
話に聞いていただけの力。
剣を生み出し、剣を操り、剣を収める。
それは、他の人間には許されず、剣聖にだけ許された奥義。
ついに、ついに今、完成した。
「少しずつ、死神にジリジリと追い詰められるような生活はもうまっぴらごめんだ。そんなのオレの性に合わない」
剣や衝撃波じゃあ、小細工で簡単に封じられることはわかった。
だが、小細工は小細工だ。
万能なオレに小細工なんか必要ない。
オレの力は強すぎるからこそ、今まで気にしていなかったのが悪かった。
小細工すら吹き飛ばす圧倒的な力。それをオレが持っていなかったのが悪い。
「ふへへっ! ふへっ! ふへぇ!」
待ってろ。今に絶望を味わわせてやる。
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