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第27話 僕の実力を見せてやろう
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「さあ、やって見せなさい」
「余裕だ余裕。こんなの、レシピ通りに切って入れるだけだろ?」
煽るような調子のタレカに僕がスマホでレシピを調べ始めると、タレカの顔は引きつったまま固まってしまった。
「なんだよ」
「嘘でしょ。レシピを見てる……」
「僕をなんだと思ってるんだよ」
「飯テロ」
「絶対褒めてないな。うん。わかるぞ。流石にここ数日一緒に過ごしてきたから、タレカが何を言いたいかはよーくわかる」
しかもこのタレカとかいう女、僕が包丁を持ったところしか見ていない。
確かに、持ち方は多少おぼつかないところはあったかもしれない。だが、それとこれとは別問題だ。
「タレカからのヒントはなしでいいさ。僕には、この現代の利器がある。今日は大人しく座っているがいい」
「とりあえず隣でサラダでも作ってるわね」
「あ。うん」
景気付けに盛大にカッコつけたというのに、それをスルーしてタレカはサラダ用のレタスをちぎり始めた。
本当、マイペースというかなんというか……。
気にせず、僕は用意された材料を見る。にんじん、じゃがいも、玉ねぎ、豚肉、カレールウ。この辺がメインか。
カレールウは家にあったもののようだ。この感じだと、実はあったのに買ってしまったということだろう。
飴色玉ねぎは僕の小手先では難しそうなので、全て煮込んで作るスタイルでいこうと思う。フライパンのなかった飯盒炊爨を再現する形だ。
「テレレッ!」
「うるさい。あと音外れてるから」
「う、うるさいのはそっちだ。それにまだ出だしだけだろ」
じゃっかん顔が熱くなるのを無視して、音楽は脳内で再生することにする。
こほんと一つ咳払いしてから、僕はまな板に野菜を並べ皮をむいて小さく切っていった。無論、皮むきに関してはタレカににらまれたので、今回はピーラーで行った。
「まずはにんじん、続いてじゃがいも、最後に玉ねぎを入れていきます」
「ねえ、それやらないとできなかったっていうネタバラシなの?」
「そっちこそいちいちツッコまないと……」
鋭い視線で僕を見るタレカは、すでにサラダを作り終えていた。そのうえ、食卓にはドレッシングを含めた調味料だけでなく、箸やスプーンも並べられている。ほとんど準備は万端らしい。
「ツッコまないと、何よ」
「いえ、なんでもないです。静かにやります」
「別に言わないとできないなら言っていいわよ?」
「違います。できます」
「なんで敬語なのよ」
申し訳なさのせいです。
なんていう心中はさておき、僕はスマホに書いてあるレシピを見ながら鍋に具材を適宜投入していった。簡易的なものなのでやるのは時間管理だ。
背後では、炊飯器が稼働している。どうやら、こっちの手配も済ませてくれていたらしい。本当、自分の世界に入ってほとんど何もしていないじゃないか。
「いや待て。ここはタレカの家なんだから、タレカは一手一手を止まらずにできるんだし、早くできるのは当然じゃないか!」
「何を当たり前のこと言ってるのよ」
そもそも、タレカは別に自分の仕事を自慢してきたわけではない。僕が勝手に萎縮しているだけだ。本当に、さっきから何をしているのだ。
ずっと、姉妹ごっこをしてるのか。
なんて、物思いにふけっていると、いい感じにカレーが煮えてきた。
「なんだかハヤシライスみたいね」
「カレーとハヤシって何が違うんだ?」
「味じゃないの?」
「そういや違うな」
なんだか使っている具材とかも微妙に違そうだが、今日はカレーライスとハヤシライスの違いを研究する会ではない。そのため、意識を目の前のカレーに戻す。
煮えたカレーの味見をして最後の調整を済ました。
「うん。バッチリだな」
「待ちなさい」
タレカの待ったが入った。
「私に貸して」
「ど、どうぞ」
僕はタレカに場所を譲った。
不思議と心臓が少し早くなって、タレカの動きから目を離せない。タレカも僕と同じようにカレーの味を確かめると、一つうなずいた。
「普通ね」
「だから普通のカレーを作ろうって話だろ?」
「いや、変な隠し味とか、嘘みたいなテクニックとかを使おうとしてない普通の味ってことよ」
「同じなのでは?」
「全然違うわよ。だって、下手だったら口に入れることもできないようなものが出来上がるじゃない」
「僕にそれを期待していたのか?」
「……」
無言になるタレカ。
「期待していたのか!」
「メイトじゃないけど、せめて指を切ってくれると良かったんだけどね」
「応急手当てしてくれたのかな?」
「キットならあるわよ」
「自分でやれと……」
何か引っかかっているようだが、過去の僕を引き合いに出されては何も言えない。
ぱっぱと盛り付け食卓へ並べた。
「お味は?」
「普通。普通ね」
「普通か」
「ええ。普通に美味しいわ」
その後も普通普通と連呼しつつ、なんだかんだ完食してくれた。
どうやら、タレカの普通はここでは褒め言葉だったみたいだ。
「その顔の方がこないだの笑顔より断然いいわよ」
「は?」
ハッとして、僕は顔を押さえた。
どんな顔をしていたのかわからずタレカを見ると、タレカが意地悪そうにニヤニヤして僕のことを見てきた。
まじでどんな顔してたんだよ。
どんどん熱くなる僕の顔を無視してタレカが食べ終えた皿を片すように立ち上がった。
「さて、カレーは作れるとわかったし、次はチャーハンかしらね」
「これまだやるの?」
「余裕だ余裕。こんなの、レシピ通りに切って入れるだけだろ?」
煽るような調子のタレカに僕がスマホでレシピを調べ始めると、タレカの顔は引きつったまま固まってしまった。
「なんだよ」
「嘘でしょ。レシピを見てる……」
「僕をなんだと思ってるんだよ」
「飯テロ」
「絶対褒めてないな。うん。わかるぞ。流石にここ数日一緒に過ごしてきたから、タレカが何を言いたいかはよーくわかる」
しかもこのタレカとかいう女、僕が包丁を持ったところしか見ていない。
確かに、持ち方は多少おぼつかないところはあったかもしれない。だが、それとこれとは別問題だ。
「タレカからのヒントはなしでいいさ。僕には、この現代の利器がある。今日は大人しく座っているがいい」
「とりあえず隣でサラダでも作ってるわね」
「あ。うん」
景気付けに盛大にカッコつけたというのに、それをスルーしてタレカはサラダ用のレタスをちぎり始めた。
本当、マイペースというかなんというか……。
気にせず、僕は用意された材料を見る。にんじん、じゃがいも、玉ねぎ、豚肉、カレールウ。この辺がメインか。
カレールウは家にあったもののようだ。この感じだと、実はあったのに買ってしまったということだろう。
飴色玉ねぎは僕の小手先では難しそうなので、全て煮込んで作るスタイルでいこうと思う。フライパンのなかった飯盒炊爨を再現する形だ。
「テレレッ!」
「うるさい。あと音外れてるから」
「う、うるさいのはそっちだ。それにまだ出だしだけだろ」
じゃっかん顔が熱くなるのを無視して、音楽は脳内で再生することにする。
こほんと一つ咳払いしてから、僕はまな板に野菜を並べ皮をむいて小さく切っていった。無論、皮むきに関してはタレカににらまれたので、今回はピーラーで行った。
「まずはにんじん、続いてじゃがいも、最後に玉ねぎを入れていきます」
「ねえ、それやらないとできなかったっていうネタバラシなの?」
「そっちこそいちいちツッコまないと……」
鋭い視線で僕を見るタレカは、すでにサラダを作り終えていた。そのうえ、食卓にはドレッシングを含めた調味料だけでなく、箸やスプーンも並べられている。ほとんど準備は万端らしい。
「ツッコまないと、何よ」
「いえ、なんでもないです。静かにやります」
「別に言わないとできないなら言っていいわよ?」
「違います。できます」
「なんで敬語なのよ」
申し訳なさのせいです。
なんていう心中はさておき、僕はスマホに書いてあるレシピを見ながら鍋に具材を適宜投入していった。簡易的なものなのでやるのは時間管理だ。
背後では、炊飯器が稼働している。どうやら、こっちの手配も済ませてくれていたらしい。本当、自分の世界に入ってほとんど何もしていないじゃないか。
「いや待て。ここはタレカの家なんだから、タレカは一手一手を止まらずにできるんだし、早くできるのは当然じゃないか!」
「何を当たり前のこと言ってるのよ」
そもそも、タレカは別に自分の仕事を自慢してきたわけではない。僕が勝手に萎縮しているだけだ。本当に、さっきから何をしているのだ。
ずっと、姉妹ごっこをしてるのか。
なんて、物思いにふけっていると、いい感じにカレーが煮えてきた。
「なんだかハヤシライスみたいね」
「カレーとハヤシって何が違うんだ?」
「味じゃないの?」
「そういや違うな」
なんだか使っている具材とかも微妙に違そうだが、今日はカレーライスとハヤシライスの違いを研究する会ではない。そのため、意識を目の前のカレーに戻す。
煮えたカレーの味見をして最後の調整を済ました。
「うん。バッチリだな」
「待ちなさい」
タレカの待ったが入った。
「私に貸して」
「ど、どうぞ」
僕はタレカに場所を譲った。
不思議と心臓が少し早くなって、タレカの動きから目を離せない。タレカも僕と同じようにカレーの味を確かめると、一つうなずいた。
「普通ね」
「だから普通のカレーを作ろうって話だろ?」
「いや、変な隠し味とか、嘘みたいなテクニックとかを使おうとしてない普通の味ってことよ」
「同じなのでは?」
「全然違うわよ。だって、下手だったら口に入れることもできないようなものが出来上がるじゃない」
「僕にそれを期待していたのか?」
「……」
無言になるタレカ。
「期待していたのか!」
「メイトじゃないけど、せめて指を切ってくれると良かったんだけどね」
「応急手当てしてくれたのかな?」
「キットならあるわよ」
「自分でやれと……」
何か引っかかっているようだが、過去の僕を引き合いに出されては何も言えない。
ぱっぱと盛り付け食卓へ並べた。
「お味は?」
「普通。普通ね」
「普通か」
「ええ。普通に美味しいわ」
その後も普通普通と連呼しつつ、なんだかんだ完食してくれた。
どうやら、タレカの普通はここでは褒め言葉だったみたいだ。
「その顔の方がこないだの笑顔より断然いいわよ」
「は?」
ハッとして、僕は顔を押さえた。
どんな顔をしていたのかわからずタレカを見ると、タレカが意地悪そうにニヤニヤして僕のことを見てきた。
まじでどんな顔してたんだよ。
どんどん熱くなる僕の顔を無視してタレカが食べ終えた皿を片すように立ち上がった。
「さて、カレーは作れるとわかったし、次はチャーハンかしらね」
「これまだやるの?」
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