今更あなたから嫉妬したなんて言われたくありません。

梅雨の人

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エルザの笑顔

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その日エルザは、いつものように周囲の者を避けるように執務室に一人閉じこもり王太子妃の執務を肩代わりしていた。

するとそこにダグラスがやって来た。 

「エルザ様。お久しぶりです。」 

颯爽とやって来たダグラスは何か悪だくみが成功したときのような笑みを浮かべた。

第二妃として王宮に住みだしてからダグラスに会うのは初めてのことで、久々に顔を合わせた友の為にエルザは手元にあった書類を戻し侍女にお茶を用意するように頼んだ。

「ダグラス様、お久しぶりです。お元気でしたでしょうか。」

「ええ、お陰様で。今日伺ったのは、実は明日から私がエルザ様の側近としてお側に仕えさせて頂くことになったのを、是非直接エルザ様にお伝えさせて頂こうかと思いまして。

…しかし、何ですか、その書類の多さは…。ありえませんね。明日からではなく、今日から早速手伝わせていただきます。もちろん、この王宮の高級茶を味わった後で。」

さらっと、自分がエルザの側近になったことを告げたダグラスは、茶目っ気たっぷりに茶と菓子をつまみながら、驚きと喜びで混乱しているエルザをいたずらが成功した子供のような目で見やった。


本来、この国では 側近は王太子と王太子妃にしかつかないため、何もしない王太子妃となったプリシアの側近たちはエルザの執務をサポートすることもなく、プリシアと共に悠々自適の贅沢三昧な日々を送っていた。 

その反面、第二妃であるエルザには側近などおらず、不本意ではあるが肩代わりしている王太子妃の業務を一人で黙々と行っていた。

膨大な量の執務をたった一人でこなす重圧感と孤独に押しつぶされかけていたエルザは、ダグラスがこれから自分の傍にいてくれると知らされ心から喜びを感じた。 

「ダグラス様、ありがとうございます。あなた様がこれから私をサポートしてくれるだなんて。大変心強く思います。 

ふふふっ…こちらに嫁いできて、初めて喜びを感じる事ができましたわ…。 

本当にありがとうございます。」
 

その日から、エルザの傍には常にダグラスが側近として寄り添った。 

国王の甥で公爵家嫡男のダグラスが第二妃エルザの側近になったことで、周囲の者は一堂に目を疑った。 

王太子ルーカスの側近になるべき優秀なダグラスが、第二妃エルザの側近になったのだから。 

しかし王家の内情を理解している者達は、エルザにダグラスが付いたことに納得し安堵した。

むしろ、なぜもっと早くにそうしなかったのか、ダグラスだけでなくあと何人かエルザに側近をつけて、プリシアの側近を外すべきという者達も多くいたのだった。

ダグラスがエルザの側近として勤めだしたその日、エルザは久々に気の置ける者が傍にいてくれる安心感を感じ、嫁いでから初めて笑顔を見せていた。

しかしその数日後、エルザとダグラスが執務に取りかかっていると、滅多に訪れることのないルーカスがエルザの執務室に険しい表情でやって来たのだった。 
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