今更あなたから嫉妬したなんて言われたくありません。

梅雨の人

文字の大きさ
20 / 51

他人事

しおりを挟む
「それはそれは、おめでとうございます、殿下。お祝いは何が宜しいでしょうか。」 

「…あっ…いや…祝いなど気にしなくていいんだ。その…君は…嫌ではないのか?」 

笑顔は愚か、自分のことを以前のように名前で呼んでくれなくなってしまったエルザが、プリシアが懐妊したと聞いて少しは嫉妬してくれるだろうかと、ルーカスには内心期待していたところがあった。

しかし意を決してプリシアの懐妊をエルザに告げたというのに、本人は特に思うところもないといった感じで、嫉妬どころか他人事のように祝いを何にすればいいのか尋ねてきた。

プリシアが自分との子を身籠ったという事実をただの他人事のように受け止めているエルザの様子にルーカスは頭をかち割られたような衝撃をうけた。

「……っそういえばっ、エルザが嫁いでくる前に私の気持ちだと贈ったイヤリングがあっただろ?君がつけているのを見かけたことがないのだが。あれは君に気に入ってもらえたのだろうか。」 

「イヤリング…ああ...そういえば殿下から以前頂きましたわね。申し訳ございません殿下。大変すばらしい贈り物をしていただいたのに、身につけるような機会も全くございませんでしたもので。今後もしそのような機会がごさいましたら是非使わせていただきますわ。」 

「あれをつけるような機会がなかった…か…そうか。確かにそうだったな…すまない、エルザ…君に夫婦らしいことなど何もしてやれていなかったな…。今度必ず君と過ごす時間を作るからその時こそあのイヤリングをつけてくれると嬉しい。」 

「そのようなことを殿下が気になさらずとも、私にはダグラス様がついてくれておりますので。申し訳ございませんがこの後面会が入っておりますの。では後日何かお祝いを贈らせていただきますね。」 

「.........そうか。失礼した。......エルザ......いや、なんでもない。では.....。」 

 そう言って肩を落として去っていったルーカスをダグラスとエルザは冷めた目で見送った。 


それからすぐに王太子妃の懐妊が公に発表されてからというもの、日々の日課のようにプリシアを労わり寄り添うルーカスが庭園をゆっくりと歩いているのが目撃されるようになった。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

婚約破棄の前日に

豆狸
恋愛
──お帰りください、側近の操り人形殿下。 私はもう、お人形遊びは卒業したのです。

愚か者の話をしよう

鈴宮(すずみや)
恋愛
 シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。  そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。  けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

これからもあなたが幸せでありますように。

石河 翠
恋愛
愛する男から、別の女と結婚することを告げられた主人公。彼の後ろには、黙って頭を下げる可憐な女性の姿があった。主人公は愛した男へひとつ口づけを落とし、彼の幸福を密やかに祈る。婚約破棄風の台詞から始まる、よくある悲しい恋の結末。 小説家になろうにも投稿しております。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。

こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。 彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。 皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。 だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。 何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。 どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。 絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。 聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──…… ※在り来りなご都合主義設定です ※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です ※つまりは行き当たりばったり ※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください 4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

欲深い聖女のなれの果ては

あねもね
恋愛
ヴィオレーヌ・ランバルト公爵令嬢は婚約者の第二王子のアルバートと愛し合っていた。 その彼が王位第一継承者の座を得るために、探し出された聖女を伴って魔王討伐に出ると言う。 しかし王宮で準備期間中に聖女と惹かれ合い、恋仲になった様子を目撃してしまう。 これまで傍観していたヴィオレーヌは動くことを決意する。 ※2022年3月31日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

処理中です...