今更あなたから嫉妬したなんて言われたくありません。

梅雨の人

文字の大きさ
26 / 51

君は誰よりも素敵な女性だ

しおりを挟む
最悪なタイミングでエルザにあの二人の会話を立ち聞きさせてしまったダニエルは苛立っていた。


『……ルーカスがあの女に王太子妃の仕事を少しでもするように話していたのは意外だったな。 

しかし、あの女狐め。 

自分のせいで、エルザがつらい境遇に晒されているのを分かってて、よくあんなことが言えたものだ。

あんな女に愛を語っていたルーカスもどうかしてるとしか言いようがない。あいつは変わってしまった。

あんなに大切にしていたエルザをここまで蔑ろにして傷つけるとは…。くそっ!』


ようやくエルザの執務室に辿り着いたことに気が付いたダグラスは、はっと我に返りエルザの表情を窺った。


「エルザ様…エル…。大丈夫か?今はただの友人として君に接することを許してくれるだろうか?」 

「ええもちろん、ダグ…。」 

「ありがとう、エル。

僕はいつか君の心が壊れてしまうんじゃないかと不安になるんだ。エル…こんなことを僕が聞くのもどうかとおもうが、君は…まだルーカス殿下のことが好きなのか…?」 

「好き…ね…。ふふふっ。私が第二妃として嫁ぐ前に、殿下が私のところにやって来たの。 

そして私のことだけを愛していると告げてきたのよ。意味が分からなかったわ。しかもとても素敵なイヤリングを贈られたわ。殿下からの私への気持ちだと思って受け取ってほしいなんて言われて。 

プリシア様と一夜を共にされたと聞かされた時点で、殿下の心は私には残されていないことはもうわかっていたはずなのに…ね、ほんの少しだけ期待した自分がいたの。馬鹿ね、私。 

先ほどの殿下とプリシア様の会話で目が覚めた思いがするわ。愛してる…ね。殿下が言うと、軽いのか重いのかわからなくなるわね。ふふっ。ほんのわずかに残ってた私の殿下への想いなんて、お蔭様できれいさっぱりなくなってしまったわ。 

結局私は、ただプリシア様の代わりに王太子妃の仕事をこなすためだけに、ここに閉じ込められてしまった愚かな女なのね。もう、早くここから解放されたいって言ったらみんなに軽蔑されるかしら?」 

「軽蔑するわけないだろ、エル…。君がそう望むのなら僕はいつだって君の味方だ。僕は喜んで君に協力させてもらうよ。そして何より君に知っていてほしい。君は誰よりも素敵な女性だということを。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~

桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜 ★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました! 10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。 現在コミカライズも進行中です。 「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」 コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。 しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。 愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。 だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。 どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。 もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。 ※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!) 独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。 ※誤字脱字報告もありがとうございます! こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

婚約破棄の前日に

豆狸
恋愛
──お帰りください、側近の操り人形殿下。 私はもう、お人形遊びは卒業したのです。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

私のことを愛していなかった貴方へ

矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。 でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。 でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。 だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。 夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。 *設定はゆるいです。

【完】お望み通り婚約解消してあげたわ

さち姫
恋愛
婚約者から婚約解消を求められた。 愛する女性と出会ったから、だと言う。 そう、それなら喜んで婚約解消してあげるわ。 ゆるゆる設定です。3話完結で書き終わっています。

【完結】婚約破棄した王子と男爵令嬢のその後……は幸せ?……な訳ない!

たろ
恋愛
「エリザベス、君との婚約を破棄する」 「どうしてそんな事を言うのですか?わたしが何をしたと言うのでしょう」 「君は僕の愛するイライザに対して嫌がらせをしただろう、そんな意地の悪い君のことは愛せないし結婚など出来ない」 「……愛せない……わかりました。殿下……の言葉を……受け入れます」 なんで君がそんな悲しそうな顔をするんだ? この話は婚約破棄をして、父親である陛下に嘘で固めて公爵令嬢のエリザベスを貶めたと怒られて 「そんなにその男爵令嬢が好きなら王族をやめて男爵に婿に行け」と言われ、廃嫡される王子のその後のお話です。 頭脳明晰、眉目秀麗、みんなが振り向くかっこいい殿下……なのにエリザベスの前では残念な男。 ★軽い感じのお話です そして、殿下がひたすら残念です 広ーい気持ちで読んでいただけたらと思います

幼馴染の王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 一度完結したのですが、続編を書くことにしました。読んでいただけると嬉しいです。 いつもありがとうございます。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

処理中です...