愛を知ってしまった君は

梅雨の人

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耳朶

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はぁ、はぁっと息を切らすジョーンズは、時折ルビーに寒くはないか?大丈夫かと声をかけた。
 

「ルビー、着いたよ。さあ俺の手を離さないで。」 

そう言って、ジョーンズはボートから立ち上がったルビーの手をしっかりと支えた。 

「すまない、ルビー。」 

一言そう告げたジョーンズに、一体何に謝っているの?と聞こうとしたルビーの体はフワッと空中に浮きあがった。 

あっという間にルビーはジョーンズのジャケットに覆われたまま抱きかかえられ、気が付けば屋根のある四阿に設置されてある椅子に座らされていた。 

「ああ、なんてことだ。ルビー。すまない。寒くはないか?ああ…俺のジャケットでルビーの綺麗にまとめていた髪の毛がこんなことに。すまないルビー。」 

そう言って甲斐甲斐しくルビーの髪の毛を手ぐしで不器用ながらに整え、雨で濡れてしまった箇所がないか確認し、自らのハンカチを差し出してきたジョーンズにルビーは思わず噴き出した。 

「びっくりしたわ、ジョー。あなたって案外面倒見がいいのね。私が感謝してもあなたが謝る必要なんてないわ。本当にありがとう、ジョー。ふふふっ。こうなったのはあなたのせいではないし、なかなかこんな経験できないんだもの。ドキドキして楽しかったわ。きっとこの時を私はいつまでも忘れないと思う。」 

 「うっ…ルビーは俺を褒めてくれてるんだろうが、なぜだろう、嬉しくないのは…。とにかく天気にまで気が回らなかった俺の失態だな。」 

「ジョー、あなたも濡れてるわよ。今度は私の番ね。髪の毛がすごく濡れてるわ…」 

ゆっくりと立ち上がったルビーは座っているジョーの膝の間に立った。 

そうして濡れたジョーンズの頭をハンカチで拭きだしたルビーの長い髪が、ふわりとジョーンズをかすめた。

思わずうつむいてしまったジョーンズの耳朶は次第に赤く染まっていったのをルビーが気が付くことはなかった。 
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