愛を知ってしまった君は

梅雨の人

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男たちの視線

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「すごく味が染みていて美味しいわね、この料理!」 

「良かった、ルビーのお気に召して。くくっ。ルビー、ちょっと失礼。」 

そう言って椅子から立ち上がったジョーンズは、その長く節くれだった指でルビーの口物を拭った。 

一瞬のことで言葉も出ないルビーにふっと笑みをこぼすとそのまま指をペロッと舐めたその仕草があまりにも色っぽく、思わず周囲の女性陣の視線を一気に虜にしていた、 

「ジョー、びっくりしたじゃないっ。教えてくれたらよかったのにっ。」 

「ルビーに教えるよりああした方が早かったんだからいいじゃないか。ああ、ルビーに教えないでそのままにしていても、それはそれで可愛かったんだろうけどな。」 

「なっ、可愛いってっ…ふぅ。とにかく、ありがとう、ジョー。それはそうと、つい最近まで国を出ていたというのに、色々なところを知っているのね。 

いつもジョーが連れていってくれるレストランの料理はおいしいし、どこに行っても素敵な場所ばかりなんだもの。 

驚かされてばかりよ。本当にいつもありがとう、ジョー。」 

 「おいおい、格好つけさせてくれよ。ルビーに喜んでもらおうって俺も一応色々調べているんだ。苦にはならないし、俺も楽しく過ごせているんだから、こちらの方がお礼を言いたいくらいだ。」 

 「そうやっていつもジョーは私を甘やかすのよね。」 

「正解。」 

「じゃあ…、今度は私が行先を決めてもいいかしら?」 

心なしか自信なさげにそう口にするルビーにジョーンズは安心させるように大きく頷いた。 

小さなころからいつもこの男はこうやって私を安心させるのだとルビーは思った。 

これでよかったのかどうか、未だに確固たる自信はないけれども、ジョーンズをみているとこれでよかったのかもしれないと、ルビーは思うことが出来た。 

食事も終わり夜も遅くなってきたので、ルビーはジョーンズに贈られて屋敷に戻ってきた。 

そこではジョーンズに嫉妬にまみれた視線がむけられていた。 

その嫉妬にまみれた鋭い視線とジョーンズの視線がいつものように静かにぶつかり合っていることにルビーは気が付いていなかった。 
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