見捨てられたのは私

梅雨の人

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朝、私のもとにやって来たタカさんは何も言わずに冷やした布巾を私の腫れてしまった目に当ててくれております。 

それでも今日はこんなひどい腫れが元の状態の戻ることはないでしょう。。 

 

「ひどい顔よね?」 

「何をおっしゃいますか奥様。そのお顔でひどいなどとおっしゃるのなら私は化け物か何かですか?」 

「化け物って…それはないわよタカさん…ふふっ」 

「そうそう、奥様は笑顔がとてもお似合いでございますよ。」

コンコンっ 
 

「小雪入るぞ?」 

「旦那様っ、奥様はただいま少し取り込んでおりますのに。」 

「タカか。…小雪その目は…。」 

「旦那様、何をぼおっと立っておられるのですか。ただいま取り込んでおりますのでどうか退出してくださいまし。」 

「しかし小雪…」 

「…」 

じっと視線を向けてこられる亮真様から視線をそらします。 

 

今更…今更そんな心配そうな顔をされてもどうすればよいのですか? 
 

もう一人にしないで、新たな場所での生活は心細いのです。お慕いしております。私と一緒にいてくださいとあなたに甘えて良いですか? 

寂しかった…どうして私を放って琴葉お義姉様のもとに行かれてしまったの?琴葉お義姉様のもとに行かれたことさえ知らせる価値は私にはなかったのですか?と責めても良いですか? 

「小雪…いや…なんでもない。失礼した。」 

亮真様は私からすぐに背を向けて立ち去っていかれました。 

亮真様は私を心配してくれていたのでしょうか。わかりません。ただ、私の心が静かな湖面のように凪いでいるのはなぜなのでしょう。 


こちらの屋敷にきて日に日に食が細くなっていたのですが、今日は全くお腹もすきませんので料理人に申し訳ない気持ちでおります。食事がのどを通らずにおりましたら、心配したタカさんに頼まれたらしい料理人さんたちが少量でも栄養のあるものをとスープを作ってくださいました。 

折角私のためを考えて作ってくれたスープを少しずつ口に運ぶだけの作業を一人きりで繰り返します。 


「食事はそれだけか?」 

気が付けば亮真様が部屋の入口に立っておられました。 

どうやら一人の世界に入っていたらしい私は亮真様がいらっしゃったことに気が付いておりませんでした。 

「あまり…食欲がありませんので。料理長が私を心配して特別にこのスープを作ってくれたのです。」 

質問にお答えしておりますのに、亮真様は黙っておられます。 

いつものように表情を変えることもありませんので亮真様が何を考えているか皆目見当もつきません。 

「…ごちそうさまでした。亮真様お先に失礼いたします。」 

お皿の半分で匙を置いた私は静かに席を立って自分の部屋へ戻っていきました。 

その間も亮真様は表情を変えることもなくじっと黙って私を見つめておられました。 
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