見捨てられたのは私

梅雨の人

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「亮真様、書類の入った鞄を忘れておりましたので「あら、助かったわ小雪さん!ありがとうわざわざ届けてくれて。ね亮真さん?でもそれいま必要ないわよね。今から出かけるところだったから、ね?亮真さん?」 

「あ?ああ…」 

「…お出かけですか?」 

「先日の紅葉狩りが本当に素晴らしかったのでしょう?先日小雪さんが行った場所まで今日は亮真が私を連れて行ってくれるのよ。いい気分転換になるだろうからって。本当に気が利くわ、亮真さんって。ありがとう亮真さん。」 

「あ…ああ。琴葉義姉さん。これくらい大したことじゃないよ。いや、小雪も誘おうと思ったが、再び同じ場所に連れ出すのもどうかと…。」 

「…」

「小雪…」

「そうよね、行ったばかりのところにまた戻るなんて小雪さんも嫌よね。亮真さん本当に気が利くわね。では小雪さん。行きましょう亮真さん。」 

「あ、ああ…小雪…すまない義姉さん。やっぱり兄さんと一緒に行ってくれ。」

「何言ってるのよ今更。こんな準備までして今更よ。さあ行きましょう?」

「いや、やっぱり今日はやめておく。」

「どうしたの亮真さん。まさか小雪さんに遠慮しているの?ねえ、小雪さん。いいでしょ?別に紅葉を見に行くだけなんだし。」

「おい義姉さん、やめてくれ。わかった。わかったよ…小雪、また…また後で…」
 

亮真様が珍しく話しかけてきてくださったのはこういう理由があったのだと思い知らされました。別に私と会話をしようと紅葉狩りの感想をきかれたわけではなかったのです。 

取り残された私は周囲の使用人になんとも居た堪れない視線を向けられたままなのに気が付き、そのままタカさんと車に戻りました。 

「奥様…」 

タカさんが何と言っていいのか困っております。私も何といってよいのか言葉が詰まってしまいました。

「申し訳ないのだけれど今日は用事を済ませたらそのまま屋敷に戻りましょう。」
「かしこまりました奥様。」 

沈黙のまま車はそのまま屋敷まで戻ってきました。 

その日亮真様は夜遅くに戻られてきましたが、私はどうしてもお迎えに向かう気分になれず、部屋に籠って寝たふりをしてしまいました。 

部屋が静かにノックされましたが、私は返事をしませんでした。「小雪?起きているのか?」扉が開いて亮真様の声が聞こえます。目を閉じておりますとしばらくして足音は遠ざかっていきました 

亮真様には私に何かおっしゃりたかったのでしょうか。それでも私は今は、今だけは何も聞きたくないのです――。
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