見捨てられたのは私

梅雨の人

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「さあ、小雪。ほかは何がいい?こちらに戻ってきたときはげっそりして顔色も見たことないくらい悪かったがやっとここまで戻ったんだ。もっと体にいいものを食べなければ。なあ、そう思うだろう、亮真君?」 

「それは…」 

「まさか小雪の顔色が悪くなってやつれて行く間、何も気が付かなかったなんてことないよな?美しい小雪があんなになるまで君は小雪の側にいた。だから小雪が心配だよな?亮真君?」 

「そう…ですね。」 

「実家に戻ってこんなに肌つやがよくなった。だから小雪はしばらく家にいてもらおうと思うがそれでいいよな、亮真君?」 

「…小雪は私の妻です。出来たら小雪には早く屋敷に戻ってきてほしいと思っています。これからは私も小雪をこれまで以上に大事にすると約束します。だから…」 

「これからは、ねえ。これまでは大事にしていなかったように聞こえるが?ああ、なるほど。だから嫁入りした際の物しか身に着けていなかったのか。夫婦になって半年。新婚だというのに妻に服の一着、宝飾品の一つも送ることができないほど忙しすぎて、小雪に気が回らなかったという風に聞こえるが?それともなにか?君は冬の雪よりもいつも頼んでもないのに聞かされる琴の音のほうがお好みか?」 

「…」

「孝一郎、小雪も亮真君も困っているわ。小雪のおめでたい席なのだからそれくらいにして頂戴。ね、それでは小雪、十九歳のお誕生日おめでとう。乾杯。」
 

「「「「乾杯」」」」 
 

「お母さま、お父様とのご旅行はいかがでしたか?」 

「それはもう最高だったわよ、ねえ、あなた?」 

「ああ、ゆっくりと地方を巡ることができてお互いに若返った気分だな。それもこれも孝一朗のおかげだ。」 

「そうね。ふふふっ。あなたったら冬の海水に足なんてつけちゃって!」 

「あれはっ、君がはしゃぎすぎてあそこの砂浜で波に足を取られそうになったからだったろう?」 

「あらあら、そういわれればそうだったわね。それであなたが私をかばってくれて。ふふふっ、胸が高鳴っちゃったのよね、それで!」 

「はいはい、母さんも父さんも続きはご自分の部屋でお願いします。まったく、いつまでたっても仲がいいんだから。」 

「あらあら~、仲が良いのは素晴らしいことでしょ、ねえ、あなた?」 

「ごっふん、ごっふん!」 

「あららら、むせちゃって。困った人ね~。」 
 

「…小雪の両親はこんなにも仲が良かったのだな。」 

「ええ、とても自慢の両親ですの。私の憧れですわ。」 

「憧れ…か。」 

「いえ、あの…」 

「いや、すまない。深い意味ではないんだ。」 

お父様とお母さまの旅行のお土産話で大変にぎやかな時間はあっという間に過ぎてしまいました。 

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