見捨てられたのは私

梅雨の人

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「…申し訳ございません一宮様。このような場をお見せしてしまいまして…」 

「小雪さんが謝ることはない。悪いのははっきりしないあいつだろう?」 

「それは…」 

「行くぞ小雪さん。」 

「え?」 

一歩一歩、前回と同じように私の歩調に合わせてくださっている一宮様とともに亮真様達のいる出口へ向かいます。 

出口の一歩手前で太賀お義兄様が私に気が付いてくださいました。 

「小雪さん…君を置いてきてしまってすまなかった。--隣の方は小雪さんの知り合いかい?…一宮殿…?」 

「…小雪…今すぐにこちらに来るんだ。」 

「この方は「大丈夫だよ、小雪さん。」 

「しかし一宮様。」 

「私は一宮東吾だ。。小雪さんが以前熱を出しておられた際に偶然居合わせ病院まで付き添ったのが縁で、今回も、偶然…なぜか一人でこのようなところを歩いておられたので声をかけさせていただいたのですよ。
お一人かと思ったのだが…違ったようですね。まあ、このように美しい令嬢が単身で歩いているのだから私でなくても男なら皆声をかけるでしょう?

お蔭様で先ほどの突風からも彼女を守れてよかった。私がいなければ彼女は大変な目にあっていたはずだ。さあ、小雪さん。ご家族がお待ちだ。もうお兄さん方に置いて行かれないようにな。では私はこれで。」 


(---お兄様方だなんて…一宮様) 

「一宮様。身を挺して風から私をお守りくださりありがとうございました。お気をつけて。」 

「お安い御用だ。ああ、じゃあな、小雪さん。」 

 ひらひらと手を後ろ手で振って一宮様は去っていかれました。 

「小雪、いくら知り合いだからと言って夫以外に親しくするべきではない。」 

「…」 

「ちょっと…どうして?一宮東吾様って言ったら…信じられないわ…。お噂では聞いたことがあるけど…まさかあんなに…。」 

「あんなに、なんだ?とにかく私たちもここにいたって仕方ない。帰ろう。」 

そういわれて琴葉様を太賀さまがお支えになっているにもかかわらず亮真様も反対側をしっかりと包み込むように支えております。 
 

「亮真、琴葉は大丈夫だから小雪さんと一緒に行くんだ。ほら琴葉。車に乗って。」 

「あれ、太賀は乗らないの?」 

「ああ、これから行くところがあるからそこをまわってから帰宅する。では。」 

「そう、ならまた後でねぇ。…ならお願い亮真さん、私と一緒に行きましょう?飲みすぎちゃったし…一人じゃ寂しいわ。」 

「しかし、小雪が…」 

 

「早くぅ亮真さんっ!」」 

「うわっ、引っ張るなよ義姉さん。…小雪っ待ってくれっ」 

何か言いかけている亮真様を後にして一人迎えの車に乗り込みます。 

「奥様…お一人ですか?旦那様は?」 

「亮真様は…琴葉お義姉様を送られてから帰られるみたい。」 

「かしこまりました。では、出発しましょう。」 

車窓から暮れ行く空を眺めながら置いてけぼりにされた私を身を呈して守ってくださった一宮様との心地よいひと時を思い出してしまうのは悪いことなのでしょうか。 

その夜遅くに亮真様が帰宅されました。 

お出迎えをしたほうが良いのでしょうけれども、私は一人部屋の中で静かに居ることに致しました。

足音が私の部屋の前でしばらく止まった後にようやく亮真様の部屋のほうへと去っていきました。 
その日この屋敷に戻って来て以来、初めて一人で夜を過ごしました。
 

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