見捨てられたのは私

梅雨の人

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「寒くない、義姉さん?」 

「少し寒いわ、亮真さん」 

「ほらこれ」 

「ありがとう、でもこれじゃあ亮真さんが寒いんじゃない?」 

「大丈夫だ」 

「じゃあこうしたらどうかしら?亮真さんの外套 大きいんだもの。」 

「ああ、暖かいな。」 

「でしょう?」 

「ああ」 

 

亮真様の外套を琴葉様がお戻しになって、そのまま亮真様の外陰の内側に入られてました。
くっつく様にして亮真様を抱きしめておられます。

「義姉さん…」 

とてもお幸せそうな二人の姿に心がきしみます。 

お義兄様がお義姉様を連れて帰られた次の日から毎日のようにお義姉様は亮真様を訪ねて来られております。 

こうして庭を一緒に歩いて、屋敷に入り熱いお茶を共にし談笑してそれからしばらくして帰っていかれております。 

毎日繰り返されるこの光景は、もしもそれが私の旦那様でなければとても美しいと思うことができるのでしょうか。 

お義姉様はお屋敷でお義兄様と美知恵お義姉様の仲睦まじい光景に傷つき、私はここで亮真様と琴葉お義姉様のこの光景に傷ついているのです。 

ああ、なるほどと思いました。私がいなければすべて丸く収まるべき場所へ収まるのです。ようやくそのことに気が付くことが出来ました。

◇◇◇◇

本日は大河内家の本家、つまり太賀お義兄様のお屋敷へ私たち夫婦でご挨拶にきております。美知恵お義姉様と正式に顔合わせをするためでございます。 

「小雪さん、美知恵に会うのは初めてだったよね?紹介するのが遅れてしまってすまない。小雪さん、美知恵だ。よろしく頼むよ。美知恵、こちらが小雪さんだ。」 

「小雪と申します。よろしくお願いいたします。」 

「美知恵と申します。こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。」 

色白でふくよかな美知恵さまは性格が滲み出ているかのような優しいほほえみを向けてくださいました。亮真様と同じくらいのお年だとお見受けいたしました。 


「兄さん、琴葉義姉さんは?」 

「琴葉は声をかけたがまだ時間がかかると言っていた。後から来るさ。ああ、来たな。」 

「亮真さんいらっしゃい!」 

「わっ、義姉さん、そんな慌ててこなくてもよかったのに。」 

「そんな寂しいこと言わないで?亮真さんが来てくれてうれしいの。」 

「大げさだな。義姉さん。」 

「もう少しいてくれるんでしょう?」 

「いや、今日は挨拶に顔を出しただけだからすぐに帰る。我が家もあとで来客があるから帰らなければならない。」 

「そうなの?」 

「ああ、すまない、義姉さん。じゃあ、兄さん、また。…美知恵さんも。小雪、帰ろう。」 

「はい、亮真様。では失礼いたします。」 

車を運転して帰路に就く亮真様は終始難しい顔をしております。 

屋敷に戻った亮真様とその日、顔を合わせることはございませんでした。 
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