見捨てられたのは私

梅雨の人

文字の大きさ
82 / 147

78

「ところで小雪、君が藤堂の屋敷で食べていたあの菓子はルナ洋菓子店のものだったか?」 

「ええ、初めていただきましたが本当に美味しくて食べすぎてしまいました。」 

「そうか、初めて…か。そうか…私はあんなにあの店に行っていたのに君にまだ食べさせてやれてなかったな。」 

「あんなに?そんな何度も行かれていたのですか?」 

「ああ、義姉さんのお気に入りだからな。」 

「以前亮真様がおっしゃっていたので存じ上げております。」 

「ああ、そうか…。そうだったな。…今度君に買ってこよう。」 

「そうですか…」 

(---連れて行ってはくれないのですね…。お義姉様とともに訪れたそのついでに私に買ってきてくださるのかしら…) 

 

「小雪」 

「…」 

「小雪」 

「…」 

「小雪、どうした?」 

 

窓に映る私の顔を見て驚いてしまいました。いつも私はこのような泣くきそうな、それでいて諦めた顔をしていたのでしょうか。 


「小雪、気分が悪いのか?どうした小雪?」 

急に私の顔をのぞき込んできた亮真様から無意識に距離を取りますと、亮真様は傷ついたような表情をしておられます。 

「どうして亮真様がそのようなお顔をされるのです…?…あっいえ、なんでもございません…」 

「小雪」 

「この度はわざわざお迎えに来ていただき感謝しております。ご迷惑をおかけして申し訳けございませんでした…」 

「迷惑などでは…」 

「では部屋に戻って着替えてまいります。ではこれで。」 

「小雪」 

何かを言いかけておられる亮真様を後に残して部屋に足を踏み入れました。 

「疲れたわ…」 

足がおのずと窓際へ向いておりましたがふと足が止まります。 
この窓から見える綺麗な庭園での亮真様と琴はお義姉様の寄り添う様々な場面が思い浮かんでまいります。 

コンコン

「小雪」
「亮真様」 
「着替えはもう終わったようだな。」 

「ええ…」 

「一緒にルナ洋菓子店に今から行かないか。さっき君とあの店の話をしていて食べたくなった。…というのは口実で君が一番最初に食べたものが私からではないと思うと…何というか…だな…。」 

「先程は買ってきてくださるとおっしゃっておりましたが?」 

「ああ。」 

「お義姉様と何度も足を運ばれたことがあるのでしたら亮真様にとってそのお店の味は特に珍しいものではないのではないですか?今日無理して行かなくとも宜しいのではないですか?」 

「誰が毎度義姉さんと足を運んだと言った?」 

「失礼いたしました。違いましたでしょうか?」 

「それは…違わない。」 

「それではまたお義姉様を誘われてはいかがでしょう?」 

「君は何を言って…」

思わず私自身の口から漏れ出てしまった言葉に愕然と致しました。
私はこのような嫌な性格だったのでしょうか。つくづく自分で自分が嫌になって参りました。 

あなたにおすすめの小説

〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」 その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。 「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

〈完結〉伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした

ごろごろみかん。
恋愛
前世の記憶を取り戻した伯爵令嬢のリンシア。 自分の婚約者は、最近現れた聖女様につききっきりである。 そんなある日、彼女は見てしまう。 婚約者に詰め寄る聖女の姿を。 「いつになったら婚約破棄するの!?」 「もうすぐだよ。リンシアの有責で婚約は破棄される」 なんと、リンシアは聖女への嫌がらせ(やってない)で婚約破棄されるらしい。 それを目撃したリンシアは、決意する。 「婚約破棄される前に、こちらから破棄してしてさしあげるわ」 もう泣いていた過去の自分はいない。 前世の記憶を取り戻したリンシアは強い。吹っ切れた彼女は、魔法道具を作ったり、文官を目指したりと、勝手に幸せになることにした。 ☆ご心配なく、婚約者様。の修正版です。詳しくは近況ボードをご確認くださいm(_ _)m ☆10万文字前後完結予定です

【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

私のことを愛していなかった貴方へ

矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。 でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。 でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。 だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。 夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。 *設定はゆるいです。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。