泣き虫エリー

梅雨の人

文字の大きさ
9 / 11

甘い生活と結婚記念日

しおりを挟む
「エリー、風呂の準備できたよ。ほら俺にちゃんとつかまっとくんだぞ?」

そうやって、風呂はダンがいないときはいつも一緒に入るエリーとショーン。

風呂の前に毎日のようにショーンの止まらない愛を受け止めるエリーはいつも風呂の準備が出来たときはショーンに抱きかかえられていくことになっていた。

もちろんちゃっかりエリーの全身をしっかり泡立てて洗うショーンはそこでも飽きることなく愛しい妻に愛撫を送り続け、可愛く欲する妻が満足するまで愛を注ぎ続けるのだ。

「ああ…エリー…。ほんっとうに、最高。なんでそんなに可愛いんだ?…っく!」
結婚から十四年経っても、未だに夫に熱心に愛されているエリーは幸せに満たされていた。

-------------------
「ちょっと!エリーちゃん!ほんっとうに相変わらずあんたたちって仲いいわよね!うちなんて仲が良かったのなんて最初の数年だけで、後はお互い空気みたいな存在になったわよ!」

パン屋で働いているおしどり夫婦を見て客たちはいつも二人の仲の良さにあてられている。
エリーもパン屋で長年働いてきているので、顔なじみも増え、かつて弟と母と働いてばかりだった頃よりかは知り合いが格段に増えこうやって気の置ける会話ができるようになった。

「おいおい!今頃気が付いたのかよ!はははっ!」
「ショーン、またそんなこと言って。もう」

「いいじゃねえか、俺らの仲がいいのは本当のことなんだからよ!」

と、こんな感じで、未だにエリーに対しての愛情駄々洩れのショーンがしっかりとついているおかげで毎日特段、何の問題もなく暮らしていた。

そんなある日、マーシャとギルはそろそろ店を息子夫婦に譲ることに決めた。

五十半ばとまだまだ若い二人の決断だったが、まだまだ息子夫婦と店を一緒に切り盛りするからという事で話はまとまった。

そんなある日、ショーンはエリーとの結婚記念日を祝うため例年の如くエリーを喜ばせるための計画を練りたてていた。
常に行動を共にしているので、ショーンの声は筒抜けなのだが愛しい夫が自分を喜ばせようと頑張っているのが嬉しくて何も知らないふりをしてやり過ごしている。。

「じゃあ、エリー2時間ほどで帰ってくるからな。変なやつが来ても出なくていいから、ちゃんと鍵かけとくんだぞ?」
「じゃあ、エリーちゃん、ちょっとショーンを借りていってくるわ!すぐに連れて帰るからな!」
「エリーちゃん、途中で美味しいもの買って帰るから一緒にご飯食べとくれね!」

「はい、みんな気を付けて!」

その日、エリーに内緒で結婚記念日に送るネックレスを選ぶショーンについて、ダンとマーサもエリーにいつも頑張ってくれているお礼にと何かプレゼントを選びたいという事で三人でエリーの為に奮発して買い物に出かけたのだった。

大きな声でそのことを話していたのを聞いてしまったエリーは、なんとか知らないふりを通して、出かけていく三人を見送った。

すぐに帰ってくると言い残した三人が、なかなか帰ってこないので心配していた時、ドアがノックされた。
「よお、姉ちゃん。あれ?珍しいな、ショーンの奴はいねえのか?」
「そうなのよ、ダン。今朝方、ショーンがお義父さんお義母さんと出かけたきり戻ってこないのよ。」

あのショーンが、姉エリーを置いてこんな長い時間どこかに行くことが珍しかったので、ダンも不審に思ったが、エリーを心配させないためにも、話題をすぐに変えてショーンたちを待った。

それからすぐに、扉が叩かれ、すぐにダンが対応しに向かった。
「こんばんは、こちらにエリーさんはいらっしゃいますか?」
「よお、警備隊が何の用だよ。」

「よお、ダンじゃねえか。ああ、エリーさんはお前の姉さんか…。」
「姉ちゃん、警備隊の奴が姉ちゃんに話があるらしいぞ。」
「こんばんは。あの、何かあったのでしょうか…?」

「エリーさん、失礼ですが、ショーン、ギル、マーサという名に心当たりは?
実は、贈り物を購入した直後だったようで、送り主にエリーと書いてあったもので。ショーンとエリーって言ったらおそらくそいつの馴染みのパン屋の夫婦かもっていう奴がいて。」

「ええ…ショーンは夫で、ギルとマーサは義両親ですが…。彼らに何かあったのでしょうか…。」
「ええ…実は今朝方、ある宝石店に強盗が多数で押し入りまして…店員や客も抵抗したり逃げようとしたらしいのですが、知らせを受けて我々が向かった時には既にその場にいた全員が死傷していました。実は、贈り物を購入した直後だったようで、保証書の欄にエリーさんの名前と住所が書いてあったもので…。」

全員が死傷…その言葉に目の前が真っ暗になってしまった。
「姉ちゃん!」

「大丈夫…大丈夫…。」
すぐに案内された先へ向かう道中ずっとそう呟いていた。

連れていかれた被害者の遺体が安置されていた場所で、義両親の二人が並べられていた。
崩れ落ちて泣き縋る私を、ダンがずっと支えてくれていた。

そして、安置所にいなかったショーンはかなり抵抗したらしく重傷で手術後も意識が戻らないままだった。

二人の葬儀が終わり、何もやる気が起きず呆然とする私にずっとダンが付き添ってくれていた。

パン屋も休業の張り紙を出し、その事件のことを知った町の人々は驚きと悲しみに暮れた。

父さん、母さんに続き、お義父さんにお義母さんまで逝ってしまった。
大切な人が、なぜか私の周りからどんどんいなくなってしまう。

一週間たってもショーンは目を覚まさなかった。

私のことを心配するダンはまた私達の住む家から、騎士団へ通うようになった。
遠征に言ったり、危険な仕事をする自分には結婚は向かないと断言するダンは彼女を作ったり別れたりを繰り返しているようだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私を嫌いな貴方が大好き

六十月菖菊
恋愛
「こんなのが俺の婚約者? ……冗談だろう」  そう言って忌々しげに見下してきた初対面の男に、私は思わず。 「素敵……」 「は?」  うっとりと吐息を漏らして見惚れたのだった。 ◇◆◇  自分を嫌う婚約者を慕う男爵令嬢。婚約者のことが分からなくて空回りする公爵令息。二人の不器用な恋模様を面白おかしく見物する友人が入り混じった、そんな御話。 ◇◆◇  予約投稿です。  なろうさんにて並行投稿中。

花嫁は忘れたい

基本二度寝
恋愛
術師のもとに訪れたレイアは愛する人を忘れたいと願った。 結婚を控えた身。 だから、結婚式までに愛した相手を忘れたいのだ。 政略結婚なので夫となる人に愛情はない。 結婚後に愛人を家に入れるといった男に愛情が湧こうはずがない。 絶望しか見えない結婚生活だ。 愛した男を思えば逃げ出したくなる。 だから、家のために嫁ぐレイアに希望はいらない。 愛した彼を忘れさせてほしい。 レイアはそう願った。 完結済。 番外アップ済。

リアンの白い雪

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
その日の朝、リアンは婚約者のフィンリーと言い合いをした。 いつもの日常の、些細な出来事。 仲直りしていつもの二人に戻れるはずだった。 だがその後、二人の関係は一変してしまう。 辺境の地の砦に立ち魔物の棲む森を見張り、魔物から人を守る兵士リアン。 記憶を失くし一人でいたところをリアンに助けられたフィンリー。 二人の未来は? ※全15話 ※本作は私の頭のストレッチ第二弾のため感想欄は開けておりません。 (全話投稿完了後、開ける予定です) ※1/29 完結しました。 感想欄を開けさせていただきます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

【完結】その仮面を外すとき

綺咲 潔
恋愛
耳が聞こえなくなってしまったシェリー・スフィア。彼女は耳が聞こえないことを隠すため、読唇術を習得した。その後、自身の運命を変えるべく、レイヴェールという町で新たな人生を始めることを決意する。 レイヴェールで暮らし始めた彼女は、耳が聞こえなくなってから初となる友達が1人でき、喫茶店の店員として働くことも決まった。職場も良い人ばかりで、初出勤の日からシェリーはその恵まれた環境に喜び安心していた。 ところが次の日、そんなシェリーの目の前に仮面を着けた男性が現れた。話を聞くと、仮面を着けた男性は店の裏方として働く従業員だという。読唇術を使用し、耳が聞こえる人という仮面を着けて生活しているシェリーにとって、この男性の存在は予期せぬ脅威でしかない。 一体シェリーはどうやってこの問題を切り抜けるのか。果たしてこの男性の正体は……!?

あなたのためなら

天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。 その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。 アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。 しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。 理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。 全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。

某国王家の結婚事情

小夏 礼
恋愛
ある国の王家三代の結婚にまつわるお話。 侯爵令嬢のエヴァリーナは幼い頃に王太子の婚約者に決まった。 王太子との仲は悪くなく、何も問題ないと思っていた。 しかし、ある日王太子から信じられない言葉を聞くことになる……。

どうぞお好きになさってください

はなまる
恋愛
 ミュリアンナ・ベネットは20歳。母は隣国のフューデン辺境伯の娘でミュリアンナは私生児。母は再婚してシガレス国のベネット辺境伯に嫁いだ。  兄がふたりいてとてもかわいがってくれた。そのベネット辺境伯の窮地を救うための婚約、結婚だった。相手はアッシュ・レーヴェン。女遊びの激しい男だった。レーヴェン公爵は結婚相手のいない息子の相手にミュリアンナを選んだのだ。  結婚生活は2年目で最悪。でも、白い結婚の約束は取り付けたし、まだ令息なので大した仕事もない。1年目は社交もしたが2年目からは年の半分はベネット辺境伯領に帰っていた。  だが王女リベラが国に帰って来て夫アッシュの状況は変わって行くことに。  そんな時ミュリアンナはルカが好きだと再認識するが過去に取り返しのつかない失態をしている事を思い出して。  なのにやたらに兄の友人であるルカ・マクファーレン公爵令息が自分に構って来て。  どうして?  個人の勝手な創作の世界です。誤字脱字あると思います、お見苦しい点もありますがどうぞご理解お願いします。必ず最終話まで書きますので最期までよろしくお願いします。

噂(うわさ)―誰よりも近くにいるのは私だと思ってたのに―

日室千種・ちぐ
恋愛
身に覚えのない噂で、知らぬ間に婚約者を失いそうになった男が挽回するお話。男主人公です。

処理中です...