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「やあ、マリアおはよう。」
そよそよと肌を優しくかすめていた風がぴたりとやみ、かわりにピリッとした空気がアベラルド様とフェリックス様の間に張りつめております。
アベラルド様はフェリックス様に鋭いまなざしを向け、再び私に視線を合わせにっこりとほほ笑んだあと、私に近づいてきます。
「…おはようございます、ヒギンス公爵令息様。」
今日は…お一人なのですねという言葉はぐっと飲みこみます。先日の黒髪の女性はもう一緒にはいらっしゃらないようです。
「マリアの婚約者である私が抱いて歩こう。君を抱きかかえたまま庭を散策か…許せないな。」
「…どういう意味でございますか?」
「そのままの意味だよ。私は君にそのように触れたことなどめったにない。それなのに君の婚約者でもないその男が君に触れているのが許せないと言っているんだ。」
「…私は、ヒギンス公爵令息様のように他の方々のように触れたことなどございません。もちろん他の殿方と戯れたことなどもございませんのに…そのようにおっしゃるのですね…」
「それは…そう言われると返す言葉がないな…しかしマリア…」
「それになにより、結婚前のただの「遊び」はヒギンス公爵令息様も所詮ただの遊びだと…私のように気になさらないのでしょう?そう…ただの遊びなのですものね…そうだ……私もしてみようかしら...」
「…なにをマリア…君が他の男どもと…?それは…駄目だよマリア?ああそうか…マリア、私は君をそんなに追い詰めていたのだなんて思いもしなかった。そんなに嫉妬してくれていたとはね。うれしいよマリア。私もそろそろお遊びに飽きてきたんだ。…マリア、わたしたちの結婚式をできるだけ早めようか。」
「ヒギンス公爵令息様、申し訳ございませんがお帰り願えますか?」
「いい加減機嫌を直して以前のようにアベラルドと名前で呼んでくれないかい、マリア?ああ…マリア、顔色が悪いね。私が部屋まで運ぼう。」
「…お気持ちだけ頂きますわ。フェリックス様お願いいたします。」
「なぜその男に頼る、マリア。さあ、こちらへ。」
「アベラルド様わざわざお越しくださったのに申し訳ございません。さようなら。」
「……仕方ない…マリア、私は再び王都に戻らなければならない。本当は君ともう少し一緒に時間を過ごしたいのだがうまく行かないものだな。君の体が早く回復することを祈っているよ。また会いに来るからね。」
眉尻を下げて去っていくアベラルド様がフェリックス様と鋭い視線を交わしたことなど気が付くはずもなく、ただただ去っていくアベラルド様の背を他人事のように見送りました。
そよそよと肌を優しくかすめていた風がぴたりとやみ、かわりにピリッとした空気がアベラルド様とフェリックス様の間に張りつめております。
アベラルド様はフェリックス様に鋭いまなざしを向け、再び私に視線を合わせにっこりとほほ笑んだあと、私に近づいてきます。
「…おはようございます、ヒギンス公爵令息様。」
今日は…お一人なのですねという言葉はぐっと飲みこみます。先日の黒髪の女性はもう一緒にはいらっしゃらないようです。
「マリアの婚約者である私が抱いて歩こう。君を抱きかかえたまま庭を散策か…許せないな。」
「…どういう意味でございますか?」
「そのままの意味だよ。私は君にそのように触れたことなどめったにない。それなのに君の婚約者でもないその男が君に触れているのが許せないと言っているんだ。」
「…私は、ヒギンス公爵令息様のように他の方々のように触れたことなどございません。もちろん他の殿方と戯れたことなどもございませんのに…そのようにおっしゃるのですね…」
「それは…そう言われると返す言葉がないな…しかしマリア…」
「それになにより、結婚前のただの「遊び」はヒギンス公爵令息様も所詮ただの遊びだと…私のように気になさらないのでしょう?そう…ただの遊びなのですものね…そうだ……私もしてみようかしら...」
「…なにをマリア…君が他の男どもと…?それは…駄目だよマリア?ああそうか…マリア、私は君をそんなに追い詰めていたのだなんて思いもしなかった。そんなに嫉妬してくれていたとはね。うれしいよマリア。私もそろそろお遊びに飽きてきたんだ。…マリア、わたしたちの結婚式をできるだけ早めようか。」
「ヒギンス公爵令息様、申し訳ございませんがお帰り願えますか?」
「いい加減機嫌を直して以前のようにアベラルドと名前で呼んでくれないかい、マリア?ああ…マリア、顔色が悪いね。私が部屋まで運ぼう。」
「…お気持ちだけ頂きますわ。フェリックス様お願いいたします。」
「なぜその男に頼る、マリア。さあ、こちらへ。」
「アベラルド様わざわざお越しくださったのに申し訳ございません。さようなら。」
「……仕方ない…マリア、私は再び王都に戻らなければならない。本当は君ともう少し一緒に時間を過ごしたいのだがうまく行かないものだな。君の体が早く回復することを祈っているよ。また会いに来るからね。」
眉尻を下げて去っていくアベラルド様がフェリックス様と鋭い視線を交わしたことなど気が付くはずもなく、ただただ去っていくアベラルド様の背を他人事のように見送りました。
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