いきなり魔王になっていました。

nakamura

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初めての勇者との闘い

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 小柄で初老の悪魔はベフェモットと言うらしい。 
 さっき元いた世界から魔界に飛ばされ、魔王生活を乗り切ろうとしたのもつかの間、どうやらありえないくらい強い勇者が山を一つ焼き払った直後に私は戻ってきてしまった。
 ベフェモットが魔法で勇者を映し出している。
 そこに映っていた勇者はロン毛でボサボサ、ひげも生え散らかって、服はズタボロの布服だ。
 とてもじゃないが勇者には見えない。

「ベフェモットこれが本当に勇者なのか?浮浪者にしか見えないのだが」

「魔王様、、、私もまったく同じことを思っていました、こんな汚い勇者を見たのは長年生きてきて初めてでございます」

 ベフェモットもぽかんとした表情で映像を見ていた。

「それで、この勇者の分かっている情報は?」

 私がそういうと、「うーん」と首を傾げた。

「それがこの勇者、魔法は一切使わず錆びついた剣のみで山を一つ焼き払いました」

「錆ついた剣で山を燃やした?どいうことだ」

「それが現場から命からがら逃げてきたゴブリンによると、すごい勢いで錆びた剣を木に擦っていたそうでして、、、信じがたいですがおそらく摩擦で山を焼き払ったのかと、、、」

摩擦で山を焼き払った?おいおいおい、勘弁してくれ、なんで魔王生活初日でそんなにわけのわからん脳筋放浪者勇者と戦わないといけないんだ。
もっとこう、普通の勇者が来てくれ、チュートリアルだぞこっちは。


「それで魔王様どういたしましょうか、、、」

「うーむ、ベフェモット、この勇者を見てて気づいたんだが、泥酔してないか?しかもとてつもなく」

「たしかに顔が真っ赤でフラフラでございますね、あ、勇者が倒れこみましたぞ」

「よし、今だ、強めの拘束呪文で捕らえよう」

「かしこまりました魔王様。しかし魔王様いつもとは何か違いますな」

しまったばれたか?いや、特になにもしていないのにそんなことあるか?

「いつもと何が違うか言ってみろ」

「いつもでしたら雑魚勇者相手にトロールを百体進軍、ゴブリンを千体出せなど、明らかにコストオーバーな作戦をたてるではないですか、それにあなたが勇者を捕らえろなどという命令を下したのは初めてです」

なるほど魔王がいつも作戦を否定される理由はこれか、、、明らかにアホだ。だがそれで落ち込んでいたということは本人は真面目に考えていたのだろう。

「ベフェモット、私は生まれ変わったのだ、今までの私だともうな?」

「さようでございますか、、、」

ベフェモット、の反応は何ともあっけなかった。もっと追及されると思ったのだが。

「ベフェモット、私はいったん部屋へ戻るぞ、勇者を牢に入れたら報告をしてくれ」

「かしこまりました魔王様」

 私は部屋に戻りベッドに横になった、魔界に来てからたった一時間だと言うのにもう魔王という存在に疲れてしまった。
 正直帰りたいとも思ったが、魔王に楽しめといった以上私は魔王をやりつくすと決めたのだ。
 はあ、魔王はいま妻と娘とどんなことをしているのだろうか、、、そんなことを考えているうちに私は眠りについた。







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