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第3話
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「死ぬかと思ったあ…」
放課後の補習。鬼の藤川先生にみっちりしごかれ、やっと救いのチャイムが鳴る。
音とともに机に突っ伏すと、目の前の藤川先生が静かにこう告げた。
「まだ半分しか終わってないぞ」
「げ、半分? これだけやって半分?」
「そうだ。だから明日も補習だ」
「し、死刑宣告…」
危うく半開きの口から魂が出ていきそうになって、慌てて口を押さえた。
「まあ、海野にしてはよく頑張った。正直、半分も終わると思っていなかった」
「…どうしよう、全然嬉しくないです、それ」
「褒めてる。だから喜べ、笑え、今すぐに」
「…笑顔の喝上げです、先生」
「ふはっ、海野は面白いな」
じゃあな、と手を振ってきた先生にやけくそで手を振り返す。いつもは置き勉している数学の教科書も、しぶしぶリュックに入れた。
「唯斗は…まだ来てないか」
掃除当番の時は遅いほうが相手の教室まで迎えに行くのが原則。部活の時は先に帰るか、図書館で勉強して時間をつぶしてから下駄箱で待ち合わせ。唯斗と俺は、いつも何となくこうやって動いている。
「そういえば、どんな絵を描くんだろ…」
破滅的な芸術家の俺は、高校の選択授業で美術を取らなかったので、唯斗が絵を描いている姿は見たことがない。
「…行ってみるか、よし」
万が一すれ違ってしまっても、下駄箱に外履きが入っていれば、唯斗は待っていてくれるだろう。頭の中で校内図を思い出し、最果ての美術室へと歩き始めた。
歩き進めていくと、西向きに窓が並ぶ廊下に辿り着く。この時間ともなると西日が強すぎて、目も開けられないほど眩しい。あまりの攻撃力の高さに目を細めながら、突き当たりの美術室へと向かう。
廊下には全く人気がなくて、一人分の足音だけが響いている。
「意外ときれいなんだ、こうやって見ると」
小さな頃から住み慣れた場所も、夕焼けに染まっていると何だか特別な場所に見える。空の端から藍色に染まっていくこの時間は、マジックアワー、だったっけか。某アニメ監督が好きな空の色だ。
「…想?」
「唯斗、おつかれ」
美術室から出てきた唯斗が、こちらを見て驚いたように目を見開く。さすがの唯斗でも、俺がここにいるのは予想外だったらしい。
「唯斗、驚きすぎ」
「いや…ちょっと、びっくりしすぎて」
「そんなに? まあ、俺もここに来たの初めてだけど…」
珍しく動揺しているらしい唯斗が、口元に手を当てて視線を彷徨わせる。
「ここからの景色、きれいだなって思ってさ」
「…うん、綺麗」
こんな風に、唯斗とふたりで景色を眺める時間も悪くない。藤川先生のマンツーマン補習はきつかったけれど、この景色が見れたからまあ良しとしよう。明日補習があるなんて、そんなことは一旦忘れよう。
「帰ろ、唯斗。俺、お腹空いた」
「…うん」
隣を見れば、暮れなずむ町を眺める唯斗の横顔も夕日に照らされていて、もう少しだけこのまま見ていたいと思った。
放課後の補習。鬼の藤川先生にみっちりしごかれ、やっと救いのチャイムが鳴る。
音とともに机に突っ伏すと、目の前の藤川先生が静かにこう告げた。
「まだ半分しか終わってないぞ」
「げ、半分? これだけやって半分?」
「そうだ。だから明日も補習だ」
「し、死刑宣告…」
危うく半開きの口から魂が出ていきそうになって、慌てて口を押さえた。
「まあ、海野にしてはよく頑張った。正直、半分も終わると思っていなかった」
「…どうしよう、全然嬉しくないです、それ」
「褒めてる。だから喜べ、笑え、今すぐに」
「…笑顔の喝上げです、先生」
「ふはっ、海野は面白いな」
じゃあな、と手を振ってきた先生にやけくそで手を振り返す。いつもは置き勉している数学の教科書も、しぶしぶリュックに入れた。
「唯斗は…まだ来てないか」
掃除当番の時は遅いほうが相手の教室まで迎えに行くのが原則。部活の時は先に帰るか、図書館で勉強して時間をつぶしてから下駄箱で待ち合わせ。唯斗と俺は、いつも何となくこうやって動いている。
「そういえば、どんな絵を描くんだろ…」
破滅的な芸術家の俺は、高校の選択授業で美術を取らなかったので、唯斗が絵を描いている姿は見たことがない。
「…行ってみるか、よし」
万が一すれ違ってしまっても、下駄箱に外履きが入っていれば、唯斗は待っていてくれるだろう。頭の中で校内図を思い出し、最果ての美術室へと歩き始めた。
歩き進めていくと、西向きに窓が並ぶ廊下に辿り着く。この時間ともなると西日が強すぎて、目も開けられないほど眩しい。あまりの攻撃力の高さに目を細めながら、突き当たりの美術室へと向かう。
廊下には全く人気がなくて、一人分の足音だけが響いている。
「意外ときれいなんだ、こうやって見ると」
小さな頃から住み慣れた場所も、夕焼けに染まっていると何だか特別な場所に見える。空の端から藍色に染まっていくこの時間は、マジックアワー、だったっけか。某アニメ監督が好きな空の色だ。
「…想?」
「唯斗、おつかれ」
美術室から出てきた唯斗が、こちらを見て驚いたように目を見開く。さすがの唯斗でも、俺がここにいるのは予想外だったらしい。
「唯斗、驚きすぎ」
「いや…ちょっと、びっくりしすぎて」
「そんなに? まあ、俺もここに来たの初めてだけど…」
珍しく動揺しているらしい唯斗が、口元に手を当てて視線を彷徨わせる。
「ここからの景色、きれいだなって思ってさ」
「…うん、綺麗」
こんな風に、唯斗とふたりで景色を眺める時間も悪くない。藤川先生のマンツーマン補習はきつかったけれど、この景色が見れたからまあ良しとしよう。明日補習があるなんて、そんなことは一旦忘れよう。
「帰ろ、唯斗。俺、お腹空いた」
「…うん」
隣を見れば、暮れなずむ町を眺める唯斗の横顔も夕日に照らされていて、もう少しだけこのまま見ていたいと思った。
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