13 / 27
留守番戦争
第一章:12話 『早すぎた再会』
しおりを挟む
アイリスとの会話の最中に視覚が捕らえた黒い影。服装から100%“あいつ”であることがわかったアレスは躊躇い無く“あいつ”の1m前まで踏み込み、軽く飛び、空中で回し蹴りを顔面にきめようと試みる。しかし、【オフェンシブアーマー】で強化されているにもかかわらず、“あいつ”はそれを素手で簡単に受け止めてみせた。
「なんでまだここにいるんだよ…。」
静かな怒りを言葉にこめる。
“あいつ”とは、先ほど廊下で撃退したはずの男だった。黒いスーツのような服に黒いメタリックのフルフェイスが特徴の異常の男――カイン・ヴェーテンだった。しかし、さっきとは明らかに違う点がある。
「何なんだよ…そのマスク……。」
今までのカインの姿と重ねると、この緊張した状況に場違いな物を身につけていた。
それが、
「これかい?なかなか似合うだろぉ?」
風邪予防用の普通のマスクだった。
「ふざけてる?」
「まさかまさか、そんなわけ無いじゃないか。」
「ひとまずそれは置いとく。んで、何でここにいる?あの流れならお前は尻尾を巻いて逃げ帰り、悪あがきで雑魚を送りつけるも、それも全滅。お家に着いたら組織の上司からお説教と制裁を受けるっていうのが俺の中で作り上げられたストーリーであり定番だと思ったんだけど…。」
「ぷっ………ふはははひひひはは!」
カインはお腹を抱えてその場で仰向けになって思い切り笑い出した。頭にきたアレスは、すかさず顔を踏みつぶそうと右足を出すが、それも簡単に左手で受け止められてしまう。
「ぷぷぷっ…あんなので引き下がるわけないじゃん…ぷっ…。ただ僕のイケメソな顔がバレただけじゃないか~。」
カインは掴んでいたアレスの右足を離して、再び立ち上がる。
「さて、あの鬱陶しい獣神は雑魚処理中だしここで本題に入ろうかな。僕がここに来た理由だね。それは、そこのお嬢さんを殺すこと……ではなくて、普通に君と話がしたいだけだよ。」
カインは話の途中でジョークを入れようとしたが、アレスの睨みつけによって封殺された。ここでアレスの【オフェンシブアーマー】の効力が切れ、後ろではアイリスがビクビクと身を震わせている。
「俺はお前と話すことは何も…」
「あの時言った通り、君の目は僕と似ている。」
「人の話聞けよ。6歳の子供だからって舐めんな。」
アレスのことはかまわないで話を淡々と進めるカイン。余計な刺激をすればアイリスも危険に晒す可能性があると考えたアレスは諦めて話を聞くことに徹する。
「君は6年という生涯にもかかわらず非常に興味深いものを持っている。君の怨念、私怨、厭悪…心当たりはないかい?」
アレスに心当たりはあった。いや、6年しか生きていないアレスではなく、その約3倍も生きていたイオンだ。
「さぁな。」
アレスはあえて自分を悟られないように回答をあやふやにした。しかし、この時アレスは致命的なミスを犯したことに気がつかなかった。
「『さぁな』…ねぇ。」
この問いかけには、はっきりと「知らない」というような虚言を吐くべきであったのだ。もっとも、そんな虚言は見抜かれてしまうだろうが。
「まぁ、君が自分の真意に気づいていなくても構わない。君は僕たちの組織に入るべきだ。恐らく、ここで断ってもいずれ僕以外の 奴らに勧誘され入ることになるだろうし。そう考えるとどうだい?僕たち手を組まないかい?」
「嫌だね。罪のない人を殺す集団と何で手を組まないといけないんだ。」
アレスの言葉を聞いたカインは口元を歪ませて不気味に笑う。
「ふふっ、罪のない…か。まぁ、無自覚で理不尽の罪ってのは残酷だねぇ。」
「何が言いたい?」
「何が言いたいも何も、そのままの意味だけど?」
アレスは軽く舌打ちをして、改めて自分の意思をぶつける。こんな時でもいたって冷静に振る舞えた方だった。
「とにかく、何回も言うけど人殺し集団には入らない。」
「なら、こんなのはどうだい?さっきは邪魔がいて出しそびれたけど…」
そう言って胸ポケットから取り出したものは、1枚の黒い紙。その紙に折れ目はなく、サイズ的に胸ポケットと不釣り合いだったため、どんな風に入っていたのか気になるところだったが、それよりも重大なことがあった。
「血印呪黒の文書……っ!?」
「そのとおり!!よくそんなこと知っているね。」
「契約者同士がお互いに血を出し合い、それを文書に染み込ませることで絶対に破ることができない誓いをたてる悪魔の書…。なるほど、確かにそれなら俺も確約ができる。」
「そうだろう?これなら君も安心して僕の集団に入ることができるね!この契約書に『罪のある人々を殺さない』ことを約束させればいいんだからね。」
カインは手に持っている黒い紙をアレスに渡す。アレスはこの提案に乗るかどうかを考える。
―――さぁ、どうする……―――
「なんでまだここにいるんだよ…。」
静かな怒りを言葉にこめる。
“あいつ”とは、先ほど廊下で撃退したはずの男だった。黒いスーツのような服に黒いメタリックのフルフェイスが特徴の異常の男――カイン・ヴェーテンだった。しかし、さっきとは明らかに違う点がある。
「何なんだよ…そのマスク……。」
今までのカインの姿と重ねると、この緊張した状況に場違いな物を身につけていた。
それが、
「これかい?なかなか似合うだろぉ?」
風邪予防用の普通のマスクだった。
「ふざけてる?」
「まさかまさか、そんなわけ無いじゃないか。」
「ひとまずそれは置いとく。んで、何でここにいる?あの流れならお前は尻尾を巻いて逃げ帰り、悪あがきで雑魚を送りつけるも、それも全滅。お家に着いたら組織の上司からお説教と制裁を受けるっていうのが俺の中で作り上げられたストーリーであり定番だと思ったんだけど…。」
「ぷっ………ふはははひひひはは!」
カインはお腹を抱えてその場で仰向けになって思い切り笑い出した。頭にきたアレスは、すかさず顔を踏みつぶそうと右足を出すが、それも簡単に左手で受け止められてしまう。
「ぷぷぷっ…あんなので引き下がるわけないじゃん…ぷっ…。ただ僕のイケメソな顔がバレただけじゃないか~。」
カインは掴んでいたアレスの右足を離して、再び立ち上がる。
「さて、あの鬱陶しい獣神は雑魚処理中だしここで本題に入ろうかな。僕がここに来た理由だね。それは、そこのお嬢さんを殺すこと……ではなくて、普通に君と話がしたいだけだよ。」
カインは話の途中でジョークを入れようとしたが、アレスの睨みつけによって封殺された。ここでアレスの【オフェンシブアーマー】の効力が切れ、後ろではアイリスがビクビクと身を震わせている。
「俺はお前と話すことは何も…」
「あの時言った通り、君の目は僕と似ている。」
「人の話聞けよ。6歳の子供だからって舐めんな。」
アレスのことはかまわないで話を淡々と進めるカイン。余計な刺激をすればアイリスも危険に晒す可能性があると考えたアレスは諦めて話を聞くことに徹する。
「君は6年という生涯にもかかわらず非常に興味深いものを持っている。君の怨念、私怨、厭悪…心当たりはないかい?」
アレスに心当たりはあった。いや、6年しか生きていないアレスではなく、その約3倍も生きていたイオンだ。
「さぁな。」
アレスはあえて自分を悟られないように回答をあやふやにした。しかし、この時アレスは致命的なミスを犯したことに気がつかなかった。
「『さぁな』…ねぇ。」
この問いかけには、はっきりと「知らない」というような虚言を吐くべきであったのだ。もっとも、そんな虚言は見抜かれてしまうだろうが。
「まぁ、君が自分の真意に気づいていなくても構わない。君は僕たちの組織に入るべきだ。恐らく、ここで断ってもいずれ僕以外の 奴らに勧誘され入ることになるだろうし。そう考えるとどうだい?僕たち手を組まないかい?」
「嫌だね。罪のない人を殺す集団と何で手を組まないといけないんだ。」
アレスの言葉を聞いたカインは口元を歪ませて不気味に笑う。
「ふふっ、罪のない…か。まぁ、無自覚で理不尽の罪ってのは残酷だねぇ。」
「何が言いたい?」
「何が言いたいも何も、そのままの意味だけど?」
アレスは軽く舌打ちをして、改めて自分の意思をぶつける。こんな時でもいたって冷静に振る舞えた方だった。
「とにかく、何回も言うけど人殺し集団には入らない。」
「なら、こんなのはどうだい?さっきは邪魔がいて出しそびれたけど…」
そう言って胸ポケットから取り出したものは、1枚の黒い紙。その紙に折れ目はなく、サイズ的に胸ポケットと不釣り合いだったため、どんな風に入っていたのか気になるところだったが、それよりも重大なことがあった。
「血印呪黒の文書……っ!?」
「そのとおり!!よくそんなこと知っているね。」
「契約者同士がお互いに血を出し合い、それを文書に染み込ませることで絶対に破ることができない誓いをたてる悪魔の書…。なるほど、確かにそれなら俺も確約ができる。」
「そうだろう?これなら君も安心して僕の集団に入ることができるね!この契約書に『罪のある人々を殺さない』ことを約束させればいいんだからね。」
カインは手に持っている黒い紙をアレスに渡す。アレスはこの提案に乗るかどうかを考える。
―――さぁ、どうする……―――
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
「帰ったら、結婚しよう」と言った幼馴染みの勇者は、私ではなく王女と結婚するようです
しーしび
恋愛
「結婚しよう」
アリーチェにそう約束したアリーチェの幼馴染みで勇者のルッツ。
しかし、彼は旅の途中、激しい戦闘の中でアリーチェの記憶を失ってしまう。
それでも、アリーチェはルッツに会いたくて魔王討伐を果たした彼の帰還を祝う席に忍び込むも、そこでは彼と王女の婚約が発表されていた・・・
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】
積み上がった伏線の回収目前!!
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる