幼馴染の息子に転生した俺は人生を復讐に捧げます。

西脇 るい

文字の大きさ
22 / 27
黒への分かれ道

第二章:7話  『それぞれの帰宅後』

しおりを挟む
 街中で魔法を使ったことによって体に負担をかけてしまい、魔力の消費とともに体力も失ったアレス。体に妙な倦怠感を持っていた。

「ただいまー……」

「おかえりなさいませ、アレス様!」

「―――ッ!?」

 すっかり忘れていた。玄関を通ると必ず2~4人のメイド、または執事が出迎えてくれる。この時アレスは疲れによって注意力が散漫していたため、メイドからの出迎えに反応が遅れてしまう。

 アレスは気だるそうに「ああ」とだけ言ってメイドたちに反応した後、真っ先に自分の部屋に向かうが、階段を登りきる直前につまずいて、こけそうになった。まだ残っている握力を使って重い扉を押して、開ける。大きなため息をついてから鞄を机に置き、体重をベッドに預ける。

(………………疲れたな……)

 意識が薄れる………。
 視界の色彩に黒がどんどん加えられていく。部屋の明かりが鬱陶しいくらい輝いているが、眠気が優っているため黒が有利だ。
 ボーッとしてきた………。
 もう、動きたくないな……。
 体の力が徐々に抜けていく…。

 数秒後、アレスの意識は暗闇におちた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 時刻は7時を過ぎた頃か。部屋の外から聞こえてくる賑やかな声に反応して意識が覚醒する。ちょっとした寝癖がついた深い青髪をがさがさと手櫛でいたずらに整え、手を使わないで勢いよくベッドから起き上がった。

「腹減ったぁーー!……って、もう7時過ぎてんじゃん!飯ッ!!」

 明かりは寝る前に消していたため、辺りは薄暗かった。暗闇に目が慣れている今なら、足元をわざわざじっくり確認しなくても明かりをつけに行くことができる。しかし、深い青髪の少年――ダインは明かりの下には行かないでそのまま扉に向かった。
 未だに残っている眠気を食欲がかき消してくれるため、意識ははっきりと覚醒している。それでも、瞼は少し重いと感じているが。
 ダインがしっかりした足取りで扉まで歩き、扉を開けようと手をかけた時、

 ブーッ、ブーッ、ブーッ…

 警告音に似たような音が制服のズボンの右ポケットから聞こえ、振動が伝わった。

「っと、一体誰からだ……?」

 そう言って、ダインがポケットから取り出したのは、丸い形をした黒い塊だった。大きさはテニスボールの直径ほどで、厚さ3、4cmぐらいの片手に収まるもの。
 これは現代でいうところの携帯電話のような役割を担っており、遠く離れた場所にいる相手と会話をするための道具だ。空中に正方形で10cmほどの青白いガラスのようなものを発現させ、そこに顔を映し合いながら話し合うこともできる。青白い靄とは、液晶のような物と考えればいいだろう。
 しかし、それ以上の機能はない。メールで文章を送るだとか、ゲームをするなどといったことはできない。
 一昔前までは、複雑な術式を作り上げ、組み上げた術式の情報を鏡に流して相手の顔を表示し、対話するというのが主流だったが、新たな技術ができてから5年が経った今、この技術は衰退しつつある。

「ホントにこの『シェアリンカー』ができてから便利になったな………っと、早くでなきゃな……」

 シェアリンカーの中央を軽く押し込むと、薄暗い闇が支配している部屋にいきなり小さな光が現れる。目が少しくらみ、視線を一旦別の方に向けるが、すぐに光の方に戻した。

「はいはい、こちらダインくんです………ってあんたか。今日は何の要件ですか、カイン?」

 そこに映っていたのは入学式の時とは違う形をした黒フルフェイスを被った男だった。

「はっはっは、まだなってないよ。明日から正式な採用だしね。まぁ、今回は要件というか聞いて欲しいことがあっただけ………個人的なことで」

「聞いて欲しい?個人的?」

 ダインは首を少しだけ傾げて聞き返した。

「そう!聞いてくれよ!今日王都の道で彼を見かけたんだ!」

「それで、いても立ってもいられずにいたずらしたと?」

 黒フルフェイスの行動を先読みし、この後の発言を先に言ってしまうダイン。それに対しカインは笑いながら続きを話した。

「そうそう、道端に亀裂をいれ、子供を幻影で作り出して、作り上げた子をその道端に送り出す。あとは声を変換して女の子の声でキャァーーっと叫べばあら不思議!皆振り向いてくれた」

「女の声でキャァーとか……そんなん普通皆振り向くぞ。不思議でも何でもない」

 カインは「つれないな~」とだけ反応した後、そのまま話題の続きを話し始めた。

「中でも彼……アレス君はぶっちぎりでいい反応を見せてくれたよ。皆より早く動き出してた。それに彼の魔法も見られたから僕は満足だね」

「そうですかい。んで…………そんだけ?」

「そうだよ。これが言いたかっただけだよ」

「わかりました、なら切りますよ」

 ダインは一度大きなため息をついてからカインに返答する。そしてすぐに会話を切り、シェアリンカーをポケットにしまった。
 腹が減ったから。

「さて、今日の飯何かな~」

 鼻歌交じりに部屋から出て、食事に向かった。

 

 

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「帰ったら、結婚しよう」と言った幼馴染みの勇者は、私ではなく王女と結婚するようです

しーしび
恋愛
「結婚しよう」 アリーチェにそう約束したアリーチェの幼馴染みで勇者のルッツ。 しかし、彼は旅の途中、激しい戦闘の中でアリーチェの記憶を失ってしまう。 それでも、アリーチェはルッツに会いたくて魔王討伐を果たした彼の帰還を祝う席に忍び込むも、そこでは彼と王女の婚約が発表されていた・・・

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】 積み上がった伏線の回収目前!! 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...