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社会人編
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「なんとなくだけど、私もわかるよそれ。こいつ今、女と電話してんなとか、浮気してるなって感じるようになるんだよね」
井上が心当たりのある顔をした。
「井上は毎回、彼氏に浮気されて別れるものね。百戦錬磨じゃん」
佐々木がケラケラと茶化す。
「ほんとなんでなんだろうねぇ…でも浮気はするほうが悪いの、される方は悪くないんだよ」
井上はしみじみといった。
「小宮さんの彼氏はなんで浮気が不安なの?」
「なんでなんでしょう…」
ルリ子は首を傾げる。
「ひょっとして元カレと別れたのも浮気?」
「はい、私の大学の友達と、その…」
言葉に詰まったルリ子の様子に二人は何かを察したようだった。
「じゃあトラウマみたいなものじゃないかな?また浮気されたらどうしようみたいな」
「浮気はね、心にこうずっしりくるものがあるよね」
井上が頷く。
「お、プロは違うね」
「いややめてよその呼び方」
ルリ子は二人にそう言われてなんだかしっくり来た。
そうか、工藤のことを引きずっているだけなのか、と。
「これは私の持論なんだけど疑わしきは罰せよ。直接、電話の相手がだれか聞くに限るよ!無理なら携帯盗み見ちゃえばいいんだよ」
井上がルリ子をそそのかす。
「い、いいんでしょうか…」
「いいのいいの!だってやましいことするほうが悪いんだから!」
「井上、小宮さんをそっちの道に連れてかないで」
「ちょっと佐々木、そっちの道ってなんのことよ」
「浮気される女の道?」
「やめてよ呪いの道みたいないい方」
「ふふふふ」
ルリ子は佐々木と井上の二人のやりとりに思わず笑ってしまった。
「ようはね、疑問を持ちながら付き合い続けるのってしんどいでしょ?恋人なんだから信頼したいって気持ちはあって当然。なら疑問はさっさと解消してスッキリするべき」
佐々木はルリ子に向かって言い切った。
「そうそう。万が一本当に浮気してて別れることになったらそれはそれで相談にのるから。任せて、そういう修羅場は慣れてる」
ルリ子を励ましてくれる井上はとても頼もしかった。
「はい!ありがとうございます」
「そうと決まれば、今日はとりあえず飲んで飲んで飲みまくろう!」
「はーい!」
ルリ子の心はだいぶ軽くなっていた。
割り切って仕事の相手だと思っていたものの、それはルリ子の単なる思い込みだ。
今度会ったときに聞いてみよう。
ようやくルリ子は決心がついたのだった。
…
五月は浩太の仕事が立て込んでおり、なかなか会えなかった。
ルリ子も新入社員という後輩もでき、一層仕事に打ち込んでいた。
その代わり六月は二人とも仕事が落ち着き、ゆっくりと一緒に時間を過ごす機会を得られた。
「久しぶりだね、僕の家でこうやってゆっくりできるの」
「はい、嬉しいです」
梅雨の影響で一日中雨予報の今日は、外に出かけずに浩太の家にいる。
二人でソファに腰かけながら浩太のおすすめの映画を見ていた。
「あの、浩太さん、一つだけ聞いてもいいですか?」
「一つと言わずなんでもどうぞ」
浩太が茶目気たっぷりにかえす。
ルリ子はクスクスと笑った。
「とりあえず一つだけで大丈夫です」
「そうか、残念、残りはいつでも」
「はい…あのたまにどなたかとお電話されてるのをよくお見掛けするんですけど…」
ルリ子がそこまで言ったとき、浩太の表情が固まる。
「え、僕そんなにルリ子ちゃんの前で電話してた?二人でいるときは出ないようにしてるんだけど…ごめんね」
「あ、いえいえ!お仕事のお電話なら逆に私がお邪魔だったのかなと思って」
まさか浮気しているんじゃないかとは聞けずにルリ子はごまかした。
「そんなことないよ。うわぁ、無意識に電話してた。今度から気を付けるよ」
浩太は必死にルリ子に謝るが、ルリ子は別に彼に謝って欲しい訳ではない。
誰と電話をしているのかを教えて欲しいだけである。
「い、いえいえ!私こそ、気にしてしまってすみません」
結局、電話の相手が誰なのかを聞き出すことはできなかったが、その日から浩太がルリ子と一緒にいる時携帯を手にすることが少なくなった。
ルリ子が浩太のそばを離れて戻ってきても誰かと電話していることもなくなった。
逆にそれはルリ子の不安をさらに煽った。
「やっぱり、浮気なのかしら…やましいことがあるから私の前で電話をしなくなったんだわ」
ルリ子の中の疑念が深まっていく。
浩太はそれに気付いていないようだ。
「大丈夫?なにかあった?」
たまにルリ子の様子を見て浩太が尋ねてくることが増えたが、ルリ子は電話の相手が誰か知りたいとは言えなかった。
浩太の中で電話の話は完全に終わった話になっているのだ。
それを蒸し返すのはしつこい女だと思われかねない。
事実、ルリ子は少ししつこいところがある。
「…ううん、なんでもないんです。少し仕事で疲れたの」
ぎこちない笑顔で答えるルリ子に浩太も徐々に何か疑いを持ち始めたらしく、付き合ったころに比べて二人でいると非常にぎこちない空気が漂うようになった。
「やっぱり結婚なんて考えられないわ」
お互いにぎこちないまま結婚することはできない。
ルリ子はどうしたものかと毎日頭を悩ませるのだった。
井上が心当たりのある顔をした。
「井上は毎回、彼氏に浮気されて別れるものね。百戦錬磨じゃん」
佐々木がケラケラと茶化す。
「ほんとなんでなんだろうねぇ…でも浮気はするほうが悪いの、される方は悪くないんだよ」
井上はしみじみといった。
「小宮さんの彼氏はなんで浮気が不安なの?」
「なんでなんでしょう…」
ルリ子は首を傾げる。
「ひょっとして元カレと別れたのも浮気?」
「はい、私の大学の友達と、その…」
言葉に詰まったルリ子の様子に二人は何かを察したようだった。
「じゃあトラウマみたいなものじゃないかな?また浮気されたらどうしようみたいな」
「浮気はね、心にこうずっしりくるものがあるよね」
井上が頷く。
「お、プロは違うね」
「いややめてよその呼び方」
ルリ子は二人にそう言われてなんだかしっくり来た。
そうか、工藤のことを引きずっているだけなのか、と。
「これは私の持論なんだけど疑わしきは罰せよ。直接、電話の相手がだれか聞くに限るよ!無理なら携帯盗み見ちゃえばいいんだよ」
井上がルリ子をそそのかす。
「い、いいんでしょうか…」
「いいのいいの!だってやましいことするほうが悪いんだから!」
「井上、小宮さんをそっちの道に連れてかないで」
「ちょっと佐々木、そっちの道ってなんのことよ」
「浮気される女の道?」
「やめてよ呪いの道みたいないい方」
「ふふふふ」
ルリ子は佐々木と井上の二人のやりとりに思わず笑ってしまった。
「ようはね、疑問を持ちながら付き合い続けるのってしんどいでしょ?恋人なんだから信頼したいって気持ちはあって当然。なら疑問はさっさと解消してスッキリするべき」
佐々木はルリ子に向かって言い切った。
「そうそう。万が一本当に浮気してて別れることになったらそれはそれで相談にのるから。任せて、そういう修羅場は慣れてる」
ルリ子を励ましてくれる井上はとても頼もしかった。
「はい!ありがとうございます」
「そうと決まれば、今日はとりあえず飲んで飲んで飲みまくろう!」
「はーい!」
ルリ子の心はだいぶ軽くなっていた。
割り切って仕事の相手だと思っていたものの、それはルリ子の単なる思い込みだ。
今度会ったときに聞いてみよう。
ようやくルリ子は決心がついたのだった。
…
五月は浩太の仕事が立て込んでおり、なかなか会えなかった。
ルリ子も新入社員という後輩もでき、一層仕事に打ち込んでいた。
その代わり六月は二人とも仕事が落ち着き、ゆっくりと一緒に時間を過ごす機会を得られた。
「久しぶりだね、僕の家でこうやってゆっくりできるの」
「はい、嬉しいです」
梅雨の影響で一日中雨予報の今日は、外に出かけずに浩太の家にいる。
二人でソファに腰かけながら浩太のおすすめの映画を見ていた。
「あの、浩太さん、一つだけ聞いてもいいですか?」
「一つと言わずなんでもどうぞ」
浩太が茶目気たっぷりにかえす。
ルリ子はクスクスと笑った。
「とりあえず一つだけで大丈夫です」
「そうか、残念、残りはいつでも」
「はい…あのたまにどなたかとお電話されてるのをよくお見掛けするんですけど…」
ルリ子がそこまで言ったとき、浩太の表情が固まる。
「え、僕そんなにルリ子ちゃんの前で電話してた?二人でいるときは出ないようにしてるんだけど…ごめんね」
「あ、いえいえ!お仕事のお電話なら逆に私がお邪魔だったのかなと思って」
まさか浮気しているんじゃないかとは聞けずにルリ子はごまかした。
「そんなことないよ。うわぁ、無意識に電話してた。今度から気を付けるよ」
浩太は必死にルリ子に謝るが、ルリ子は別に彼に謝って欲しい訳ではない。
誰と電話をしているのかを教えて欲しいだけである。
「い、いえいえ!私こそ、気にしてしまってすみません」
結局、電話の相手が誰なのかを聞き出すことはできなかったが、その日から浩太がルリ子と一緒にいる時携帯を手にすることが少なくなった。
ルリ子が浩太のそばを離れて戻ってきても誰かと電話していることもなくなった。
逆にそれはルリ子の不安をさらに煽った。
「やっぱり、浮気なのかしら…やましいことがあるから私の前で電話をしなくなったんだわ」
ルリ子の中の疑念が深まっていく。
浩太はそれに気付いていないようだ。
「大丈夫?なにかあった?」
たまにルリ子の様子を見て浩太が尋ねてくることが増えたが、ルリ子は電話の相手が誰か知りたいとは言えなかった。
浩太の中で電話の話は完全に終わった話になっているのだ。
それを蒸し返すのはしつこい女だと思われかねない。
事実、ルリ子は少ししつこいところがある。
「…ううん、なんでもないんです。少し仕事で疲れたの」
ぎこちない笑顔で答えるルリ子に浩太も徐々に何か疑いを持ち始めたらしく、付き合ったころに比べて二人でいると非常にぎこちない空気が漂うようになった。
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