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第十章 騎士団団長暗殺

6話

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「はっ、やられるのはどっちかな」

団長は男の斬撃を薙ぎ払った。

「くそっ」

男は体制を立て直すとすぐに団長に向かって行く。

「この程度かっ」

団長の剣が男を掠った。

「まだだっ」

男は何度も団長に挑んでは傷を増やしていく。

「どうして、どうしてそんな傷だらけになってまで団長を殺すことにこだわるんだよっ」

二人の戦いを見ていたグレンが男にむかって叫んだ。

「おまえには関係ないっ」

男はグレンを睨みつけると再び団長に切りかかる。
しかし男の剣は団長ではない人物に止められた。

「もうやめなさい」

「え、事務長…?」

いつもは温和な表情を浮かべている事務長が鋭い目をして男を睨みつけていた。

「あ、」

男の勢いが急激に萎んでいく。

「今だっ」

男はアッという間に取り押さえられてしまった。

「くそっ…」

「君かね、私の名をかたって好き勝手してくれたのは」

取り押さえられた男の顔を事務長が覗き込む。

「え、事務長の名って…」

グレンが首を傾げる。

「うん、彼が本物の大公殿下だよ」

「ええええええ」

マルクがグレンに教えると、グレンは驚きのあまり叫んだ。

「近頃、私の名前を語って、麻薬だの暗殺だの悪事を行っているという話を聞いてね。困っていたんだよ」

「知らねぇよ」

男はそっぽを向いてシラを切る。

「団長は知ってたのかよ」

グレンは団長を見やった。

「ああ、彼の名前が悪事に利用されて困ってはいたんだが、まさか俺の暗殺まで計画していたとは…」

団長は剣を鞘に納めると、男に近づいた。

「危ないよ」

事務長が団長を男から遠ざけようとするが、団長は首を振った。

「でも直接、様子を見ていてわかった…俺を殺してこいつの気を引きたかったんだろ?」

「は?」

男が団長を睨みつける。

「君、どこかで一度こいつの愛人になったことがあるんだろう?でも俺がいるからこいつは結婚してくれない。なら俺を殺せばいい。俺は騎士団の団長だから簡単には殺せない。俺を引きずり出すには騎士団の勢力を弱めるってとこか。それに他に利害の一致した権力者か何かがいてここまで大事になったってところだろ」

「団長…そんな推理みたいなことできるんですね」

マルクはそれを聞いて感心していた。

「馬鹿にするなよっ」

「そうか、どうりで見たことある顔だと思ったよ」

事務長が男の顔をまじまじと見て頷いている。

「覚えてねぇのかよ、俺のこと…」

「悪いけど妻以外の顔を覚えていられない性分でね」

男は事務長の言葉にショックを受けている。

「でも私の大切な人に手を出した罪は重いよ」

事務長は鋭く男を睨んだ。

「…そう簡単にはいかせねぇよ」

男がそう呟いた時だった。

「危ないっ!」







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