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先生だって合コンがしたい
前編
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FILE11 植田 (教師) × 城戸 (教師)
…
休日、植田は有名なコーヒーチェーン店で一番小さなサイズのブレンドコーヒーを片手に小さな丸い木のテーブルの上にスケジュール帳を開いた。
昨今、携帯に予定を書き留める人も多い。
しかしどうしても植田は紙に書かないと忘れてしまうのだ。
毎年同じメーカーの同じ型のスケジュール帳を購入している。
日にちに予定を埋めていくと何故かスタンプラリーを終えたかのような達成感が得られる。
その感覚もまた紙のスケジュール帳を辞められない理由の一つなのだろうか。
コーヒーを啜りながら先々の予定を確認していると携帯が揺れた。
画面を開くとSNSにメッセージが来ていた。
それは同僚の城戸からの連絡だった。
「来週の金曜日、夕方から空いてる?」
スケジュール帳を覗き込むとちょうど空いていた。
「金曜日…なにもないな」
城戸に空いていることを返信する。
「ちょっと飲みに行こうぜ」
珍しい。
彼は所謂プレイボーイだ。
よく女性を引っ掛けては飲み歩いている。
年齢を考えるとそろそろ厳しいような気もするが彼には関係ないようだ。
「まぁいいか」
了承の返事をするとおしゃれなスタンプが一つ返ってきた。
苦笑しながら空っぽになった紙コップを片付けて店を出た。
…
植田と城戸は同じ学校で同じ学年を受け持っている。
教えている教科は違うものの出身大学が一緒であり、年齢も近いためそれなりに交流を持っているのだ。
「しかし城戸から誘われるなんて明日雪でも降るんじゃないのか」
件の金曜日はあっという間に訪れた。
冗談めかしてそういいながら下駄箱で靴を履き替える。
「そんなに珍しくもないだろ」
城戸は笑っている。
「普段は女しか誘わないくせに」
「そうかもな」
二人で学校を出て駅の方に歩き出す。
学校の近くではなんとなくお酒が飲みにくいので移動するのだ。
「行きたい店がある」
城戸にそういわれて大人しく植田はそのあとをついて行った。
「ここ」
「へぇ、おしゃれな店だな」
男二人では若干入りにくいリストランテだった。
城戸は慣れているのかなんの抵抗もなく扉をあける。
中に入ると予約していたのか城戸がウエイターに名前を告げた。
「こちらのお席へどうぞ」
案内された席は四人掛けだった。
植田は空いている席に荷物をおいた。
「あ、おまえそこに荷物置くなよ」
「は?空いてるんだからいいだろ」
「いや空いてないから。これから人来るから」
「人来るって誰だよ」
「あ、城戸さん!お待たせしました!!」
「いえいえ、僕たちも今来たところなんで大丈夫ですよ」
そこには清楚なワンピースに身を包んだ女性が二人いた。
「立ち話もあれなのでどうぞ座りましょう」
城戸が女性を促して座らせる。
植田は肘で城戸を小突いた。
「おまえ騙したな」
「騙すも何も俺は二人きりで飲みに行こうなんて言ってないし」
しらを切られた。
かくして植田が全く乗り気ではないまま合コン的なものが始まってしまったのだった。
…
休日、植田は有名なコーヒーチェーン店で一番小さなサイズのブレンドコーヒーを片手に小さな丸い木のテーブルの上にスケジュール帳を開いた。
昨今、携帯に予定を書き留める人も多い。
しかしどうしても植田は紙に書かないと忘れてしまうのだ。
毎年同じメーカーの同じ型のスケジュール帳を購入している。
日にちに予定を埋めていくと何故かスタンプラリーを終えたかのような達成感が得られる。
その感覚もまた紙のスケジュール帳を辞められない理由の一つなのだろうか。
コーヒーを啜りながら先々の予定を確認していると携帯が揺れた。
画面を開くとSNSにメッセージが来ていた。
それは同僚の城戸からの連絡だった。
「来週の金曜日、夕方から空いてる?」
スケジュール帳を覗き込むとちょうど空いていた。
「金曜日…なにもないな」
城戸に空いていることを返信する。
「ちょっと飲みに行こうぜ」
珍しい。
彼は所謂プレイボーイだ。
よく女性を引っ掛けては飲み歩いている。
年齢を考えるとそろそろ厳しいような気もするが彼には関係ないようだ。
「まぁいいか」
了承の返事をするとおしゃれなスタンプが一つ返ってきた。
苦笑しながら空っぽになった紙コップを片付けて店を出た。
…
植田と城戸は同じ学校で同じ学年を受け持っている。
教えている教科は違うものの出身大学が一緒であり、年齢も近いためそれなりに交流を持っているのだ。
「しかし城戸から誘われるなんて明日雪でも降るんじゃないのか」
件の金曜日はあっという間に訪れた。
冗談めかしてそういいながら下駄箱で靴を履き替える。
「そんなに珍しくもないだろ」
城戸は笑っている。
「普段は女しか誘わないくせに」
「そうかもな」
二人で学校を出て駅の方に歩き出す。
学校の近くではなんとなくお酒が飲みにくいので移動するのだ。
「行きたい店がある」
城戸にそういわれて大人しく植田はそのあとをついて行った。
「ここ」
「へぇ、おしゃれな店だな」
男二人では若干入りにくいリストランテだった。
城戸は慣れているのかなんの抵抗もなく扉をあける。
中に入ると予約していたのか城戸がウエイターに名前を告げた。
「こちらのお席へどうぞ」
案内された席は四人掛けだった。
植田は空いている席に荷物をおいた。
「あ、おまえそこに荷物置くなよ」
「は?空いてるんだからいいだろ」
「いや空いてないから。これから人来るから」
「人来るって誰だよ」
「あ、城戸さん!お待たせしました!!」
「いえいえ、僕たちも今来たところなんで大丈夫ですよ」
そこには清楚なワンピースに身を包んだ女性が二人いた。
「立ち話もあれなのでどうぞ座りましょう」
城戸が女性を促して座らせる。
植田は肘で城戸を小突いた。
「おまえ騙したな」
「騙すも何も俺は二人きりで飲みに行こうなんて言ってないし」
しらを切られた。
かくして植田が全く乗り気ではないまま合コン的なものが始まってしまったのだった。
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