64 / 130
CDを出したい路上ミュージシャンに出資してみた
3話
しおりを挟む
ようやく彼の周りから人がいなくなったとき、俺は彼と目が合った。
「あの…」
ギターを片付けていた手を止めて俺に声をかけてくる。
俺は無言で連絡ボードの画面を彼に見せる。
「あんたであってる?」
俺は自分でもなぜかわからないが、若干不機嫌になっていた。
「あ、はい、俺です…」
歌っていた時やファンと接していた時とは違ってなんだかおどおどしている。
「片付け終わった?もう行ける?」
「はい、もう終わります」
片付けている彼を眺めていると彼が口を開いた。
「あの、俺の歌どうでしたか?」
「え?あぁ…悪いけど俺、あんまり音楽詳しくないから何も言えない」
「や、普通に、思ったこと言ってもらえれば…」
「そう言われてもな…あー、でも周りのお客さんたち喜んでたし、誰よりも観客集まってたから良いんじゃないのか?」
俺は適当にそう答えた。
歌は最後の方に来たのでほぼ聞いてないし、聞いていたとしても月並み以下の答えしか言えないだろう。
「そうですか」
彼はギターケースを含めて荷物を背負うと俺の方を向く。
「じゃ、行こうか」
「…はい」
…
ホテルに向かう道すがら、俺は彼の身の上話を聞いていた。
「ありきたりな話ですよ。高校でギターに目覚めて、バンドを組んだのはいいものの仲間たちは普通に就職して。俺だけ今でも取り残されたまま音楽にすがってるって感じです」
「でもすがってCDデビューしたいとか思ったからあのサイトに載せたんだろ?」
「まぁそうなんですけどね」
彼はそこで言葉に詰まった。
「違うのかよ?」
「違わなくはないんですけど、親にちゃんとしろってせっつかれたりとかもあって、100%俺の意思じゃないっていうか」
なんか思ったよりもうだうだとした感じの男だ。
「ふーん」
俺はこれ以上聞くのを面倒に思ってしまった。
…
ベタなことがしたい欲望にかられた俺は今日はラブホテルを選んだ。
場末のレトロなTHEラブホテル、という雰囲気ムンムンの場所。
「今時、こんなホテルあるんですね」
インディアンの頭みたいな装飾を外した男は非常に男前の顔をしていた。
「なぁ、その頭の飾りないほうがモテるんじゃねぇの?」
俺はついそういってしまった。
「え、あ、そうですかね…?」
彼は首を傾げている。
その仕草を含めて、変な装飾や荷物のない男は幼く見えた。
「まぁなんでもいいけど」
俺は後ろの真っ白なフカフカのベットに彼を押し倒した。
「うわっ」
唇を近づけると彼は思いっきり目をつぶる。
「あれ?もしかして初めてだったりする?」
頬に手を滑らせながら尋ねる。
「べ、別にそういうわけじゃ…」
男はゆっくり目を開けて俺の顔に手を伸ばしてくる。
ぐいっと顔が引き寄せられると急に乱雑に唇が当たる。
「は?下手すぎるぞ」
唇を離した俺は主導権を取り戻して彼の唇を奪った。
舌を割り入れるとおずおずと伸ばしたので口内全部をなめとりながら舌を巻き取ってやる。
「はっふ…んん、ぷはっ」
胸をたたかれて唇を離すと、彼は肩で息をしながら涙ぐんでいた。
「鼻で息しとけって」
俺はあきれながらそう言ったが、こいつ初めてだなというのをひしひしと感じ取っていた。
「あの…」
ギターを片付けていた手を止めて俺に声をかけてくる。
俺は無言で連絡ボードの画面を彼に見せる。
「あんたであってる?」
俺は自分でもなぜかわからないが、若干不機嫌になっていた。
「あ、はい、俺です…」
歌っていた時やファンと接していた時とは違ってなんだかおどおどしている。
「片付け終わった?もう行ける?」
「はい、もう終わります」
片付けている彼を眺めていると彼が口を開いた。
「あの、俺の歌どうでしたか?」
「え?あぁ…悪いけど俺、あんまり音楽詳しくないから何も言えない」
「や、普通に、思ったこと言ってもらえれば…」
「そう言われてもな…あー、でも周りのお客さんたち喜んでたし、誰よりも観客集まってたから良いんじゃないのか?」
俺は適当にそう答えた。
歌は最後の方に来たのでほぼ聞いてないし、聞いていたとしても月並み以下の答えしか言えないだろう。
「そうですか」
彼はギターケースを含めて荷物を背負うと俺の方を向く。
「じゃ、行こうか」
「…はい」
…
ホテルに向かう道すがら、俺は彼の身の上話を聞いていた。
「ありきたりな話ですよ。高校でギターに目覚めて、バンドを組んだのはいいものの仲間たちは普通に就職して。俺だけ今でも取り残されたまま音楽にすがってるって感じです」
「でもすがってCDデビューしたいとか思ったからあのサイトに載せたんだろ?」
「まぁそうなんですけどね」
彼はそこで言葉に詰まった。
「違うのかよ?」
「違わなくはないんですけど、親にちゃんとしろってせっつかれたりとかもあって、100%俺の意思じゃないっていうか」
なんか思ったよりもうだうだとした感じの男だ。
「ふーん」
俺はこれ以上聞くのを面倒に思ってしまった。
…
ベタなことがしたい欲望にかられた俺は今日はラブホテルを選んだ。
場末のレトロなTHEラブホテル、という雰囲気ムンムンの場所。
「今時、こんなホテルあるんですね」
インディアンの頭みたいな装飾を外した男は非常に男前の顔をしていた。
「なぁ、その頭の飾りないほうがモテるんじゃねぇの?」
俺はついそういってしまった。
「え、あ、そうですかね…?」
彼は首を傾げている。
その仕草を含めて、変な装飾や荷物のない男は幼く見えた。
「まぁなんでもいいけど」
俺は後ろの真っ白なフカフカのベットに彼を押し倒した。
「うわっ」
唇を近づけると彼は思いっきり目をつぶる。
「あれ?もしかして初めてだったりする?」
頬に手を滑らせながら尋ねる。
「べ、別にそういうわけじゃ…」
男はゆっくり目を開けて俺の顔に手を伸ばしてくる。
ぐいっと顔が引き寄せられると急に乱雑に唇が当たる。
「は?下手すぎるぞ」
唇を離した俺は主導権を取り戻して彼の唇を奪った。
舌を割り入れるとおずおずと伸ばしたので口内全部をなめとりながら舌を巻き取ってやる。
「はっふ…んん、ぷはっ」
胸をたたかれて唇を離すと、彼は肩で息をしながら涙ぐんでいた。
「鼻で息しとけって」
俺はあきれながらそう言ったが、こいつ初めてだなというのをひしひしと感じ取っていた。
0
あなたにおすすめの小説
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる