裏クラウドファンディングへようこそ

浅上秀

文字の大きさ
84 / 130
レトロなゲームセンターで出資してみた

1話

しおりを挟む
最近、裏クラウドファンディングでは運営側主催のイベントが増えてきている。
出資側が増えたのか大きなスポンサーでもついたのだろうか。
もちろん従来のように出資した相手を家に呼ぶこともできるが、いつかみたいに窃盗に合う危険も隣りあわせだ。
かといってホテルに行くのも面倒なこともある。
そのため最近はもっぱら週末にイベントに出かけるのはある種の楽しみになっていた。

「どれにするかなぁ」

サイトでは特集が組まれており、参加費用さえ出資すれば当日会場内では無料でイベントを楽しめる者や参加費は無料だが当日たんまり金をふんだくられるものもある。
俺宛に連絡が届くものは招待案件ばかりなので参加費用は無料なことが多い。
中でも今回は日程をうまく重ねられたせいで行きたいイベントが複数あって非常に悩ましかった。

「…よし、これにするか」

諦めたイベントに行けないことを考えると苦渋の決断ともいえるがこのイベントを選んできっと後悔はないだろう。
普段とは違う嗜好もまた一興。
明日が楽しみだ。



イベントは夕方から行われるそうで午前中は部屋の掃除や片付けに勤しんだ。
下膳中だけ切り抜けば平凡な独身男性の休日だろう。
いそいそと出かける準備を終える。
ほぼ手ぶらで行って明日の朝には帰ってくる予定だ。

「この駅は降りたことないな」

指定された待ち合わせ場所の駅はかなりマイナーだ。
最寄駅からは三駅ほどしか離れていないが、住んでいない限り降りる人はほとんどいないだろう。
目だった商業施設やビルはない、ただの住宅街である。

「で、先の曲がり角を右か」

線路沿いにまっすぐ進んでいき、曲がり角を右に。
並んだ少し古ぼけた住宅街を抜けると近代的な光が目に飛び込んでいた。

「へぇ、こんなとこにボーリング場なんてあったんだ」

有名なボーリング場やゲームセンター、カラオケなんかも兼ねそろえた施設がそびえたっている。
こんなところにあったとは知らなかった。
若者やカップルが入っていくのを尻目にその横をすり抜ける。
もう少しだけ住宅街の奥へ入り込むと大きな道路に出る。
コンビニ、クリーニング店、理容室。
その隣に目的地はあった。

「ここか」

錆びた看板と欠けたネオンサインが店名を映し出していた。
中からは少しだけ電子音が漏れ聞こえている。
ガタガタしている自動ドアをくぐるとその電子音は少しだけ大きくなった。
レトロな対戦型ゲームやホッケーゲーム、ワニを叩くものから太鼓を叩くものまでたくさんのゲーム台が並んでいる。
その光景に一瞬で俺の心は学生に戻されたかのような気がした。
しかしそのゲーム台に座ることなく、俺は店の奥を目指した。



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

身体検査その後

RIKUTO
BL
「身体検査」のその後、結果が公開された。彼はどう感じたのか?

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

処理中です...