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危機は突然に…
3話
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昨日、社長と山城にしこたま飲まされてタクシーで家に帰ってきた。
気が付くと俺は玄関で寝ていたようだ。
全身が痛い。
「山城からか」
携帯にメッセージが入っていた。
会社に来たら役員室に来いと書かれている。
役員室のある階は俺のような一般社員はそもそもエレベーターでそこに降りることすら許されない場所だ。
会社に到着して早々にエレベーターに乗りこむ。
件の階のボタンを押しただけで一緒に乗っていた人たちがギョっとしたのがわかる。
エレベーターを降りると山城がいた。
「よぉ、山城、おまえ暇なのかよ」
「そんなわけないだろ」
山城と二人で未知の空間である社長室に入る。
「失礼します」
「あぁ、よく来てくれたね」
社長室に入ると部長もいた。
「やぁ」
「部長…」
「辞令は来月頭から、社長室付の部署に異動だ」
「栄転おめでとう」
「これ、本当に栄転かよ」
「給料も上がるしやりたい放題だぞ」
「はぁ」
…
「先輩、こんな時期に異動なんて寂しいです」
後輩だけがただ一人、俺の異動を嘆いてくれる。
「ありがとな、色々世話掛けたな」
「いえいえ、俺こそ…頑張ってくださいね」
後輩に手持ちの仕事を全部引き継いで俺は新部署に異動した。
「今日からよろしく」
運営の仕事は本当に多岐にわたった。
俺が週末参加していたような様々なイベントの企画、実行、違反者の処罰などなど新人として久しぶりに叩き込まれた。
「ッチ、とんだブラック企業だな」
おかげで家に帰るとすぐに寝てしまうので欲を発散する暇がなくなり、溜まっていく一方だ。
毎日、仕事の関係でサイトを開く。
開きすぎてもはや見飽きてしまったほどだ。
だんだんと俺は裏クラウドファンディングに対して楽しみを見いだせなくなってきていた。
…
悶々としていたある日のことだ。
「今日、ちょっと接待があるんだけど先方がどうしても君も呼んで欲しいというんだよ」
社長にそう言われてとある会食に同席することになった。
「へぇ、どんな方なんですか」
「うちの大口顧客でもあり大口のお取引先かな」
社長は意味深に笑った。
俺と社長の方が先に会場についたので座敷で来客を待っていた。
「失礼いたします、お客様がお見えになりました」
そうして入ってきたのはいつかのあのアイドルのマネージャーだった。
「あの時はどうも」
「いえ、こちらこそ」
「積もる話は食べながら話そうか」
「社長には本当にいつもお世話になってます。うちのアイドルたちも売れに売れておまけに躾けもできる」
「何言ってるんですか、うちの看板イベントを企画してくれたのはおたくの会社じゃないか」
実は彼はマネージャー兼事務所の社長だそうだ。
うちの社長とどう知り合ったかはわからないが、いろんな意味で懇意にしているらしい。
「でもよく覚えてたね、一回会っただけだろう」
「はい、お会いしたのは一度だけかと」
「いやぁあの時のお礼が言いたかったんだよ。実は君の出たビデオの売り上げがこんなにあったんだ」
そういうとマネージャーは後ろにいた秘書のような女性に手招きした。
女性は高級な和菓子の箱を俺に渡してくれた。
「開けてごらん」
和菓子が礼なんてつまらない。
だが箱を開けて驚いてしまった。
お菓子ではなく札がぎっしりと詰まっていたのだ。
「こんな金受け取れませんし、第一にあのビデオ売ってたなんて」
怒りが込み上げてくる。
「いやだって同意してもらってるし」
マネージャーの悪びれのない様子にあの時のうかつな自分を殴りたくなる。
「まぁまぁ安心しなよ。ちゃんと君の顔は隠れてるからさ」
何を安心するんだ俺は。
気が付くと俺は玄関で寝ていたようだ。
全身が痛い。
「山城からか」
携帯にメッセージが入っていた。
会社に来たら役員室に来いと書かれている。
役員室のある階は俺のような一般社員はそもそもエレベーターでそこに降りることすら許されない場所だ。
会社に到着して早々にエレベーターに乗りこむ。
件の階のボタンを押しただけで一緒に乗っていた人たちがギョっとしたのがわかる。
エレベーターを降りると山城がいた。
「よぉ、山城、おまえ暇なのかよ」
「そんなわけないだろ」
山城と二人で未知の空間である社長室に入る。
「失礼します」
「あぁ、よく来てくれたね」
社長室に入ると部長もいた。
「やぁ」
「部長…」
「辞令は来月頭から、社長室付の部署に異動だ」
「栄転おめでとう」
「これ、本当に栄転かよ」
「給料も上がるしやりたい放題だぞ」
「はぁ」
…
「先輩、こんな時期に異動なんて寂しいです」
後輩だけがただ一人、俺の異動を嘆いてくれる。
「ありがとな、色々世話掛けたな」
「いえいえ、俺こそ…頑張ってくださいね」
後輩に手持ちの仕事を全部引き継いで俺は新部署に異動した。
「今日からよろしく」
運営の仕事は本当に多岐にわたった。
俺が週末参加していたような様々なイベントの企画、実行、違反者の処罰などなど新人として久しぶりに叩き込まれた。
「ッチ、とんだブラック企業だな」
おかげで家に帰るとすぐに寝てしまうので欲を発散する暇がなくなり、溜まっていく一方だ。
毎日、仕事の関係でサイトを開く。
開きすぎてもはや見飽きてしまったほどだ。
だんだんと俺は裏クラウドファンディングに対して楽しみを見いだせなくなってきていた。
…
悶々としていたある日のことだ。
「今日、ちょっと接待があるんだけど先方がどうしても君も呼んで欲しいというんだよ」
社長にそう言われてとある会食に同席することになった。
「へぇ、どんな方なんですか」
「うちの大口顧客でもあり大口のお取引先かな」
社長は意味深に笑った。
俺と社長の方が先に会場についたので座敷で来客を待っていた。
「失礼いたします、お客様がお見えになりました」
そうして入ってきたのはいつかのあのアイドルのマネージャーだった。
「あの時はどうも」
「いえ、こちらこそ」
「積もる話は食べながら話そうか」
「社長には本当にいつもお世話になってます。うちのアイドルたちも売れに売れておまけに躾けもできる」
「何言ってるんですか、うちの看板イベントを企画してくれたのはおたくの会社じゃないか」
実は彼はマネージャー兼事務所の社長だそうだ。
うちの社長とどう知り合ったかはわからないが、いろんな意味で懇意にしているらしい。
「でもよく覚えてたね、一回会っただけだろう」
「はい、お会いしたのは一度だけかと」
「いやぁあの時のお礼が言いたかったんだよ。実は君の出たビデオの売り上げがこんなにあったんだ」
そういうとマネージャーは後ろにいた秘書のような女性に手招きした。
女性は高級な和菓子の箱を俺に渡してくれた。
「開けてごらん」
和菓子が礼なんてつまらない。
だが箱を開けて驚いてしまった。
お菓子ではなく札がぎっしりと詰まっていたのだ。
「こんな金受け取れませんし、第一にあのビデオ売ってたなんて」
怒りが込み上げてくる。
「いやだって同意してもらってるし」
マネージャーの悪びれのない様子にあの時のうかつな自分を殴りたくなる。
「まぁまぁ安心しなよ。ちゃんと君の顔は隠れてるからさ」
何を安心するんだ俺は。
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