7 / 47
第7話 三島side ずっと前から片思い
しおりを挟む一人で教室を去っていく藤崎を見送りながら、俺はため息をつく。
なんだよ。話してる途中って、そんなの気を使わなくてもいいのに。
そんなのさっさと切り上げていいから、お前と一緒に行きたいっての。
そうハッキリ言えたら、どんなによかったか。
────ポン
そっと、肩を叩かれる。
叩いたのは、そばで一部始終を見ていた、中学の頃からの友人だ。
「…………ドンマイ」
「何がだ!」
なんでいきなり慰められなきゃならねーんだよ!
けどそこで、同じく一部始終を見ていた北野が、さらに続ける。
「まだまだチャンスはこれからだって」
「だから何がだ!」
声を荒らげるけど、二人はちっとも堪える様子がない。
北野に至っては、ニヤニヤと笑いながら、生暖かい視線を向けてくる。
「藍がベースを始めたと聞けばギターを始める。一緒に部室に行けなかっただけで落ち込む。あんた、わかり易すぎでしょ。小学生の頃からの片思い、長いよね」
「うわぁぁぁぁぁっ!」
こ、こいつ。いきなり何言い出すんだよ!
いきなり叫んだせいで、教室にいた他の奴らがどうしたんだって感じでこっちを見てくるけど、それを気にする余裕なんてない。
「お前、なにテキトーなこと言ってんだよ!」
「いや、だからわかり易すぎだって。あんたが藍を好きってこと、同中ならけっこうな子が知ってるよ。小学生の頃は、好きな子いじめやってたことも含めてね」
「くっ……」
やめろ。黒歴史を掘り起こすな。
小学生の頃、藤崎にやったイジワルの数々を思い出すと、死にたくなる。
なんでもいいから、とにかく藤崎に構ってほしかったあの頃の俺に言いたい。このバカヤロウ!
もちろん今はそんなことやっちゃいねえし、藤崎とは、普通に仲のいい同級生って感じだ。
……と思うんだが、なぜか周りの奴らには、俺が藤崎を好きだってことはバレバレなんだよな。
なんでわかるんだよ。
「まあ、藍本人は気づいてないけどね。あの子、自分の恋愛に関してはとことん鈍いのよね」
そうなんだよな。
一番肝心な藤崎だけは、俺の気持ちに全く気づいてない。
まあ、ある意味それでよかったのかもしれない。
「気づかなくていいよ。知ってもどうせ困らせるだけだ」
「そんなのわからないじゃない」
「わかるよ。だってあいつ、未だに小学生の頃の初恋を引きずってるんだぞ」
いつも藤崎のすぐ側にいた、あいつのことを思い出す。
有馬優斗。もう亡くなって何年も経つってのに、多分藤崎は、まだあいつのことを好きでいる。
そんなの、見てりゃだいたいわかる。
「えっ、そうなの? 初恋って、相手は誰?」
中学に入ってから知り合った北野は、俺や藤崎が小学生だった頃のことはよく知らない。
興味津々に聞いてくるけど、俺はこれ以上話す気はなかった。
「面倒臭いから言わねえよ」
「えーっ。ちょっとくらいいいじゃない」
「嫌だ。だいたい、藤崎に無断で話していいもんじゃないだろ」
「そりゃそうだけど……」
北野は不満そうにしているけど、さすがに本人のいないところで、あれこれ昔のことを聞いてこようとはしなかった。
ただ、かわりにこんなことを言う。
「けどさ、軽音部って、今はあんたたち二人しかいないかもしれないんだよね。それって、もっと仲良くなれるチャンスなんじゃないの?」
「なっ──!」
それは、俺だって考えなかったわけじゃない。
って言うか、それが目的で軽音部に入るって言っても過言じゃなかった。
ただめちゃめちゃ不純な動機だから、大きな声じゃ言えないけどな。
それでも、これから始まる軽音部の活動を想像すると、少しは期待もするってもんだ。
「同じ部活……二人きり……」
いい加減、俺もさっさと部室に行こう。
そこで藤崎と今よりもっと仲良くなれたら。そう思いながら、俺はギュッと手を握りしめた。
0
あなたにおすすめの小説
年下男子に追いかけられて極甘求婚されています
あさの紅茶
恋愛
◆結婚破棄され憂さ晴らしのために京都一人旅へ出かけた大野なぎさ(25)
「どいつもこいつもイチャイチャしやがって!ムカつくわー!お前ら全員幸せになりやがれ!」
◆年下幼なじみで今は京都の大学にいる富田潤(20)
「京都案内しようか?今どこ?」
再会した幼なじみである潤は実は子どもの頃からなぎさのことが好きで、このチャンスを逃すまいと猛アプローチをかける。
「俺はもう子供じゃない。俺についてきて、なぎ」
「そんなこと言って、後悔しても知らないよ?」
課長のケーキは甘い包囲網
花里 美佐
恋愛
田崎すみれ 二十二歳 料亭の娘だが、自分は料理が全くできない負い目がある。
えくぼの見える笑顔が可愛い、ケーキが大好きな女子。
×
沢島 誠司 三十三歳 洋菓子メーカー人事総務課長。笑わない鬼課長だった。
実は四年前まで商品開発担当パティシエだった。
大好きな洋菓子メーカーに就職したすみれ。
面接官だった彼が上司となった。
しかも、彼は面接に来る前からすみれを知っていた。
彼女のいつも買うケーキは、彼にとって重要な意味を持っていたからだ。
心に傷を持つヒーローとコンプレックス持ちのヒロインの恋(。・ω・。)ノ♡
救助隊との色恋はご自由に。
すずなり。
恋愛
22歳のほたるは幼稚園の先生。訳ありな雇用形態で仕事をしている。
ある日、買い物をしていたらエレベーターに閉じ込められてしまった。
助けに来たのはエレベーターの会社の人間ではなく・・・
香川「消防署の香川です!大丈夫ですか!?」
ほたる(消防関係の人だ・・・!)
『消防署員』には苦い思い出がある。
できれば関わりたくなかったのに、どんどん仲良くなっていく私。
しまいには・・・
「ほたるから手を引け・・!」
「あきらめない!」
「俺とヨリを戻してくれ・・!」
「・・・・好きだ。」
「俺のものになれよ。」
みんな私の病気のことを知ったら・・・どうなるんだろう。
『俺がいるから大丈夫』
そう言ってくれるのは誰?
私はもう・・・重荷になりたくない・・・!
※お話に出てくるものは全て、想像の世界です。現実のものとは何ら関係ありません。
※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
ただただ暇つぶしにでも読んでいただけたら嬉しく思います。
すずなり。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
私が素直になったとき……君の甘過ぎる溺愛が止まらない
朝陽七彩
恋愛
十五年ぶりに君に再開して。
止まっていた時が。
再び、動き出す―――。
*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*
衣川遥稀(いがわ はるき)
好きな人に素直になることができない
松尾聖志(まつお さとし)
イケメンで人気者
*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる