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第19話 部活動紹介
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まだまだ始まったばかりの高校生活だけど、そろそろ授業も本格的に行われるようになってきている。
ちなみに、私たちが授業を受けている間、ユウくんは邪魔になるといけないからって、基本的に別行動をとることにしている。
そして放課後になると、いよいよ部活の時間だ。
昨日はユウくんのことで手一杯だったから、軽音部の活動は、実質今日からがスタート。
三島と一緒に部室に行ったけど、相変わらず、入部希望者も先生の姿も無い。
ただ一人、先に来ていたユウくんが待っていた。
「顧問の先生、今日もいないの?」
「ああ。俺はけっこう前からここにいたけど、来たのは藍たちがはじめてだ」
「じゃあ、やっぱり一度職員室に行くしかないか」
部室の黒板には、昨日と変わらず、『軽音部へ入部希望の方は職員室まで』と書かれていた。
「まあ、顧問って言っても、俺達がいた頃は、ほとんど好き勝手やってたけどな」
三人で職員室に向かう途中、ユウくんがそう言う。
「そうなの? 色々教えてくれたんじゃないの?」
「いいや。顧問って言っても、先生はたまに様子を見に来るくらいだったな」
「そうなのかよ。随分と自由なんだな」
そんなことを話しながら、職員室の前までたどり着く。
次は、ドアをノックして訪ねればいいんだけど、職員室に入るのは少し緊張する。
特に私や三島は、まだこの学校自体に慣れていないから余計にだ。
「俺の姿が他の人にも見えるなら、二人のかわりに話を聞いてやれたんだけどな」
ユウくんはそう言うけど、それを言っても仕方ない。
さらに、三島がこう言った。
「今部員やってるのは俺たちだろ。こんなことで、いちいち先輩を頼る気はねえよ」
確かに私も、何でもかんでもユウくんに頼るのは違うかなって思う。
けどそれを聞いたユウくんは、話の本題よりも気になることがあったみたい。
「今言った先輩って、俺のことか?」
「悪いかよ。あんた、一応この学校の先輩なんだし、いつまでもお前とかこいつとかで呼ぶわけにもいかねーだろ」
「おぉっ。まさか、そんな気づかいをされるとは思わなかったな」
私もびっくりする。
小学生の頃の三島は、ユウくんのことをまさにお前やこいつって遠慮なしに呼んでたけど、まさかそんな三島がこんなことを言い出すなんて。
「お前も成長したんだな」
「……うるせえよ」
三島本人は、私たちの反応が気に入らなかったのか、面白くなさそう。
そういうところは、昔とあまりかわってないかも
「けど言われてみれば、確かに俺は、二人にとって先輩になるか」
ユウくんが正式にここの生徒だったのはもう何年も前だから、確かに私や三島にとっては大先輩だ。
「じゃあ、私もこれからは先輩って呼んだ方がいいのかな?」
「藍に先輩って呼ばれるのも変な感じだし、別に今まで通りでいいよ」
「二人とも、そんなことより、さっさと中に入るぞ」
話がどんどん脇道に逸れそうになったところで、三島がストップをかける。
そうだった。早く、職員室の中に入らないと。
そしてドアをノックすると、すぐにどうぞという声が返ってきた。
ドアを開け中に入ると、若い男の先生が声をかけてくる。
「君たち新入生? 何か用かな?」
「あの、私たち軽音部に入部したいのですが」
「軽音部? ああ、あそこか」
どうやら、これだけで事情を察してくれたみたいだ。
「あの部は、去年まで顧問の先生をやっていた人が辞めてしまったんだ。それにうちの軽音部は、先生はほとんど何も教えず自分達だけでやっていくことになるんだが、それでもいいか?」
顧問の先生、辞めちゃったんだ。
それに、ほとんど何も教えないってのは、さっきユウくんから聞いた通り。
どうやら今でも、生徒が自由に活動するというのは変わってないみたい。
もちろん、私も三島も、それで構わない。
「はい。軽音部への入部を希望します」
「俺もです」
「そうか、わかった。顧問の先生についてはこれから決めることになるから、決定したら連絡するよ」
それから、私と三島は二人して入部届けを書いて、これにて入部の手続きは終了。
だけど職員室を出ようとしたところで、さっきの先生が、思いついたように二人を呼び止めた。
「そうだ。明日の放課後、体育館で部活動紹介があるのは知ってるか?」
「はい。新入生向けにあるやつですよね?」
それなら、ホームルームでも言ってた。
色んな部活の代表が、ステージの上で部活の紹介を兼ねたパフォーマンスをやるんだって。
見に行くかどうかは生徒の自由だけど、聞いた話だと、かなりの人数が行くみたい。
「軽音部は部員も顧問もいないから、手の空いてる先生が簡単な説明をするだけの予定だったんだけど、君達、そこに出る気はある?」
えっ?
まさか、そんなこと言われるなんて思わなかった。
驚いたのは、三島も同じ。
「出るって、俺達がステージの上に立って説明をするんですか?」
そんなところで大勢の人に向かって話をするってなると、緊張しそう。
だけど、先生の話はそれだけじゃなかった。
「希望するなら、一曲くらいは演奏できると思うよ。ただ話をするだけより、部のアピールになるんじゃないかな」
「演奏!?」
なんだか、話しをするだけよりも遙かにハードルが上がった気がする。
もちろん、軽音部のパフォーマンスなんだから、演奏したって不思議じゃない。
先生の言う通り、部をアピールするチャンスにもなる。
けど、あまりに急な話だ。
「ど、どうしようか……」
「どうするって、そうだな……」
私と同じで、三島もどうしたらいいかわからず困ってる。
なら、ユウくんはどう?
そう思ってユウくんを見るけど、ユウくんは特に何も言わずに、静かにこの様子を見守っていた。
「答えは今すぐじゃなくていいよ。だけど、明日の朝くらいには決めてほしい」
「は、はい」
先生にそう言われ、私たちは答えを保留にしたまま、職員室を後にした。
ちなみに、私たちが授業を受けている間、ユウくんは邪魔になるといけないからって、基本的に別行動をとることにしている。
そして放課後になると、いよいよ部活の時間だ。
昨日はユウくんのことで手一杯だったから、軽音部の活動は、実質今日からがスタート。
三島と一緒に部室に行ったけど、相変わらず、入部希望者も先生の姿も無い。
ただ一人、先に来ていたユウくんが待っていた。
「顧問の先生、今日もいないの?」
「ああ。俺はけっこう前からここにいたけど、来たのは藍たちがはじめてだ」
「じゃあ、やっぱり一度職員室に行くしかないか」
部室の黒板には、昨日と変わらず、『軽音部へ入部希望の方は職員室まで』と書かれていた。
「まあ、顧問って言っても、俺達がいた頃は、ほとんど好き勝手やってたけどな」
三人で職員室に向かう途中、ユウくんがそう言う。
「そうなの? 色々教えてくれたんじゃないの?」
「いいや。顧問って言っても、先生はたまに様子を見に来るくらいだったな」
「そうなのかよ。随分と自由なんだな」
そんなことを話しながら、職員室の前までたどり着く。
次は、ドアをノックして訪ねればいいんだけど、職員室に入るのは少し緊張する。
特に私や三島は、まだこの学校自体に慣れていないから余計にだ。
「俺の姿が他の人にも見えるなら、二人のかわりに話を聞いてやれたんだけどな」
ユウくんはそう言うけど、それを言っても仕方ない。
さらに、三島がこう言った。
「今部員やってるのは俺たちだろ。こんなことで、いちいち先輩を頼る気はねえよ」
確かに私も、何でもかんでもユウくんに頼るのは違うかなって思う。
けどそれを聞いたユウくんは、話の本題よりも気になることがあったみたい。
「今言った先輩って、俺のことか?」
「悪いかよ。あんた、一応この学校の先輩なんだし、いつまでもお前とかこいつとかで呼ぶわけにもいかねーだろ」
「おぉっ。まさか、そんな気づかいをされるとは思わなかったな」
私もびっくりする。
小学生の頃の三島は、ユウくんのことをまさにお前やこいつって遠慮なしに呼んでたけど、まさかそんな三島がこんなことを言い出すなんて。
「お前も成長したんだな」
「……うるせえよ」
三島本人は、私たちの反応が気に入らなかったのか、面白くなさそう。
そういうところは、昔とあまりかわってないかも
「けど言われてみれば、確かに俺は、二人にとって先輩になるか」
ユウくんが正式にここの生徒だったのはもう何年も前だから、確かに私や三島にとっては大先輩だ。
「じゃあ、私もこれからは先輩って呼んだ方がいいのかな?」
「藍に先輩って呼ばれるのも変な感じだし、別に今まで通りでいいよ」
「二人とも、そんなことより、さっさと中に入るぞ」
話がどんどん脇道に逸れそうになったところで、三島がストップをかける。
そうだった。早く、職員室の中に入らないと。
そしてドアをノックすると、すぐにどうぞという声が返ってきた。
ドアを開け中に入ると、若い男の先生が声をかけてくる。
「君たち新入生? 何か用かな?」
「あの、私たち軽音部に入部したいのですが」
「軽音部? ああ、あそこか」
どうやら、これだけで事情を察してくれたみたいだ。
「あの部は、去年まで顧問の先生をやっていた人が辞めてしまったんだ。それにうちの軽音部は、先生はほとんど何も教えず自分達だけでやっていくことになるんだが、それでもいいか?」
顧問の先生、辞めちゃったんだ。
それに、ほとんど何も教えないってのは、さっきユウくんから聞いた通り。
どうやら今でも、生徒が自由に活動するというのは変わってないみたい。
もちろん、私も三島も、それで構わない。
「はい。軽音部への入部を希望します」
「俺もです」
「そうか、わかった。顧問の先生についてはこれから決めることになるから、決定したら連絡するよ」
それから、私と三島は二人して入部届けを書いて、これにて入部の手続きは終了。
だけど職員室を出ようとしたところで、さっきの先生が、思いついたように二人を呼び止めた。
「そうだ。明日の放課後、体育館で部活動紹介があるのは知ってるか?」
「はい。新入生向けにあるやつですよね?」
それなら、ホームルームでも言ってた。
色んな部活の代表が、ステージの上で部活の紹介を兼ねたパフォーマンスをやるんだって。
見に行くかどうかは生徒の自由だけど、聞いた話だと、かなりの人数が行くみたい。
「軽音部は部員も顧問もいないから、手の空いてる先生が簡単な説明をするだけの予定だったんだけど、君達、そこに出る気はある?」
えっ?
まさか、そんなこと言われるなんて思わなかった。
驚いたのは、三島も同じ。
「出るって、俺達がステージの上に立って説明をするんですか?」
そんなところで大勢の人に向かって話をするってなると、緊張しそう。
だけど、先生の話はそれだけじゃなかった。
「希望するなら、一曲くらいは演奏できると思うよ。ただ話をするだけより、部のアピールになるんじゃないかな」
「演奏!?」
なんだか、話しをするだけよりも遙かにハードルが上がった気がする。
もちろん、軽音部のパフォーマンスなんだから、演奏したって不思議じゃない。
先生の言う通り、部をアピールするチャンスにもなる。
けど、あまりに急な話だ。
「ど、どうしようか……」
「どうするって、そうだな……」
私と同じで、三島もどうしたらいいかわからず困ってる。
なら、ユウくんはどう?
そう思ってユウくんを見るけど、ユウくんは特に何も言わずに、静かにこの様子を見守っていた。
「答えは今すぐじゃなくていいよ。だけど、明日の朝くらいには決めてほしい」
「は、はい」
先生にそう言われ、私たちは答えを保留にしたまま、職員室を後にした。
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