モテ男でインキュバスな彼は、魅了の力をなくしたい

無月兄

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第2話 異常なまでのモテ男

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 どこの学校にも、女の子から人気のある男子の一人や二人いると思う。それは、このライトリム学院も例外じゃない。

 ただ一つ、他の学校と違うところがあるとするなら、その人気があまりにも凄まじいということだろう。

「ああ、今日もカッコいい」

「この学校に入ってよかった」

「よく見たら後光が差している」

 ただ歩いているだけなのに、それを眺める女子生徒からは次々とそんな言葉が囁かれ、熱い視線が注がれる。

 サラサラとした栗色の髪をなびかせながら颯爽と歩く彼は、舞台役者もかくやと言いたくなるくらいのとても整った顔立ちをしていて、掛けられた黒縁のメガネが、知的な印象を醸し出している。

 エルヴィン=オウマ。私達と同じく今年からこの学校に入学した彼は、その美貌で瞬く間に学校中の女子を虜にしていた。
 隣にいるパティも、そんな彼に魅了された女子の中の一人だった。

「オウマ君、今日もカッコいいな。目の保養だよ」

 彼が教室に入ってきたとたん、すぐさまそっちに目を向けこの調子だ。

「パティも相変わらず、オウマ君のこと好きだね」

 もしそうなら、友人としてその恋を応援してやるべきかもしれない。だけどパティは、それを聞いて微妙な笑みを浮かべた。

「そりゃ、もちろん好きだよ。でも別に付き合いたいとかじゃなくて、眺めるだけの観賞用ってとこかな。いくらなんでも、あの取り巻き達の中に割って入るほど命知らずじゃないからね」

 オウマ君の近くには、いつも大抵女の子の姿があるけれど、特に近くにいるのはいつも決まって同じようなメンバーだ。そしてそのほとんどが、上流貴族の息女達で占められている。
 オウマ君自身も代々続く伯爵家の一人息子だって聞いてるけれど、家柄で言えばそれより上位に位置する子だっていた。

 貴族と平民の差が埋まりつつある昨今でも、やはり上流貴族と言うのは大きなステイタスで、それがそのまま学院内のヒエラルキーを決める要因にもなっている。言い方は悪いかもしれないけど、より強い家柄や立場の子ほど、オウマ君の近くにいられるというシステムが出来上がっているようだった。
 その中に割って入ろうとするなら、確かに並大抵の覚悟じゃできないだろう。

 それにしても。私はそんなオウマ君を見て、前々から疑問に思っていることがあった。

「いくらなんでも、ちょっとモテすぎなんじゃないかな?」
「モテすぎって、オウマ君が? いやいや、だってあんなにカッコいいじゃない」

 驚くパティだけど、実際そう思うんだから仕方ない。
 そりゃもちろん、彼の容姿はさっき説明した通りの麗しさだ。カッコいいかどうかと聞かれたら、間違いなくカッコいい。だけどいくら顔がよくても、それだけじゃモテるのには限度があると思う。

 オウマ君自身が何人もの女の子に積極的にアプローチするような、所謂プレイボーイみたいなタイプなら、まだ分からなくもない。だけどこれだけ女の子に好かれているのとは裏腹に、誰かと付き合ったとか、特別仲がいいなんて話は、不思議なくらいに聞いたことがない。

 今だって、たくさんの女の子に囲まれるという、見る人が見れば大層羨ましがられる状況にも関わらず、その態度はなんだか素っ気なくて、むしろどこか疲れているようにも見えた。

「ガツガツしながら女の子のお尻を追いかけてるより、ずっといいじゃない。それにクールなメガネ男子って、それだけでポイント高いんだよ」
「そう言うものなのかな?」
「そうだよ。私としては、シアンがそれだけ淡白なのが不思議なくらい」

 うーん、確かに他の子達の反応を見ていると、私の方がおかしいのかなって思ってしまう。何しろ生まれてこの方恋なんてしたこと無いし、そんな暇があったら節約術を考えてた方が有意義だって思うくらいだから、ズレていると言われても否定はできない。

「どうせ私は、男子の良さなんて分かりませんよーだ」
「まあまあ。シアンだってそのうちきっと分かる日が来るって」

 拗ねたように言う私をパティがなだめてくれるけど、実際は分からないなら分からないままでも別にいいかと思っていた。男子への憧れや恋なんてなくても、死にはしないしね。
 こう思っている時点で、男の子の良さが分かる日なんて当分来ないんだろうなと、まるで他人事のように思っていた。
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