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第4話 メガネを外した彼
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「ごちそうさま。どうもありがとね」
「いや、どういたしまして」
最後にお茶を飲んでから、お弁当箱をオウマ君に返す。ああ、おいしかった。
だけどありがたいと思う反面、本当によかったのかなと、今ごろになって思ってしまう。
「全部食べちゃったけど、オウマ君はお昼大丈夫なの? それに、さっきはどこか急いでたみたいだけど?」
もしかすると、遅れちゃいけないような大事な用事でもあったんじゃないか。そうだとしたら、ずいぶん悪い事をしたのかもしれない。
「昼食のことなら、購買で適当に何かかって食べるから気にするな。それに急いでたのだって、ただ逃げていただけだから」
「逃げていたって、誰から?」
穏やかでない言葉に首をかしげると、オウマ君は困ったように答えた。
「えっと、その…………女子から」
「女子から?」
意外な答えだ。オウマ君と言えば、誰もが知ってる学校一のモテ男。そんな彼が女の子から逃げるなんて、いったい何があったんだろう。
「もしかして、二股がバレて修羅場になったとか?」
「ならない!」
パッと浮かんだ可能性は、食いぎみなくらい即座に否定されてしまった。
「二股どころか、一人とだってつきあっちゃいないよ。ただ、いつも何人も側に寄ってくるものだから、たまには一人になりたいって思って隠れた。だけど結局見つかって、追いかけてきたから、こっちも急いで逃げ出した。それだけ」
「おぉーっ!」
なんと言うモテ発言。それだけなんて言ってるけれど、聞く人が聞いたら嫉妬の炎を燃やすんじゃないだろうか。とは言え疲れきった顔で話しているのを見ると、本人にしてみれば本当に困っていたのかもしれない。
まあ確かに、いつも周りにあれだけの人がいたら気疲れしてしまいそうだ。
「女の子にモテるってのも大変なんだね」
思わぬところで、モテ男子の意外な一面を見たような気がする。
そんな事を考えていると、オウマ君が唐突に、こんなことを言ってきた。
「なあ……一つ聞きたいんだけど、君、さっきメガネを外した俺と目が合ったよな?」
「そうだっけ?…………ああ、そういえばそうだね」
急によく分からない質問をされて一瞬戸惑う。だけど思い出してみると、ぶつかって起き上がろうとした時、確かにメガネを落としたオウマ君と目が合っていた。
ちなみに落としたメガネは、私がお弁当を食べてる間にオウマ君がとっくに拾って装着済みだ。
「うん、確かに目が合ってたね。で、それがどうかしたの?」
思い出すことはできたけど、どうしてわざわざそんな質問をしてきたのかは謎のままだ。まさか、目が合って恥ずかしかった、なんて事では無いだろう。
「その時、何ともなかったか?」
「何ともって?」
「えっと、何て言うか……急に胸が鳴ったり、体が熱くなったり、そういうのなかった?」
「うーん、特になかったと思うけど」
それよりも、その直後に見たおにぎりの惨劇の方がはるかに衝撃的だったから、大して気にも止めなかった。
って言うか、なんなの。その、目を見たら起こる不思議現象は。呪われてるの?
そう思ったけど、オウマ君の表情は、思いの外真剣だった。
「じゃあ、もう一回見てみようか。ちょっとメガネ貸して」
「えっ、ちょっと!?」
返事を聞くより先に、オウマ君の顔からメガネを掴んでヒョイと外す。もし本当にそんな不思議現象が起こるなら、一度体験してみるのもいいだろう。再び裸眼になった彼と目を合わせ、これでもかってくらい見る。穴が空くくらい、ガン見する。
だけど…………
「胸は平気だし熱もない。やっぱり何ともないよ」
オウマ君があまりに真面目に話すから、もしかしたら何が起こるんじゃないかとちょっぴり期待していたけれど、現実はこんなもんだよね。たかだか目を合わせただけで、そんな体調不良が起こるわけがない。
メガネを外したオウマ君の姿も、裸眼状態が多少新鮮ではあるものの、別に目の形が『3』になってる訳でもなく、特別驚くような事はなかった。
「何ともない? 本当に?」
「うん」
私の言葉を聞いてもオウマ君は半信半疑なようで、しきりに首を捻っている。だけど本当に何ともないんだから、これしか言いようがない。
「何があったか知らないけど、それってそんなに大事な事なの?」
「大事って言えば大事だけど……まあ、何ともないならそれでいいか。悪かったな、変な事聞いて」
本当に変な事だよ。なんだかモヤモヤするけど、それ以上話を続ける時間はなかった。いつの間にか、昼休みが残り僅かになっていたからだ。
「ねえ、購買で何か買うなら、そろそろ行った方がいいんじゃない?」
「そうだな。急がないと」
すぐさまお弁当箱を持って、立ち去ろうとするオウマ君。だけどその直後、一度だけ足を止めて振り返った。
「君、俺と同じクラスだったよな。名前、何て言うんだ?」
「シアン=アルスターだよ。お弁当ありがとね」
「俺の方こそ、ぶつかってごめんな」
お互い改めてお礼と謝罪を済ませると、オウマ君は今度こそ立ち去っていった。
これが、私とオウマ君との間にできた初めての接点。今までは、ただのクラスメイトで、学校一のモテ男。そんな印象しかなかった彼のカテゴリに、新しい認識が追加された。
とっても美味しいお弁当をくれた人という認識が。
「いや、どういたしまして」
最後にお茶を飲んでから、お弁当箱をオウマ君に返す。ああ、おいしかった。
だけどありがたいと思う反面、本当によかったのかなと、今ごろになって思ってしまう。
「全部食べちゃったけど、オウマ君はお昼大丈夫なの? それに、さっきはどこか急いでたみたいだけど?」
もしかすると、遅れちゃいけないような大事な用事でもあったんじゃないか。そうだとしたら、ずいぶん悪い事をしたのかもしれない。
「昼食のことなら、購買で適当に何かかって食べるから気にするな。それに急いでたのだって、ただ逃げていただけだから」
「逃げていたって、誰から?」
穏やかでない言葉に首をかしげると、オウマ君は困ったように答えた。
「えっと、その…………女子から」
「女子から?」
意外な答えだ。オウマ君と言えば、誰もが知ってる学校一のモテ男。そんな彼が女の子から逃げるなんて、いったい何があったんだろう。
「もしかして、二股がバレて修羅場になったとか?」
「ならない!」
パッと浮かんだ可能性は、食いぎみなくらい即座に否定されてしまった。
「二股どころか、一人とだってつきあっちゃいないよ。ただ、いつも何人も側に寄ってくるものだから、たまには一人になりたいって思って隠れた。だけど結局見つかって、追いかけてきたから、こっちも急いで逃げ出した。それだけ」
「おぉーっ!」
なんと言うモテ発言。それだけなんて言ってるけれど、聞く人が聞いたら嫉妬の炎を燃やすんじゃないだろうか。とは言え疲れきった顔で話しているのを見ると、本人にしてみれば本当に困っていたのかもしれない。
まあ確かに、いつも周りにあれだけの人がいたら気疲れしてしまいそうだ。
「女の子にモテるってのも大変なんだね」
思わぬところで、モテ男子の意外な一面を見たような気がする。
そんな事を考えていると、オウマ君が唐突に、こんなことを言ってきた。
「なあ……一つ聞きたいんだけど、君、さっきメガネを外した俺と目が合ったよな?」
「そうだっけ?…………ああ、そういえばそうだね」
急によく分からない質問をされて一瞬戸惑う。だけど思い出してみると、ぶつかって起き上がろうとした時、確かにメガネを落としたオウマ君と目が合っていた。
ちなみに落としたメガネは、私がお弁当を食べてる間にオウマ君がとっくに拾って装着済みだ。
「うん、確かに目が合ってたね。で、それがどうかしたの?」
思い出すことはできたけど、どうしてわざわざそんな質問をしてきたのかは謎のままだ。まさか、目が合って恥ずかしかった、なんて事では無いだろう。
「その時、何ともなかったか?」
「何ともって?」
「えっと、何て言うか……急に胸が鳴ったり、体が熱くなったり、そういうのなかった?」
「うーん、特になかったと思うけど」
それよりも、その直後に見たおにぎりの惨劇の方がはるかに衝撃的だったから、大して気にも止めなかった。
って言うか、なんなの。その、目を見たら起こる不思議現象は。呪われてるの?
そう思ったけど、オウマ君の表情は、思いの外真剣だった。
「じゃあ、もう一回見てみようか。ちょっとメガネ貸して」
「えっ、ちょっと!?」
返事を聞くより先に、オウマ君の顔からメガネを掴んでヒョイと外す。もし本当にそんな不思議現象が起こるなら、一度体験してみるのもいいだろう。再び裸眼になった彼と目を合わせ、これでもかってくらい見る。穴が空くくらい、ガン見する。
だけど…………
「胸は平気だし熱もない。やっぱり何ともないよ」
オウマ君があまりに真面目に話すから、もしかしたら何が起こるんじゃないかとちょっぴり期待していたけれど、現実はこんなもんだよね。たかだか目を合わせただけで、そんな体調不良が起こるわけがない。
メガネを外したオウマ君の姿も、裸眼状態が多少新鮮ではあるものの、別に目の形が『3』になってる訳でもなく、特別驚くような事はなかった。
「何ともない? 本当に?」
「うん」
私の言葉を聞いてもオウマ君は半信半疑なようで、しきりに首を捻っている。だけど本当に何ともないんだから、これしか言いようがない。
「何があったか知らないけど、それってそんなに大事な事なの?」
「大事って言えば大事だけど……まあ、何ともないならそれでいいか。悪かったな、変な事聞いて」
本当に変な事だよ。なんだかモヤモヤするけど、それ以上話を続ける時間はなかった。いつの間にか、昼休みが残り僅かになっていたからだ。
「ねえ、購買で何か買うなら、そろそろ行った方がいいんじゃない?」
「そうだな。急がないと」
すぐさまお弁当箱を持って、立ち去ろうとするオウマ君。だけどその直後、一度だけ足を止めて振り返った。
「君、俺と同じクラスだったよな。名前、何て言うんだ?」
「シアン=アルスターだよ。お弁当ありがとね」
「俺の方こそ、ぶつかってごめんな」
お互い改めてお礼と謝罪を済ませると、オウマ君は今度こそ立ち去っていった。
これが、私とオウマ君との間にできた初めての接点。今までは、ただのクラスメイトで、学校一のモテ男。そんな印象しかなかった彼のカテゴリに、新しい認識が追加された。
とっても美味しいお弁当をくれた人という認識が。
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