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推しから下僕へ
憧れの人
しおりを挟む公立だが、都内でも有数の進学校であるうちの学校は、自主性を重んじる校風で、やるべきことをやっていれば髪型や服装をうるさく注意されることはない。
高校に入り髪の色を明るくし両耳にピアスをつけるようになった俺は、見た目こそ周りから浮いているが、中身は相変わらず内向的で、自分から人に話しかける勇気はなかった。
クラス委員長の責任感からか、あるいは先生に頼まれていたのか。そんな俺にも川嶋は気さくに声をかけてくれて、体育で二人組になるときは毎回誘ってくれた。
俺にだけ特別に優しいわけじゃなく、誰に対してもそうだ。重そうな物を持っている人がいたらさりげなく手を貸すし、女子の日直が黒板の高いところに手が届かなければ、一番に気づいて消すのを手伝ってあげる。
そういう彼の優しい一面を目にするたびに好感が募っていき、修学旅行の班決めの頃には、自分は彼のことが好きなのだとはっきりと自覚していた。
彼は背が高く顔も整っていて成績優秀な上に、運動神経も良い。
当然、学年中、ときに学年の垣根を越えて女子からの人気は高いし、俺の好意も、アイドルや芸能人に憧れる感覚に近い。だから、修学旅行中の恋バナで彼に他校に彼女がいることを知ったときも、ショックを受けるよりも「そりゃそうだよな」と納得する気持ちのほうが大きかった。中学の頃から付き合っていて、初体験はまだだという誠実さに、彼のことをもっと好きになった。
一生告げるつもりのない気持ちだとわかっていたから、余計に欲が出てしまったのかもしれない。
修学旅行最終日の夜は、周りから寝息が聞こえ始めてからも、俺一人がなかなか寝付けずにいた。
身体はそこまで疲れていないが、慣れない集団行動のせいで気疲れは日に日に積もっている。それでも、普段は2時すぎまで起きているからか、一向に眠気は襲ってこなかった。
スマホの光が漏れないよう頭から布団をかぶり、暇つぶしに班のメッセージグループに送られてきた写真を眺めていた。
旅行中に撮った互いの写真は、このアプリを使って共有することになっている。おかげで、俺のスマホにもこの三日間で随分と写真が増えた。川嶋の写真もたくさんあって、そのほとんどが、クラスの愛されキャラである朝倉怜央が撮ったものだった。
小柄で丸っこい二重の眼が小動物みたいに愛らしい彼は、私服で長身の川嶋と二人でいると、まるでカップルにも見えてしまう。性格も明るくて人懐っこく、甘え上手だ。教室では常に優等生然として落ち着いている川嶋も、朝倉にスマホを向けられれば、高校生らしく笑顔にピースサインまでしていた。
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