仮面王子は下僕志願

灰鷹

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約束

夏休みの計画

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「やっぱ二年ともなるとかなりレベル上がってくるよなー。数学とか、『え? こんなん授業で習った?』って感じだったわ」

「そんなこと言って、今回もクラスのトップテンに入るんじゃないの?」

「いや、さすがに今回は無理。試験前に夏休みの計画立て始めたら、そっちにハマっちゃってさ」

 カラオケに向かう道すがら、朝倉と、女子のグループのリーダー格である小松原美咲との間で会話が弾んでいた。
 
 七月に入り、猛暑日が続いている。現在、午後3時を過ぎたばかり。試験日のためいつもより下校が早いのは嬉しいが、一日で最も気温が上がる時間帯の熱気と陽射しは、試験勉強で寝不足の体にはこたえた。息をし、足を動かすのがやっとで、ひっきりなしに額に汗が滲み、頭が朦朧としてくる。
 女子たちは全員日傘を差している。あれはもう、美容じゃなく命を守るための道具だと痛感した。

 そんな暑さの中でも、歩きながら爽やかな笑顔で談笑できる二人を、心底尊敬する。
 朝倉は小顔で小動物みたいに可愛らしい顔立ちのせいで、写真を撮るとき、女子から「朝倉君の隣には並びたくない」と冗談を言われることもある。身長も男子の中では小柄なほうだが、明るくノリのいい性格で、女子からの人気は高い。成績も優秀で、授業中に当てられても淀みなく答えるし、ときには、指されてもいないのに、教師にユーモア混じりのツッコミを入れて教室を沸かせる。授業中も人と話すのも、いつも緊張しておどおどしてしまう俺からすると、ただただ眩しい存在だ。

 表向き他校に彼女がいる設定の川嶋と違い、朝倉は「好きな人ができても、仲のいい友達で終わっちゃう」ことが多いそうで、今は彼女がいないらしい。修学旅行を境に小松原とは急激に親密度が増していて、「実際のところ、どうなの?」と取り巻きたちに冷やかされていることもあった。

 朝倉と小松原が親しくしているところなんて、川嶋は見たくないだろう。
 歩幅を広めてさりげなく川嶋に並び、横顔をチラリと窺うと、目が合った。「なに?」と視線で問われるが、やはりその顔はどことなく不機嫌そうだ。
 川嶋への同情からか嫉妬からか。チクリと胸が痛んだ理由は、考えないことにした。

 気を逸らすために何か話しかけようか迷ったが、みんなの前で俺に話しかけられるのは、もしかして迷惑だろうかという思いが、待ったをかける。教室でも、カラオケに誘われたとき、朝倉に呼ばれて俺が会話に加わったら、ちょっと嫌そうな顔をしていた。

 そんなことを考えて悶々としていると、前を歩いていた朝倉が振り返った。

「昴陽。別荘の件、大丈夫だよね? 近くで乗馬ができるところ探せたけど、予約が必要だから。早く日程決めて、予約しちゃおうよ」

「別荘……」

 何かを思い出すように川嶋が呟き、はっとした顔で俺を見る。表情からは、その話を俺に聞かれたくなかったことが見て取れた。



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