仮面王子は下僕志願

灰鷹

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約束

日置啓太郎と不愉快な仲間たち。

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 9時を過ぎて客足がまばらになってきてからは、レジを堀に任せて俺は掃除や品出しに回り、客が並び始めたらまたレジに戻るのを繰り返していた。

 バイトで勉強時間を確保できないのは悩ましいが、勉強のことを一旦忘れ、ただ体と手だけ動かせばよいこの時間は、嫌いではない。それに、この時期は家にいても、エアコン代を節約するために我慢できるぎりぎりの温度設定にしているので、バイト中のほうが快適に過ごせる。
 バイト終了の10時が迫り、あともう少しであの蒸し風呂みたいな部屋に帰るのかとげんなりした気分で弁当の品出しをしていると、背後から声がした。

「試験日までバイトか。貧乏人は大変だな」

 振り返ると、制服姿の男子高校生が四人。俺を囲み、嘲笑を浮かべて見下ろしていた。
 全員、中学の同級生で、声をかけてきた男だけが俺と同じ高校だ。
 日置啓太郎ひおきけいたろう。と不愉快な仲間たち。
 日置は高校の廊下ですれ違っても、忌々しそうに顔を背けるだけで、声をかけてくることはない。声をかけてくるのは、決まって学校の外で、今日のように昔ながらの取り巻きがいるときだけだ。

「お前、最近、昼休みに川嶋に勉強教わってんだって? 予備校行けねーからってクラス委員長に泣きついてんの? いったい何を見返りにして川嶋を手なずけたんだよ」

「貧乏人だから金はないよな? もしかして体とか? え? でも、川嶋ってやつ、男なんだろ?」

「いや、いくら女にモテなくても、こいつはねーわー」

 日置の揶揄に、周りの奴らが同調する。
 中学の頃、俺と日置は校内の定期テストで学年1、2位を争っていた。
 塾にも行っていない俺が成績上位なのが気に食わなかったらしく、その頃から何かと嫌がらせをされていた。

 中学の定期テストは、公立高校の受験に照準を合わせてあり、教科書の範囲からしか出ない。ちゃんと授業を理解していれば、ミスをしない限り満点を取れるテストだ。
 こうして未だに俺に嫌がらせをしてくるところを見るに、おそらく日置も俺と同様に、高校に入ってからは中学の頃のようにはテストでいい点を取れていないのだろう。
 うちの高校は授業も試験も、難関大と言われる国公立の二次試験に受かることを目標に、教科書を越える知識や応用を求めている。家庭教師や塾通いをしていても、試験で高得点を取れる生徒は限られている。

 どうせ、日置も成績は俺と目くそ鼻くそといったところだ。家庭教師や塾に金をかけているだけ、向こうがコスパは悪い。そう思えば、貧乏や母親のことを揶揄されても、中学のときほど惨めな気持ちにはならなくなった。



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