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約束
一難去って……
しおりを挟む「いらっしゃいませ」
冷ややかにそれだけ返し、品出しを再開すると、今度は逆のほうから女性の声が飛んできた。
「ちょっと、あんたたち、未だにつるんでんの? どうせ性格悪いから高校で友達できないんでしょ」
バイトの相方である堀だった。客がはけたため、見かねて声をかけてくれたようだ。
堀の付き合っている相手が中学の先輩で、いわゆる「ヤンキー」だったからか、彼女に対しては日置たちも尻込みする。
「こいつ、高校に入ってもボッチだから、気にかけてやってんだよ」
「あんたたちが心配しなくても大丈夫よ。なべっちにはちゃんと優秀な執事が……」
「ちょっと、堀!」
俺は慌てて腰を上げ、堀の口を手で塞いだ。
堀には客がいない間の暇潰しに、つい川嶋のことを差し障りのない範囲で話してしまっていた。しかし、同じ高校に通う日置に、川嶋を執事扱いしていることがバレるのはマズい。学校でその話をされたら、俺は川嶋ファンの女子たちから袋叩きにされそうな気がする。
「もうすぐ店長が来るから、仕事の邪魔をするようなら店長に相談するけど、いい?」
商品を買う気が無く、嫌がらせ目的なら帰ってほしい。あからさまに迷惑そうな顔を向けて無言でじっと見つめると、忌々しげに舌打ちし、日置たちは店を出て行く。
入れ違いに、日置と同じ制服を着た長身の学生が入ってきた。
自動ドアが開いた瞬間、その人物に顔を向けた日置は、びくっと肩を震わせ驚くそぶりを見せた。俺も、堀の口を塞いでいた手を離し、慌てて彼女の背後に身を屈めた。
「ヤバッ。ちょーイケメンじゃん!」
客の顔を見たらしい堀が、興奮した声を上げる。
「あの……、俺、ちょっと飲み物補充してくる」
「何で? お弁当、まだ出し終わってないじゃん。……いらっしゃいませー」
堀は急に挙動不審になった俺に戸惑いながらも、入って来た客に向かって、普段の何倍も鼻にかかった黄色い声で挨拶した。
「え? なべっち、ちょっと?」
俺は無理やり彼女の背中を押し、その背後に隠れてレジ裏を目指す。――が、彼女がレジ前のコーナーで足を止めたため、それ以上は進めなくなった。
「渡辺?」
堀の向こうから聞こえてきたのは、驚くというより、どこかホッとした響きの声だった。
こっちに来るな、と念を送っていた人物は、入り口から、正面奥の壁際にある弁当コーナーへと直進してきたらしい。
「え? なに? もしかして、なべっちの知り合い? そう言えば、制服、日向台だよね?」
来店したイケメンの客は、川嶋だった。
夕方、少し気まずい別れ方をしたから、咄嗟に堀を盾にして隠れてしまったが、気づかれてしまった以上、知らないフリもできない。俺は仕方なしに、堀の背中からそろそろと顔を上げた。
さらに新たな客が入店してきて、堀はニヤニヤと意味深な笑みを浮かべ、「レジは私に任せて」と言って離れて行った。
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