仮面王子は下僕志願

灰鷹

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約束

オカンvs執事(下僕?)

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 弁当を棚に並べてレジに戻ると、ちょうど買い物かごに商品を入れ終えた川嶋が会計に来た。パンツと靴下に歯ブラシ、それから、あとは全部お菓子だった。スナック菓子やチョコレート系のお菓子もある。

「本当に払ってもらっていいの?」

「俺が来いって言ったんだから、当然だろ」

 バーコードを読み込んでいる横顔に、煩い視線を感じる。

「あの、もしかして、執事さんですよね?」

 ついに我慢できなくなったようで、他に客がいないのをいいことに、堀が話しかけてきた。

 ――余計なこと言うなよ! 

 そんな脅しで睨みつけるが、いかんせん、前髪が邪魔でたぶん向こうからはちゃんと見えていない。

「あ、私、なべっちの中学の同級生で、堀杏樹って言います。なべっちから、執事みたいなクラス委員長から最近勉強を教えてもらってるって聞いてたから、そうかなと思って」

「執事じゃなく、下僕です」

 ――お前はお前で、真顔で何を言っているんだ!

 今度は目の前の男に、くわっと目を剥いて見せた。効果がないことはわかっているのだが。

「あははは。ヤバッ」

 何がおかしいのかわからないが、堀一人がやたらと楽しそうだ。

「俺、別に余計なことは言ってないからね。クラス委員長が面倒見がよくて、執事みたいに世話を焼いてくるって話しただけで」

 そうなった理由について、彼が同級生の男子にキスをしようとしていたのを隠し撮りしたことまで話していると思われたくなくて、慌てて言い訳する。
 そんな俺を尻目に、堀が急にかしこまった。

「なべっち、仲良くなるまでは無口で無愛想だけど、本当にいい子なんです。ヤバそうな客が来たときは、私をバックヤードに避難させて自分がレジに出てくれるし。酔っ払いが店の前でゲロ吐いたときも、勤務終わってたのに掃除して帰っていくし。勉強できるのに、私みたいにできない人間を馬鹿にしたりしない。大好きで、大切な友達なんです。だから、なべっちのこと、これからもよろしくお願いします!」

 堀がポニーテールを揺らして、ぴょこんと頭を下げる。
 思ったことはその場で何でもぽんぽん口にしそうな彼女が、まさかそんなふうに思ってくれていたなんて。
 意外だったけど、ちょっとじんときた。

「何で急にオカンみたいになってんの?」

 おどけたように言って、堀の背中をぽんぽんと叩き、頭を上げさせた。
 気持ちは嬉しいしありがたい。でも、これ以上は身に余る。川嶋には、ただでさえ何もお礼をできずに、もらってばかりなのに。

「川嶋には、既にめちゃくちゃよろしくしてもらってるから」

 川嶋がどんな表情をしているか盗み見る勇気はなく、堀に照れの混じる笑顔を向ける。直後、「お疲れー」という声とともにレジの奥から店長が現れ、俺たちのこの日の勤務は終了した。



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