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SOS
絶望的
しおりを挟む経営しているスナックは賃貸だから、仕事に行かなければ収入がない上に賃料は引かれる。今は俺のほうが力があるから暴力を振るわれることはないが、酒を隠して仕事に行けと言っても泣いて愚痴を言われるばかりなので、最初の数日で説得は諦めた。
かといって、酒瓶やつまみの容器を散らかし、ダイニングでうとうとしている母を見れば、小言を言わずにはいられない。文句を言いながら母親を寝室に連れて行き、散らかったテーブルをざっと片づけてから家を出るせいで、毎朝、登校時間が遅刻ギリギリになっていた。
これまでも、男にフラれて酒浸りになることはあったが、一週間ほどで仕事には復帰していた。
今回はそれが長引いている。区役所に相談窓口があるようなので行ってみようかと思いながらも、学校を休まなければいけないため、まだそこまでの決心ができずにいた。
もし、入院が必要なレベルだったらと思うと、絶望的な気持ちになる。俺のバイト代で入院費や生活費を払っていかねばならず、高校の授業料を払うことすら危うい状況だった。
学校は文化祭ムードで盛り上がっているが、到底そんな気分になれず、これまで以上にクラスメイトたちとの間に距離を感じていた。でも、文化祭で朝倉が川嶋に告白したあとのことを想像する気持ちの余裕すらないのは、不幸中の幸いと言えるのかもしれない。
「あのさ……。堀の彼氏さんのお父さんって……、今どうしてるか知ってる?」
客が捌けたタイミングで、堀に尋ねた。
堀の彼氏の父親は飲んだくれで、妻に暴力を振るっていたせいで母親は愛想を尽かして家を出たと聞いたことがあるのを思い出したのだ。
「今はちゃんと働いてるみたいよ。アルコール依存症の更生施設に入って、そこからはお酒をやめられたみたい。篤もたまに、様子を見に行ってる」
篤というのは、堀の彼氏だ。
ちゃんと治療をすれば治るという話を聞いて、少しだけ気持ちが軽くなった。
「でも、急になんで? もしかしてお母さん? 何か困ってるなら、篤に来てもらおうか?」
「今はまだ大丈夫そう。もしかしたらそのうち、相談させてもらうかも」
「あんまり一人で抱え込まないでよ」
泣きそうに眉根を寄せた堀に、「ありがとう」と笑顔を返した。
バイトが終わりスマホを見ると、知らない番号から着信が入っていた。
何だか嫌な予感がし、留守番電話を確認する。
最初に告げられたのは病院名で、母が救急搬送されているため、折り返し電話してほしいという連絡だった。
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