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3章 死神が誘う遊園地
瑠璃、幼少期 11
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ガレージにある車は彰のものだろう。車の重要性というものを私は知らない。だから、少しくらい外装に一線の傷を引いても大したことじゃないと思えた。
停めてあった車は白ワゴン車で一度も洗車されていない汚さがあった。私が想定していた車は父の黒い外車でいつもピカピカに磨かれているものだ。触れると父が怒鳴ってあたしを退ける。
なんだかわからないが、車とは自分の娘よりも大事なものなのだろう。
それとは対照的にこの汚いワゴン車がは大事にされているとは言い難い。悪戯をして彰を泣かせてやろうとしていた私は気落ちして、タイヤを蹴る。
私の意識はワゴン車の片面に向けられた。スライドドアが開いていた。
外装が駄目なら中はどうだろうか。彰が閉め忘れたスライドドアの中身を覗く。
外装が泥と埃で汚くなっているのなら、その中もそれと同等に埃っぽい空気が充満している。質素な車内には大きな鞄が乱雑に置かれていた。
ファスナーは中途半端な位置で止められていて、半開きになった口から紙の束がはみ出ている。
身を乗り出して、上半身を車のシートに乗せる。紙の束を握り締めた。ざらついた指触り、細かく印字された数字と絵。それは日本の偉人を描いたものであった。名前は確か、福沢諭吉。
10歳の子供が触れる機会すらない一万円の紙幣。黒い鞄は横幅50㎝ほどのおおきさで旅行用で使われる丈夫なもの。その鞄に一万円の札束が隙間なくぎっしりと詰まっている。
高級車とは言えない車に謎の札束。
この大金はあの男が稼いで得たもの?
真っ先に浮かんだ疑問はそれであり、答えは「NO」だ。こんな車に安物のスーツを着込んだ男だ。健全に働いて得ているのならもっと良い品を買えている。何よりも鞄に大金を詰めて移動する一般人はいない。
母はこのことを知っているの?母の友人と名乗る男が怪しげな大金を持っていることを。
大金を目の当たりしたあたしは緊張により身体が縛り付けられていた。
その最中、怒声が轟く。同時にあたしの襟首を後ろから掴み、引っ張り出される。
「このガキ!」
彰がキッチンから戻ってきた。
車内から投げ出された腰はコンクリートの床を打ち付けた。あたしは驚き、彰を見上げる。
彰は車内のシートに落ちたひと束の札を凝視すると次に私を見下ろす。その瞳はパニックそのものを表していた。
眉間に皺を寄せて、抜き出された八重歯が奇声を上げる。興奮状態の彰は車の座席から刃渡り15㎝のサバイバルナイフを取り出した。
包丁と同じサイズのものが鞘から抜かれ、あたしは身体が凍る。母の切迫した声が聞こえたのはその時だった。
「瑠璃!」
母は旅行用の大きな鞄を落とすと尻餅をついたあたしに駆け寄り、抱きしめた。
停めてあった車は白ワゴン車で一度も洗車されていない汚さがあった。私が想定していた車は父の黒い外車でいつもピカピカに磨かれているものだ。触れると父が怒鳴ってあたしを退ける。
なんだかわからないが、車とは自分の娘よりも大事なものなのだろう。
それとは対照的にこの汚いワゴン車がは大事にされているとは言い難い。悪戯をして彰を泣かせてやろうとしていた私は気落ちして、タイヤを蹴る。
私の意識はワゴン車の片面に向けられた。スライドドアが開いていた。
外装が駄目なら中はどうだろうか。彰が閉め忘れたスライドドアの中身を覗く。
外装が泥と埃で汚くなっているのなら、その中もそれと同等に埃っぽい空気が充満している。質素な車内には大きな鞄が乱雑に置かれていた。
ファスナーは中途半端な位置で止められていて、半開きになった口から紙の束がはみ出ている。
身を乗り出して、上半身を車のシートに乗せる。紙の束を握り締めた。ざらついた指触り、細かく印字された数字と絵。それは日本の偉人を描いたものであった。名前は確か、福沢諭吉。
10歳の子供が触れる機会すらない一万円の紙幣。黒い鞄は横幅50㎝ほどのおおきさで旅行用で使われる丈夫なもの。その鞄に一万円の札束が隙間なくぎっしりと詰まっている。
高級車とは言えない車に謎の札束。
この大金はあの男が稼いで得たもの?
真っ先に浮かんだ疑問はそれであり、答えは「NO」だ。こんな車に安物のスーツを着込んだ男だ。健全に働いて得ているのならもっと良い品を買えている。何よりも鞄に大金を詰めて移動する一般人はいない。
母はこのことを知っているの?母の友人と名乗る男が怪しげな大金を持っていることを。
大金を目の当たりしたあたしは緊張により身体が縛り付けられていた。
その最中、怒声が轟く。同時にあたしの襟首を後ろから掴み、引っ張り出される。
「このガキ!」
彰がキッチンから戻ってきた。
車内から投げ出された腰はコンクリートの床を打ち付けた。あたしは驚き、彰を見上げる。
彰は車内のシートに落ちたひと束の札を凝視すると次に私を見下ろす。その瞳はパニックそのものを表していた。
眉間に皺を寄せて、抜き出された八重歯が奇声を上げる。興奮状態の彰は車の座席から刃渡り15㎝のサバイバルナイフを取り出した。
包丁と同じサイズのものが鞘から抜かれ、あたしは身体が凍る。母の切迫した声が聞こえたのはその時だった。
「瑠璃!」
母は旅行用の大きな鞄を落とすと尻餅をついたあたしに駆け寄り、抱きしめた。
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