284 / 644
3章 死神が誘う遊園地
遊園地 12
しおりを挟む
命令通りにダンサーと放浪者は囲んだ輪を縮め、そしてパレードのカーに誘導しようとする。全員が同じ笑顔だから追い詰められた精神がさらに圧迫される。
「なんなのよ!夢なら覚めてよ!帰してよ!」
笑顔と拍手に囲まれ、迫る人の壁にタカコは冷静さを失っていた。
狂気から脱出しようと人の壁の隙間から逃げようとしてもキャストはタカコの腕を絡ませて動きを封じる。「嫌だ」「帰して」と叫んでもあたしたちを祝う拍手はそれを聞き入れない。
そんな彼女にミツハはもう一度落ち着かせようと試みる。穏やかにタカコの両肩を掴んで聞かせる。
「帰る必要なんてないよ。ずっと高校生でいられるのよ?こんな幸せある?」
それは他人の慰める言葉ではなく、傲慢な幸福の押しつけだった。キャストと同じ笑顔でミツハは語る。
「言ってたじゃない。高校時代が1番楽しかったって。楽しい思い出がまた現実になるんだよ」
「あんたと一緒にするな!」
ミツハの押しつけをタカコは拒絶する。
「私にはキャリアもあって!婚約もしてるのよ!鬱で会社辞めたミツハとは違う!」
混乱から生まれた暴言はミツハを傷つけた。
「なんで?なんでよ!彼氏の愚痴ばかり言ってたじゃん!仕事も休みたいって!高校が1番楽しかったって!裏切らないで!タカコだけは私を裏切らないで!」
必死になって縋るミツハにもタカコは首を振って拒絶を繰り返す。
そうしている間にも拍手喝采の輪は迫り、あたしたちは華やかなパレードへと追い込む。
「なぁ、瑠璃」
光弥が余裕のない様子であたしの袖を引っ張る。白鋏で逃げようと、その言動は示していた。
じりじりと迫る狂人たちにハクは牙を剥き出して今にも襲って行きそう。あたしはハクの背中を撫でて爆発しそうな恐怖心を宥める。
「逃げ場はないわよ」
キャストがひと声あげただけでマネキンと向き合うばかりの放浪者がこちらを注視して、号令すれば一斉に動く。
あたしたちが辿り着いた夢園という楽園は監視ばかりの世界だ。洗脳が解けた者から捕縛されて、逃げられたとしても数百の目が見張っている。端末のSNSも監視システムのひとつ。
「目覚められないのか?せめて、彼女だけでも」
悪夢から覚める案を提示する。
「生憎、夢の中で他人を起こすやり方を習得してないの」
白鋏・白糸があるからといってなんでもできると勘違いしないでほしいわね。
狂った笑顔と拍手に追い詰められてあたしたちは華やかなカーに乗せられる。
ポップなデザインで構築されたその中はポップとは言い難い。もちろん、そこに閉じ込められたあたしもポップな気分にはなれない。
屋根は外の光を遮り、檻の中は影が作られる。明るい色彩のパレードなのに、ここだけが遊園地の裏側を表現したかのように暗い。
そして、天井には無機質な生物のように、細く長いパイプが一面に張って蠢いている。機械化した無数のミミズみたいで気持ち悪い。
檻の暗闇に押し込まれると抵抗する間もなく、機械ミミズが天井から離れ、触手の動きで腕、脚に絡まる。けれど、機械ミミズはあたしとタカコには触れようとしなかった。機械ミミズが束縛したのはカンダタ、光弥、ミツハだった。
「Let's enjoy!」
マイクを持ったキャストの号令。それを合図にパレードは進み出す。楽しくて愉快な音楽が流れ出す。
音楽に合わせてダンサーが踊り狂って、塔のオブジェから姫が手を振る。シャボン玉と紙吹雪を散らしてキャッスルタウンの大通りを旋回する。
パレードの歌と音楽に魅かれた人々がペンライトを振るう。同じ笑顔を張り付けて同じタイミングでペンライトを振る。
「否定しないで私を否定しないで」
現実からも夢からも、打ちのめされたミツハは今もタカコに縋ろうとする。
そんな彼女の悲哀を聞いた機械ミミズは先端から注射針を生やし、尖った先から謎の液体が垂れる。
「いやあ」
はたから眺めていたタカコは甲高い声を上げて今すぐにでも檻から脱出しようとカラフルな鉄格子に触れる。瞬間、カラフルな鉄格子から可愛くない電撃が放たれた。
「なんなのよ!夢なら覚めてよ!帰してよ!」
笑顔と拍手に囲まれ、迫る人の壁にタカコは冷静さを失っていた。
狂気から脱出しようと人の壁の隙間から逃げようとしてもキャストはタカコの腕を絡ませて動きを封じる。「嫌だ」「帰して」と叫んでもあたしたちを祝う拍手はそれを聞き入れない。
そんな彼女にミツハはもう一度落ち着かせようと試みる。穏やかにタカコの両肩を掴んで聞かせる。
「帰る必要なんてないよ。ずっと高校生でいられるのよ?こんな幸せある?」
それは他人の慰める言葉ではなく、傲慢な幸福の押しつけだった。キャストと同じ笑顔でミツハは語る。
「言ってたじゃない。高校時代が1番楽しかったって。楽しい思い出がまた現実になるんだよ」
「あんたと一緒にするな!」
ミツハの押しつけをタカコは拒絶する。
「私にはキャリアもあって!婚約もしてるのよ!鬱で会社辞めたミツハとは違う!」
混乱から生まれた暴言はミツハを傷つけた。
「なんで?なんでよ!彼氏の愚痴ばかり言ってたじゃん!仕事も休みたいって!高校が1番楽しかったって!裏切らないで!タカコだけは私を裏切らないで!」
必死になって縋るミツハにもタカコは首を振って拒絶を繰り返す。
そうしている間にも拍手喝采の輪は迫り、あたしたちは華やかなパレードへと追い込む。
「なぁ、瑠璃」
光弥が余裕のない様子であたしの袖を引っ張る。白鋏で逃げようと、その言動は示していた。
じりじりと迫る狂人たちにハクは牙を剥き出して今にも襲って行きそう。あたしはハクの背中を撫でて爆発しそうな恐怖心を宥める。
「逃げ場はないわよ」
キャストがひと声あげただけでマネキンと向き合うばかりの放浪者がこちらを注視して、号令すれば一斉に動く。
あたしたちが辿り着いた夢園という楽園は監視ばかりの世界だ。洗脳が解けた者から捕縛されて、逃げられたとしても数百の目が見張っている。端末のSNSも監視システムのひとつ。
「目覚められないのか?せめて、彼女だけでも」
悪夢から覚める案を提示する。
「生憎、夢の中で他人を起こすやり方を習得してないの」
白鋏・白糸があるからといってなんでもできると勘違いしないでほしいわね。
狂った笑顔と拍手に追い詰められてあたしたちは華やかなカーに乗せられる。
ポップなデザインで構築されたその中はポップとは言い難い。もちろん、そこに閉じ込められたあたしもポップな気分にはなれない。
屋根は外の光を遮り、檻の中は影が作られる。明るい色彩のパレードなのに、ここだけが遊園地の裏側を表現したかのように暗い。
そして、天井には無機質な生物のように、細く長いパイプが一面に張って蠢いている。機械化した無数のミミズみたいで気持ち悪い。
檻の暗闇に押し込まれると抵抗する間もなく、機械ミミズが天井から離れ、触手の動きで腕、脚に絡まる。けれど、機械ミミズはあたしとタカコには触れようとしなかった。機械ミミズが束縛したのはカンダタ、光弥、ミツハだった。
「Let's enjoy!」
マイクを持ったキャストの号令。それを合図にパレードは進み出す。楽しくて愉快な音楽が流れ出す。
音楽に合わせてダンサーが踊り狂って、塔のオブジェから姫が手を振る。シャボン玉と紙吹雪を散らしてキャッスルタウンの大通りを旋回する。
パレードの歌と音楽に魅かれた人々がペンライトを振るう。同じ笑顔を張り付けて同じタイミングでペンライトを振る。
「否定しないで私を否定しないで」
現実からも夢からも、打ちのめされたミツハは今もタカコに縋ろうとする。
そんな彼女の悲哀を聞いた機械ミミズは先端から注射針を生やし、尖った先から謎の液体が垂れる。
「いやあ」
はたから眺めていたタカコは甲高い声を上げて今すぐにでも檻から脱出しようとカラフルな鉄格子に触れる。瞬間、カラフルな鉄格子から可愛くない電撃が放たれた。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。
亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。
だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。
婚約破棄をされたアニエル。
だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。
ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。
その相手とはレオニードヴァイオルード。
好青年で素敵な男性だ。
婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。
一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。
元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる