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4章 闇底で交わす小指
望まなかったもの 11
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そのことにキケイは酷く腹を立て、大声を上げると今度は両手の拳でブドウコの壁を殴る。
大きな振動が伝わり、登る手を止め、カンダタはじっと耐える。
あたしは怒るキケイと天鳥を見比べる。
十手と清音を取り戻さないといけない。けれど、キケイを放っておけない。何より、戻ると約束した。
キケイが恨む気持ちは痛いくらいに伝わる。親に殺されそうになったのはあたしも同じだから。
あたしの意識はキケイへと向けられていた。身を屈めて、揺れるブドウコを降りようとする。
「瑠璃!」
それを止めさせたのはカンダタだった。
彼の赤目は「行け」と訴え、「目的を忘れるな」と怒っていた。
あたしは震える手を握り締め、唇を噛む。再び天鳥たちへと走っていた。
「1つ、教えよう」
あたしの脚が急かし、1秒でも速く蝶男のもとへと向かっているのに奴は余裕綽々と助言する。
「子取りも他の胎児たちと同様、母親を求めている。これだけ母親がいれば子取りも喜んでくるだろうね」
天鳥たちの周囲に転がる裸体の女性たちが一斉に絶叫し、あたしの耳を劈く。金切り声の絶叫が四方八方に響き渡る。
耐え難い大音量に軽い目眩を起こした。
あたしは蹌踉めき、急ぐ脚が遅くなる。
金切り声の絶叫に紛れて、赤子が癇癪する泣き声が聞こえてきた。それは天井から届いた。
天井の内側から裂いて現れたのはあたしを握り潰そうとした子取り。
切断した頭から垂れる赤紫の泥が横たわる裸体の女性に落ちる。
黒い箱が積まれた大広間の出来事を思い出す。赤紫の泥は裸体の女性を取り込んで子取りに運んでいた。
あたしの隣にも赤紫の泥が垂れてくる。
子取りは妊娠できる人間を吸収する。特に生きているあたしは狙われやすい。あれが落ちる前に十手を奪還しないと。
目眩を起こす頭を振るい、蹌踉めいた脚で踏ん張ると再び走り出した。
あたしが我先にと十手を取り戻そうとしているように、子取りもあたしと清音を捕らえようと裂けた天井から身を乗り出して、短い腕を伸ばす。
子取りがあたしたちに近づけば垂れる赤紫の泥が集中的にこちらに落ちる。
それなのに蝶男は焦りもなく、降りてくる子取りを眺める。
十手だけでも奪還したい。それしか考えられなかった。
あたしの手が届く範囲にまで着くと身を屈め、眠る清音から十手を奪う。直後、あたしたちの頭上に大粒の泥が落下してきた。
驚き、息を呑む。けれど、身体はすぐに動いた。咄嗟に後退する。
逃げようとしたあたしの手首を蝶男が掴み、下へと引っ張られた。
あたしよりも細いのに力強い。抵抗さえ許さない力の差。あたしは嫌でも膝をつかされ、屈められる。その間にも大粒の泥が近づいてくる。
天鳥は背中の黒翼を広げ、あたしと清音を大粒の泥から防ぐ。
黒翼に守られる陰の下、裸体の女性の絶叫と子取りの泣き声が谺する中でそこだけが静寂に包まれていた。
「目的の半分は達成した」
蝶男の声色で天鳥が耳元で囁く。
「十如十廻之白御霊はついでだったが、君も手に入るのなら万々歳だ」
酷く、冷たい声色があたしの背中を凍らせた。
十手のことばかり考えて視野が狭くなっていた。
天井から這い出る子取りはあたしと清音を狙い、そこから垂れる泥が周囲に落ち、逃げ道を失くしていく。
あたしたちを守っているのは天鳥の黒翼で、その陰から出てしまえば赤紫の泥に捕らえられる。
蝶男の策に嵌まってしまった。
「共に行こうか」
なんとかして蝶男の手から逃れる術を探しても、逃げ道を塞がれた時点で詰んでる。
大きな振動が伝わり、登る手を止め、カンダタはじっと耐える。
あたしは怒るキケイと天鳥を見比べる。
十手と清音を取り戻さないといけない。けれど、キケイを放っておけない。何より、戻ると約束した。
キケイが恨む気持ちは痛いくらいに伝わる。親に殺されそうになったのはあたしも同じだから。
あたしの意識はキケイへと向けられていた。身を屈めて、揺れるブドウコを降りようとする。
「瑠璃!」
それを止めさせたのはカンダタだった。
彼の赤目は「行け」と訴え、「目的を忘れるな」と怒っていた。
あたしは震える手を握り締め、唇を噛む。再び天鳥たちへと走っていた。
「1つ、教えよう」
あたしの脚が急かし、1秒でも速く蝶男のもとへと向かっているのに奴は余裕綽々と助言する。
「子取りも他の胎児たちと同様、母親を求めている。これだけ母親がいれば子取りも喜んでくるだろうね」
天鳥たちの周囲に転がる裸体の女性たちが一斉に絶叫し、あたしの耳を劈く。金切り声の絶叫が四方八方に響き渡る。
耐え難い大音量に軽い目眩を起こした。
あたしは蹌踉めき、急ぐ脚が遅くなる。
金切り声の絶叫に紛れて、赤子が癇癪する泣き声が聞こえてきた。それは天井から届いた。
天井の内側から裂いて現れたのはあたしを握り潰そうとした子取り。
切断した頭から垂れる赤紫の泥が横たわる裸体の女性に落ちる。
黒い箱が積まれた大広間の出来事を思い出す。赤紫の泥は裸体の女性を取り込んで子取りに運んでいた。
あたしの隣にも赤紫の泥が垂れてくる。
子取りは妊娠できる人間を吸収する。特に生きているあたしは狙われやすい。あれが落ちる前に十手を奪還しないと。
目眩を起こす頭を振るい、蹌踉めいた脚で踏ん張ると再び走り出した。
あたしが我先にと十手を取り戻そうとしているように、子取りもあたしと清音を捕らえようと裂けた天井から身を乗り出して、短い腕を伸ばす。
子取りがあたしたちに近づけば垂れる赤紫の泥が集中的にこちらに落ちる。
それなのに蝶男は焦りもなく、降りてくる子取りを眺める。
十手だけでも奪還したい。それしか考えられなかった。
あたしの手が届く範囲にまで着くと身を屈め、眠る清音から十手を奪う。直後、あたしたちの頭上に大粒の泥が落下してきた。
驚き、息を呑む。けれど、身体はすぐに動いた。咄嗟に後退する。
逃げようとしたあたしの手首を蝶男が掴み、下へと引っ張られた。
あたしよりも細いのに力強い。抵抗さえ許さない力の差。あたしは嫌でも膝をつかされ、屈められる。その間にも大粒の泥が近づいてくる。
天鳥は背中の黒翼を広げ、あたしと清音を大粒の泥から防ぐ。
黒翼に守られる陰の下、裸体の女性の絶叫と子取りの泣き声が谺する中でそこだけが静寂に包まれていた。
「目的の半分は達成した」
蝶男の声色で天鳥が耳元で囁く。
「十如十廻之白御霊はついでだったが、君も手に入るのなら万々歳だ」
酷く、冷たい声色があたしの背中を凍らせた。
十手のことばかり考えて視野が狭くなっていた。
天井から這い出る子取りはあたしと清音を狙い、そこから垂れる泥が周囲に落ち、逃げ道を失くしていく。
あたしたちを守っているのは天鳥の黒翼で、その陰から出てしまえば赤紫の泥に捕らえられる。
蝶男の策に嵌まってしまった。
「共に行こうか」
なんとかして蝶男の手から逃れる術を探しても、逃げ道を塞がれた時点で詰んでる。
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