糸と蜘蛛

犬若丸

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4章 闇底で交わす小指

決断 14

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 傘の柄を持ち、開く。
 白い花を咲かせて、くるくると柄を回して遊ぶ。すると、白い傘に雫がぽつぽつと傘に弾かれて、あたしの周囲を濡らし、蠍の鬼を濡らす。
 ほんの少しの間、乱闘は止み、胚羊水全体が雨の静寂に支配される。
 近くにいるはずなのに、子取りが這いずる音もカンダタの叫びも遠い。冷たい秋のような温度に手が震え、湿気が纏わりつく。
 時が止まったかのような風景。
 冷たい雨は砂利を溶かし、地面にいくつもの穴ぼこを作る。雨は量を増やし、地面を抉る。
 不思議ね。雨はこんなに冷たいのに地面を溶かしていく。それでいて、あたしや大蛇、蠍の鬼も濡らすだけ。
 小雨は大雨に変わって、大雨は嵐になる。その流れが1秒の間に起きた。
 風は蠍の鬼を翻弄し、大蛇は雨の強さに地面を這う。その中で、あたしは直立不動だった。
 雨と風はあたしの周囲だけ穏やかに流れる。
 カンダタや子取りの様子が気掛かりになって、振り向く。
 子取りは肥満した身体に苦戦しつつも、嵐の影響は受けていないようだった。
 あたしの望み通りになっている。
 蠍の鬼や大蛇はハザマを混乱させる為に残しておきたい。子取りやカンダタも雨に溶かされたらあたしの望みは叶えられない。
 だから、胚羊水だけを失くしたかった。十如十廻之白御霊はその通りに叶えられた。
 砂利の地面が大きく揺らいだ。地を抉る雨は亀裂を生み、地面は裂かれる。その合間から羊水が吹き、死骸も鬼も子取りを呑む。
 傘を一本、差しただけなのに自然災害のようなあり様。それを引き起こしたあたしは静かに穏やかに目を閉じた。
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