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7章 赤い珠が映す空想未来
止まった時間 3
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紅玉が核心に近いものを悟ってからそれを吐き出したいと思いつつも紅柘榴の前では話せず、別の機会にしようと持ち越して、しかし一度口を閉ざすと重くなってなかなか言い出せなくなる。
紅柘榴は今日もあの松の傍にいる。
彼女に見えないものがもう一つある。失われた未来のことだ。
中庭の松で紅柘榴と赤眼の男が立っていた。間には赤子がいる。あの松で彼女は笑っているはずだった。
紅玉はそれを一言も話していないが、紅柘榴はあの松に何かを感じ取っているのかなかなか離れようとしない。
深くなった冬、雪が積もった。
身も凍るような空気の中、何時間もいる。放っておけば一日中、二日三日過ぎてもいるだろう。
このままでは風邪をひいてしまうから紅玉は呼びかけて中へ入るよう促す。それでも窓から松の木を眺めて一日を過ごす。
「降ってきたね」
「そうね」
大粒の雪が降る無音に落ちて、松の木を寂しく飾る。
不意に紅玉が紅柘榴に身を寄せた。すり抜けてしまいぎりぎりのところで止まり、胸の内から聞こえてくるものに耳を澄ませた。
とくとくと聞こえてくるそれが冬の静寂とそっくりで泣きたくなった。
実際に泣いていた。懐かしくて寂しくて悲しく泣いていた。
「私たちはこれを聞いていたのよ」
心音は紅玉が失ったもので、影弥には持っていないものだ。紅玉が最初で最後に聞いたのは母親のもので紅柘榴が鳴る心音はそっくりであった。
紅玉の発言から紅柘榴は何を聞いているのかと悟った。
「私もね、よく聞いていたの。彼の音」
紅柘榴は雪のような儚い声色で返した。相槌しかしなかった彼女がちゃんとした言葉で返してくれた。紅柘榴の瞳には紅玉が映っていた。
紅柘榴が寝静まった後、紅玉は台所にいる影弥のもとへ向かう。
「かげ」
影弥は朝食の下拵えをしていて、紅玉が話しかけると振り返った。紅玉の思い面持ちに我儘を言いに来たのではないと悟り、作業を止めた。
「どうしたんだい」
「考えたんだけど」
一言置いて深呼吸をし、鉛となってしまった推測を口に出したいが、何から言ったらいいのか迷う。
「私と紅柘榴は似てるよね」
「それはもちろん」
双子なのだから当然だ。確認するほどでもない。
「でも私は胎児の時に死んで、死んでからも成長した。成長した姿でも紅柘榴に似た」
紅玉が何を言いたいのかわからず首を傾げるも話を黙って聞くことにした。
「死んだ魂の形は何で作られるの?」
「思想と概念と未練」
「でも私は紅柘榴に似た。一度も紅柘榴を見ていないのに」
紅玉の姿が未練として現れるとしても赤子から成長したとしても紅柘榴には似ないのではないか。
「私が言いたいのはね、少なくても魂も遺伝が影響するんじゃないかって。だから、私と紅柘榴は似てる。双子の遺伝子を持ってるから」
一旦、呼吸を置いて影弥に問う。
「私と紅柘榴が黒蝶を拒絶するのはなんで?」
話が変わった質問だ。黙って聞くと決めたので答える。
「翡翠と翠玉が関係している。黒蝶によって心に傷を負った。それが来世の君たちに影響してる」
黒蝶の拒絶反応が紅玉たち個人によるものならあの子には影響されないだろう。
紅玉の推理が強固なものとなって、手を強く握りしめた。
「あのね、糸と鋏は生まれた子供にも遺伝するんじゃないの」
繋がりのない二つの質問を繋げ、結論を出す。
「蝶男は紅柘榴が臨月になるまで待っていた。紅柘榴の子の魂が欲しいから。そうすれば拒絶反応の起きない鋏が手に入る。だから動かない。私だっていずれ輪廻に流れる。後は私を探して拐って紅柘榴と同じように子を生ませる」
紅柘榴は今日もあの松の傍にいる。
彼女に見えないものがもう一つある。失われた未来のことだ。
中庭の松で紅柘榴と赤眼の男が立っていた。間には赤子がいる。あの松で彼女は笑っているはずだった。
紅玉はそれを一言も話していないが、紅柘榴はあの松に何かを感じ取っているのかなかなか離れようとしない。
深くなった冬、雪が積もった。
身も凍るような空気の中、何時間もいる。放っておけば一日中、二日三日過ぎてもいるだろう。
このままでは風邪をひいてしまうから紅玉は呼びかけて中へ入るよう促す。それでも窓から松の木を眺めて一日を過ごす。
「降ってきたね」
「そうね」
大粒の雪が降る無音に落ちて、松の木を寂しく飾る。
不意に紅玉が紅柘榴に身を寄せた。すり抜けてしまいぎりぎりのところで止まり、胸の内から聞こえてくるものに耳を澄ませた。
とくとくと聞こえてくるそれが冬の静寂とそっくりで泣きたくなった。
実際に泣いていた。懐かしくて寂しくて悲しく泣いていた。
「私たちはこれを聞いていたのよ」
心音は紅玉が失ったもので、影弥には持っていないものだ。紅玉が最初で最後に聞いたのは母親のもので紅柘榴が鳴る心音はそっくりであった。
紅玉の発言から紅柘榴は何を聞いているのかと悟った。
「私もね、よく聞いていたの。彼の音」
紅柘榴は雪のような儚い声色で返した。相槌しかしなかった彼女がちゃんとした言葉で返してくれた。紅柘榴の瞳には紅玉が映っていた。
紅柘榴が寝静まった後、紅玉は台所にいる影弥のもとへ向かう。
「かげ」
影弥は朝食の下拵えをしていて、紅玉が話しかけると振り返った。紅玉の思い面持ちに我儘を言いに来たのではないと悟り、作業を止めた。
「どうしたんだい」
「考えたんだけど」
一言置いて深呼吸をし、鉛となってしまった推測を口に出したいが、何から言ったらいいのか迷う。
「私と紅柘榴は似てるよね」
「それはもちろん」
双子なのだから当然だ。確認するほどでもない。
「でも私は胎児の時に死んで、死んでからも成長した。成長した姿でも紅柘榴に似た」
紅玉が何を言いたいのかわからず首を傾げるも話を黙って聞くことにした。
「死んだ魂の形は何で作られるの?」
「思想と概念と未練」
「でも私は紅柘榴に似た。一度も紅柘榴を見ていないのに」
紅玉の姿が未練として現れるとしても赤子から成長したとしても紅柘榴には似ないのではないか。
「私が言いたいのはね、少なくても魂も遺伝が影響するんじゃないかって。だから、私と紅柘榴は似てる。双子の遺伝子を持ってるから」
一旦、呼吸を置いて影弥に問う。
「私と紅柘榴が黒蝶を拒絶するのはなんで?」
話が変わった質問だ。黙って聞くと決めたので答える。
「翡翠と翠玉が関係している。黒蝶によって心に傷を負った。それが来世の君たちに影響してる」
黒蝶の拒絶反応が紅玉たち個人によるものならあの子には影響されないだろう。
紅玉の推理が強固なものとなって、手を強く握りしめた。
「あのね、糸と鋏は生まれた子供にも遺伝するんじゃないの」
繋がりのない二つの質問を繋げ、結論を出す。
「蝶男は紅柘榴が臨月になるまで待っていた。紅柘榴の子の魂が欲しいから。そうすれば拒絶反応の起きない鋏が手に入る。だから動かない。私だっていずれ輪廻に流れる。後は私を探して拐って紅柘榴と同じように子を生ませる」
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