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第1話 出会い
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「アサ、もっと食うか?」
「……」
出航前の船上パーティーを終え、俺たちは、二日酔いの頭……いや、まだ酔ったままの頭を抱えてゆっくりと通常通り船の上で仕事をしていた。具合が悪いからと休みをとれるような職業ではない。
残念ながら船の揺れと言うものは散々飲んだ身体に優しいものではなく、この日ばかりは誰もが陸に戻りたいと願っていたに違いない。
そんな異国の地を出航した俺たちが船内でとんでもないモノを見つけたのは、今から1週間前だった。
俺たちが見つけたモノ、パーティー出席者の忘れモノであろうそれは、小さな少年だった。親とはぐれたか、それとも、どこからか紛れ込み眠りこけてしまったのか、小さく丸くなって寝ている所を船員が見つけた。
言葉は通じない。俺たちの背格好を怖がっているのか目を合わせない。
何か月も何年も続く長旅に出てしまったこの船は、計画通りに前進するしかない。
この少年を早朝に出航した島にに帰してあげることができず、途方に暮れた俺らは、他に:術(すべ)はないと彼の面倒を見だした。
俺たちの言葉が分からない彼から得られる情報なんてなく、名前も年齢も何も分からない。
細身の彼が今ちびちびと口にする食べ物も、慣れ親しんだものではないのだろう。
儚い面持ちに色白の肌を持つ少年を見つめていると、もっと食べさせなければという不思議な意思が湧き、俺はロールパンを見せ、スープの入った器を見せ、身振り手振りで食べろ、もっと食べろと促した。
「俺の名前はニールだ」
自分の胸を指さし名前を告げ、目の間に座る少年の薄い胸を指さす。
「お前の名前は?」
ん? と首をかしげる彼に頬が緩みそうになるのを抑えもう一度自分の胸を指さして名前を繰り返した。
「ニール」
意図が伝わったのだろうか、色白の頬を赤めた少年はパッと目を見開きすぐにうつむく。食べ終えたスープが入っていた器を覗く少年の髪がサラサラと揺れた。
「アサ…」
夕食時の食堂には自然と船員たちが集まる。決して大人しい人間の集まりではない。ワーワーと「騒音」と言ってしまってもいいほどの煩さの中で消えてしまいそうな小さな声が幼さを残した唇から呟かれた。
「アサ…アサか?そうか、アサと言うのか。きれいな名だな」
「ン?」
アサは、陶器のような肌に、海の底のように深い黒い髪、光が当たるとキラキラと輝く黒い瞳を持った異国の少年だった。背が高く、肩幅が広く、髪も目も色の薄い俺たちとは真逆な容姿。
「ニー…ル…」
何かを確かめるように、消えてしまいそうな小声でアサは俺の名前を呟いた。ありきたりな名前だ。特別、愛着のあるような名前でもない。
それなのに、初めて俺の名前を紡いだその声は、俺の心をとらえて離さなかった。
「……」
出航前の船上パーティーを終え、俺たちは、二日酔いの頭……いや、まだ酔ったままの頭を抱えてゆっくりと通常通り船の上で仕事をしていた。具合が悪いからと休みをとれるような職業ではない。
残念ながら船の揺れと言うものは散々飲んだ身体に優しいものではなく、この日ばかりは誰もが陸に戻りたいと願っていたに違いない。
そんな異国の地を出航した俺たちが船内でとんでもないモノを見つけたのは、今から1週間前だった。
俺たちが見つけたモノ、パーティー出席者の忘れモノであろうそれは、小さな少年だった。親とはぐれたか、それとも、どこからか紛れ込み眠りこけてしまったのか、小さく丸くなって寝ている所を船員が見つけた。
言葉は通じない。俺たちの背格好を怖がっているのか目を合わせない。
何か月も何年も続く長旅に出てしまったこの船は、計画通りに前進するしかない。
この少年を早朝に出航した島にに帰してあげることができず、途方に暮れた俺らは、他に:術(すべ)はないと彼の面倒を見だした。
俺たちの言葉が分からない彼から得られる情報なんてなく、名前も年齢も何も分からない。
細身の彼が今ちびちびと口にする食べ物も、慣れ親しんだものではないのだろう。
儚い面持ちに色白の肌を持つ少年を見つめていると、もっと食べさせなければという不思議な意思が湧き、俺はロールパンを見せ、スープの入った器を見せ、身振り手振りで食べろ、もっと食べろと促した。
「俺の名前はニールだ」
自分の胸を指さし名前を告げ、目の間に座る少年の薄い胸を指さす。
「お前の名前は?」
ん? と首をかしげる彼に頬が緩みそうになるのを抑えもう一度自分の胸を指さして名前を繰り返した。
「ニール」
意図が伝わったのだろうか、色白の頬を赤めた少年はパッと目を見開きすぐにうつむく。食べ終えたスープが入っていた器を覗く少年の髪がサラサラと揺れた。
「アサ…」
夕食時の食堂には自然と船員たちが集まる。決して大人しい人間の集まりではない。ワーワーと「騒音」と言ってしまってもいいほどの煩さの中で消えてしまいそうな小さな声が幼さを残した唇から呟かれた。
「アサ…アサか?そうか、アサと言うのか。きれいな名だな」
「ン?」
アサは、陶器のような肌に、海の底のように深い黒い髪、光が当たるとキラキラと輝く黒い瞳を持った異国の少年だった。背が高く、肩幅が広く、髪も目も色の薄い俺たちとは真逆な容姿。
「ニー…ル…」
何かを確かめるように、消えてしまいそうな小声でアサは俺の名前を呟いた。ありきたりな名前だ。特別、愛着のあるような名前でもない。
それなのに、初めて俺の名前を紡いだその声は、俺の心をとらえて離さなかった。
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